倒れそうな私には、彼の«支え方»がありがたかった。
私は、損害保険の事故対応をしている。
CMでもたまにやっているような
電話で代理交渉をする仕事だ。
この仕事をしていると
◾︎赤信号で停止中の車に追突しても
私/俺は悪くない…!と主張する加害者
◾︎もともとついていた傷も、事故の傷だと
過剰要求してくる被害者
上記のような様々な人に出会う。
そして時に、理不尽な怒りを受けることも多い。
「お前の顔も住所も知ってるぞ、覚悟しろ!」
何度こう言われたことか。
そんなストレスが重なり、とうとう私は
体調を崩してしまった。
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会社のストレス検査でも引っかかったため
私は1日だけ休暇を取ることにした。
提携産業医は私に言う
「どうしてそんなに頑張るの?」と。
私自身にも分からなかった。
ただ«人と話すこと»、«交渉すること»は好きで
その結果、«感謝»されると嬉しかった。
「あなたのおかげで普通の生活に戻れました」
そんな一言がやりがいだった。
だからどうか、「どうして」と言わないで。
なぜだか、悲しくなるから。
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そんな休暇中の私は、ワクチン接種のために
午後、彼も休みだと知って、電話をかけた。
彼「おーどしたん?」
私「ちょっと声が聞きたくなって。
何してたん?」
彼「お昼ご飯食べて、外出たところ!」
私「そっか〜…ね、接種後、少し会えない?」
彼「大丈夫だよ〜着く時また連絡するわ」
2時間後、彼は私の家に来た。
スーツ姿の彼を見るのは久々で
かっこいいなーと改めて思った。
彼「大丈夫ー?」
私「うーん、なんとか!会えたら元気出た」
彼「そっか〜ならよかった」
私「うん、また明日から頑張れそう」
彼「そかそか、がんばれ〜⚐゙」
そう話しながら、私を抱きしめて
彼は優しく頭を撫でてくれるので
つい泣きそうになった。
彼が私を心配してくれてるのはよく分かる。
私がたまに仕事の話をすると
「おーそいつやばいね!」
「さすがに担当変更できないの?」
など、ちゃんと聞いてくれるから。
でもこんな時、体調を心配して
「会社辞めたら?休職したら?」とは
彼はいつも言わない。他の友人は言うけれど。
そこだけはいつも不思議だった。
そんなことを考えながら、彼に抱きついてると
彼はぽつりぽつりと話し始めた。
「仕事してるとさ、きつい時あるよね。
俺も日付代わるまでプログラム書くし。
客先の仕様変更で連勤したり。
医者は現場を知らないから安易に
辞めたら?とかなんで頑張る?というけど。
次の職場がいい所とも限らないし。
でもいつも頑張ってるのえらいよ」
その言葉を聞いて
『あ、私はただ認められたかったんだ』
と気づいた。
私、精一杯頑張ってるよーって。
その努力を「どうして?」と言わないでって。
それと同時に、彼は安易に提案しないし、
私の意思を尊重する人だったと思い出した。
ピルの時もそうだ。彼はいつも言う
「自分の体なんだから
自分でしっかり考えて決めなね。」
きっと彼は、私が決めたことなら
受け入れて、それを応援してくれるだろう。
現職を続けるにしても、転職するにしても。
自分の人生(身体)なんだから
自分で考えて決めなさい。
これを
突き放されてるようで«冷たい»と感じるか
それとも
私の考えを«尊重»してくれてありがたいと思うか
ここは正直、個人差があるところだと思う。
多分前の私なら、もう少し親身に考えてよ!と
不満を言っていただろう。
でも今の私は«自分のことは自分で決めたい»
だから、口を出さずに見守ってくれることを
ありがたいと思う。
年齢や経験によって、考え方は変わる。
だから出会ったタイミングが«今»で
本当によかったと思う。