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私を覚えていないあなたへ。


亡くなられたことを昨日聞いた、、、。
先週嘔吐し、救急搬送され、小脳出血と診断されその後意識不明になったと。


私が訪問リハビリテーションで担当していた方で、もう1年以上前から関わっていた。出逢った頃には認知症が進んでいて、ご本人は、記憶がなくなってきていること、何が何だかわからなくなっていること。聞かれたことは、ほとんど覚えていないことを感じていた。


認知症であると、個人的に思うのは、より本質的な人柄が際立つなぁと、、、
そんなあなたは本来持っている気遣いと優しさが際立っていて、、もう別格で本当に素敵な方。まるで陽だまりの中にいるようなそんな人柄だった。



私はその陽だまりの優しさに
いつも癒されていた。



あなたは、初めて出逢ってこの一年以上、一度だって私の名前を呼んだことはないし、私の名前や私の話したことは覚えていない。


だけど、私の顔だけは覚えていてくれた。
私の声や雰囲気だけは覚えていてくれた。




こんにちはー。◯◯さん


と訪問すると、
いつも部屋の奥から
恐る恐る私の顔を見て、


あーー!来てくれたん!


と私の顔を見て満面の笑み。私はなんだか、その瞬間がたまらなく好きで、いつもホッとしあわせな気持ちになっていた
ひとり暮らしをしていたあなた。毎回訪問するときは、今週は元気だろうか?そう思って訪れていた私は、その笑顔をみるといつもとても安心していたことを覚えてる。



あなたは決まっていつも同じ話をしていた。

記憶がなくなっていく。
そんな怖さと、私の想像できないほどの
苦しみをいつも抱えて、あなたは生きてた。


記憶と現実のあいだでとても苦しみ、時折、涙を流して苦しみを話してくれた。
まるで自分が自分でなくなってしまう、、、あなたは、そんな恐怖の中で懸命に生きていた。



だからこそ、



私には、あなたの記憶を取り戻すことはできないけど、私が訪問したこの瞬間だけは
笑顔でいてほしい。あなたに笑っていてほしい。
そんな想いで私はリハビリを続けていた。



そんな、ある日のこと。

あなたは涙を浮かべながら
私に出逢えてよかったと。

そう言ってもらったことがあった。


その時、
私も出逢えてよかったと
そう言って、一緒に涙した。


そして、
私たちはお互いに
出逢えてしあわせですね。


とそんな風に話して、笑って泣いた。


色んなことが
まだまだたくさんあったから
ここには書ききれないけれど、
今日書かずにはいられなかった。


春夏秋冬をともに過ごして
一緒にみた、桜も
一緒にみた、紅葉も
一緒にみた、青空も、、、



私は決して忘れない。





私を覚えていないあなたへ


帰りに
いつも決まって


もう、一時間経ったの?
もう帰るの?

いそがしいのにありがとうね。
また来てね。


そう言って
私が靴を履く後姿を眺めながら
決まって靴を笑顔で褒めてくれる。


そんな時間があったこと覚えていますか?



実は、私。
あなたの笑顔がみたくて
あなたが笑って靴を褒めてくれる
そんな時間がしあわせで、
私は同じ靴を必ず履いていたんです。笑


私は、あなたが大好きです。

あなたと出逢えて本当によかった。
天国でもその素敵な笑顔で、
見守っていて下さいね。


ご冥福をお祈り致します。


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