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スターバックスの「集中力と数百円」

ブラックサンダーが10個以上買える値段を、平気で支払った。

大学生までドケチだった私は、32円のブラックサンダーを買うのさえ「本当に必要なんだろうか」と考えるような人間だった。今ではだいぶお財布がよく開くようになったけれど、180円くらいのちょっといいチョコを買おうとすると「いや、100円くらいのチョコがいいんじゃないか」と無意識に思ってしまう。まだまだケチ精神は抜けていない。

そんな私が500円の大金を平気で払ってしまう場所がある。スターバックスだ。PCを使った作業をするときに、よくスタバのコンセント席を利用する。スタバは決して安くはなく、普通の珈琲ですら400円はかかる。期間限定のフラペチーノは600円くらいするので、安めのランチと同じくらいの値段だ。そんな割高なスタバに時々出向き、たまにフラペチーノを飲みながら、ドケチなわたしがPCをカタカタさせている。昔のわたしからすれば豪遊に等しい行為だ。

ケチ精神が根強く残るわたしが、なぜ割高なスタバに行くのか。それは、スタバの空間が「集中力と数百円」だからだ。

集中力と数百円は、1984年にコピーライター糸井重里が作った「想像力と数百円」の完全なるパクリだ。新潮文庫に対するコピーで、数百円で買える文庫本でプライスレスな想像力を得られると示されている(と思う)。コピーのお手本として、色んなところで引き合いに出されている7文字だ。

スターバックスの場合は「集中力と数百円」になる。つまりスターバックスで数百円のドリンクを買うと、プライスレスな集中力が手に入る。いつからか家に帰るとスマホマンガやYouTube視聴に明け暮れて、なかなか集中できなくなってしまった。早く退勤しても、帰宅すると早く帰った分だけ余計にだらけてしまい、むしろいつもより遅く寝る羽目になったりもする。

しかしスタバであれば、心地よい音楽やリラックスできる座席、「そこそこ高いドリンク買ってるから長居していいよね?」と図太く居座れる環境がある。コーヒー1杯と考えると500円弱は高い。でも集中力を買っているのだとすれば、500円は全く惜しくない。むしろ激安とすら感じてしまう。

「集中力と数百円」、名コピーのオマージュだけあって響きがよく気に入った。わたしが自宅で集中できるようになるまでは、この言葉を胸に足しげくスタバに通うとしよう。

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