見出し画像

ドイツの婚活サイトに潜入し、国際結婚した話⑥

■第6章■ 奇策

「あ! あった! これかも! でも、、、、」
何が書かれているのか、どういうシステムなのか全く理解できない。
当然だ、全てドイツ語で書かれている。加えて、日本でさえ1度もマッチングアプリを使ったことがない私が、海外のましてや英語ではない国のサイトに潜り込むのは無謀だった。

そこでまずは練習の為に、日本の無料のマッチングアプリを登録し、使い方を習得した後、もう1度ドイツ版のサイトに挑戦することにした。
しかしなにやらスマホが常に騒がしい。
信じられない数のメッセージが届いている。
内容も吐き気がするような不快な物ばかりだった。
私はすぐに登録解除&アプリを抹消し、ドイツ版では有料サイトに登録することを決めた。

今はどうか分からないが、当時のドイツのマッチングアプリは種類が少なく、どれにするか迷うことは無かった。
日本に住んでいてもこのサイトに登録出来るかどうか不安だったが、日本円で月額5000円程度のサイトを選び、ダメ元で始めてみることにした。

登録方法は日本のサイトとそれほど変わらなかったが、いくつか日本には無かった髪や目の色、宗教や言語などの項目は海外特有で印象的だった。
言語に至っては、ドイツ語や英語に加えロシア語やスペイン語など、登録者の多くが多言語話者であることに驚いた。
1つの質問に対して選択肢が五個ほどあり、その選択肢1つ1つをすべて日本語に翻訳しなければならないので、なかなか進まない。たくさんの項目があり、すべてを埋めるのにはとにかく時間がかかった。

結一悩んだのは居住地を選択する項目だった。このドイツ版マッチングアプリは当然の事ながらドイツ在住の人向けに設計されており、ベルリンやミュンヘン、フランクフルトなど、自分の住んでいる地域を記入しなければならなかった。
不安的中。どうしよう。 せっかく良いアイデアだと思ったけど、やっぱり日本に住んでいたら登録出来ないのかもしれない、、、、でもここまで来たんだから、とりあえず最後までやってみるしかない!

実際に住んでみて分かったが、ドイツはベルリンの壁が崩壊して30年以上経ったにも関わらず、物価の違いや経済格差、政治家に旧西ドイツ出身者が多かったりと、未だ西と東の都市間で確執が残っている。
そしてどの国にも「出身地マウント」の存在があることを知り、面白かった。
そんな事を当時は知るよしも無く、ただ単純に見てみたい甲冑や、行ってみたい博物館が多い理由でミュンヘンを選択しようとしたが、やはり首都であるベルリンの方が圧倒的に人口が多く、出会う確率を少しでも高くする為、心残りもあったが、居住地はベルリンに設定した。

そして何より重要な自己紹介文は一際大変な作業で、ドイツ語でなくてもせめて英語で書かなければならなかった。
国が変われば、私の考え方や生き方に、興味を持ってくれる男性が1人くらいは居るだろう。結婚に対して自分なりの想いを素直にアピールし、なおかつ最後まで読んでもらうために、自己紹介文は長すぎないように心掛けた。
私の英語力では翻訳出来るはずも無く、かといって微妙なニュアンスを正確に表現するには、翻訳機能を使っても何か物足りなさを感じていた。
幸運にもマレーシアで2年間働いていた英語が堪能な同僚が、快く翻訳に協力してくれたおかげで、ついにドイツのマッチングアプリに登録することに成功した!32歳と350日。ギリギリセーフ! 少なくとも2週間はまだ男性を選べる!
自分でもテンションがいつも以上に高くなっているのが分かった。同じ作業であっても、日本のサイトでは30分程度だったものが、登録完了に丸2日間も費やしたことで、これまでに無い異様な達成感が生まれた。

独身を意味する "Singl" や子供の " kids" といった単語は、調べずとも中学英語の知識で理解できたが、ドイツ語になると何もかもが分からなかった。簡単な単語でさえ、全く理解できなかった。けれども多少理解できそうな英語より、123の数字すら知らない言語の方が、私の好奇心や知りたい欲求が爆発していた。

全ての質問や選択肢にはインターネットの翻訳機能を使用していたが、ここで1つ大きな和訳ミスが生じ、夫と付き合い始める際に、危うく誤解を生むことになった。
子供の有無についての質問に対して " Nein (いいえ) " を選択したにも関わらず、またいくつか質問が進んだ後、再び子供の有無について問われた。なぜまた同じ事を聞かれたのだろうと疑問に思いながらも、再度 " Nein (いいえ) "を選択した。しかし、この2度目の子供の有無についての問いは、実際には子供を希望するか否かという非常に重要な質問だったのだ!
この2つの異なる質問が、何故か同じ意味として翻訳されてしまったため、子供を望んでいた夫が付き合い始めた当初、バツが悪そうにそのことを私に確認してきた時は、外国人と付き合うということは、これからもこのような誤解が度々起こるのだろうなと、身が引き締まる思いがした。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?