鼻にんにく

しがない鼻にんにく(大学生)です。大学の授業でエッセイの書き方を学び、記憶やら心情やら…

鼻にんにく

しがない鼻にんにく(大学生)です。大学の授業でエッセイの書き方を学び、記憶やら心情やら、風景やらを言語化し、文章にすることの楽しさを知りました。自由気ままに書きます。

最近の記事

詩『山中湖』

ああ、この山中湖の上を飛ぶ鳥は きっとこの街の全てを知っている わずか上空100メートルを飛べば この巨大な水溜まりの全てを見渡すことができるのだから 深夜に軽トラックに跳ね飛ばされた鹿の親子や 熊肉を食べて喉を詰まらせた老人 カフェでコーヒーを飲んでいるカップルに殺された小蝿まで その全てを知っているのだろう そうさそのまま いつまでものんびり、ぼくの上を飛んでいるがいい そしてぼくがいつかこの湖に帰るとき その羽を少しだけ 落としていっておくれ そうすれば来世はきっと こ

    • 詩『妄信』

      小窓のすきまから吹く息が ゆらしたカーテンの足は 壁に立てかけたギターを弾いている 強い朝日に無力な首を振らない扇風機 町のいくつかのアラームがいっせいに作動して そのうちひとつが あの三階建ての家から聞こえる しっぽの長い貨物列車は低い音の余韻を残して そうして蝉のまだ起きないこの時間に 今日の産声があがる 今日の名前をつけてもらいに 今日も君に 会いにいこうか 料理を運んでくるチャイナドレスの似合う女 伝票をあの名前のわからぬ透明の筒にいれ

      • 人にもしも蛍のような光があれば

        人にもしも蛍のような 眩しくて儚い光が発せられたら 渋谷のスクランブル交差点は 僕の目にどう映るのだろう その様相をどこかの高いビルから見下ろすことができれば 今より少しは都会を好きになれるかもしれない

        • 小説『におい』

           コンビニへと伸びるくだり坂を、ぼくはおでんのはんぺんについて考えながら歩いていた。琥珀色の汁の上に浮かぶ、真っ白いはんぺんである。高校生のとき、文化祭準備の買い出しで駅前へ出かけた帰りに、コンビニで買ったおでんを公園のベンチに座って、よく友人たちと一緒に食べていた。とくにその時期が寒かったわけではない。制服もまだ夏服がゆるされていたし、木々にもまだ若い葉が残っていた。ただ、その公園には金木犀がうえてあった。そのにおいをかぐとぼくたちはたちまち、その年の夏を早くもいつくしみ、

        詩『山中湖』

          エッセイ『銀の草津』

           人の心の中にはそれぞれ心力ゲージがある。それはまるでストーブの灯油残量ゲージのように、「満」から「E」まで目盛りがある。そして、生活の中でそのゲージはみるみるうちに減っていく。それが完全にゼロになってしまう前に、ぼくたちは給油をしなければならない。心への給油だ。誰にだってときにはそれが必要で、その方法は人それぞれ異なる。その日だけはスマホのタイマーを消してずっと寝たり、溜まっている録画をみたり、散歩したり、友達と遊んだり、煙草を喫ったり酒を飲んだり、それぞれにそれぞれの給油

          エッセイ『銀の草津』

          夜のベンチ

          ※8月下旬に書いたものなので時期に誤差あり  久しぶりに筆をとって(厳密にはキーボードを叩くわけだが)文を書いてみる。しおれた歯磨き粉のチューブから残りの歯磨き粉を搾り取るように、疲労したこの頭でなんとか文を絞り出して書いてみようと思う。 8月も終盤にさしかかった。私の住む街の夏は、来たる秋に辟易するにはまだ飽き足らぬようで、むしろ暑さは増している。とは言っても、私のこの頃の生活行動といえば非常に淡白なもので、1日の大半は空調のよく効いた室内で過ごしている。ゆえに特別

          夜のベンチ

          詩『読書』

          机に本を開いて置いて 片方の手はそれを支えて置いて あなたは本を読む もう片方の空いている手が てもちぶたさに深緑の栞をくるる 指の間でまわしている それはまるで 職人が糸を織るように 母がマフラーを編むように 本から伸びる言葉のイトを 1つ1つ織るようで いずれそれは言葉のマフラーとなり あなたのその 冷えきる心を暖めるのだろう

          詩『読書』

          知らぬ街を走った そこには家と車と汚れた空気が 人は八方へ歩いてゆく 知らぬ川沿いを走った そこには悠々生い茂る草と 舗装された道のコントラスト 南風が吹く川沿いの道を 人は二方へ歩いてゆく リードを大きく伸ばして犬を散歩する強面の男 肌を真っ赤に焼いた帰り支度をする釣り人 橋の下から聞こえる楽器の音 父の肩の上ではしゃぐ少女 それを眺める僕とスケボー少年 川には誰一人近づかず その流れる方向に 人々は歩いていくだけで 彼らを横目に 真っ直ぐ川へ進んでいく少女を見た

          産声

          僕の1日は高木正勝の『産声』という曲で始まる。毎朝6時に、机の上で充電されているiPadから流れるように設定しているのだ。この季節になると、起きる頃にはシャツが汗でじっとりして、大きく空いた窓から吹き込む風でカーテンは揺れ、強い日差しがチラチラと部屋の中に差し込む。外では鳥の小さなさえずりと、電車が走る音、どこかの家から微かなアラームの音が鳴っていた。ベッドの足元で夜通し回っている扇風機は、もうこの暑さでは涼しさの足しにもならない。ただそれらの音に混じって虚しく風の音を奏で

          7月16日

          朝6時に目が覚めた。昨夜、スマホに入れていたのをすっかり忘れていた瞑想アプリを使って寝落ち瞑想に成功したので、目覚めが良かった。身体を起こしてベッドであぐらをかきながら嵐の曲を聴く。嵐とはもちろんあのスーパーアイドルの嵐のことだ。日付が変わるのと同時にこれまで未収録だったカップリング曲やライブ曲が一挙にストリーミング配信された。私は生来の嵐ファンなのでもちろん全部聞いたことのある曲だったが、フルでしっかりと聴くことは久しぶりだった。比較的マイナーな曲をいくつか選んでスクリー

          7月16日

          自己紹介。鼻にんにくと申します。

          はじめまして。現役大学生の鼻にんにくと申します。男です。現在フォロワー0人の状態でこのnoteを書いているため、単なる独り言のような感覚でいます。しかし、エッセイとはそういうものだと心得て、肩の力を抜いて書こうと思います。私のただの独り言を、どこかの誰かが何気なく見てくれたら、それでいいです。眺めるだけでも構いません。 自己紹介といっても、誰も私の趣味だとか、好きな食べ物が「茄子の生姜焼き」だとか、幼少期に鼻を膨らませ続けていたせいで鼻が巨大化し、あだ名が「鼻にんにく」にな

          自己紹介。鼻にんにくと申します。