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【なまらのんびり05】揺らいだ信頼。【夫婦エッセイ】

 僕ら夫婦は家庭菜園が好きです。
 20代にしては変わった夫婦でしょうか?

 自然が好き。食べることが好き。
 毎日世話をしなければいけない家庭菜園は、旅好きな僕ら夫婦には少し不向きだけど。
 自分で時間をかけて野菜を育てて、自分で収穫して、自分で食べるというのは、のどかで、やさしくて、あたたかいイメージで、とても魅力的なことでした。

 とはいえ今は賃貸マンション生活。なかなか家庭菜園は難しい。2018年の夏はベランダでプランター菜園を行い水菜やトマトを「ミズナちゃん大きくなってねー」「トマちゃんかわいいねー」などと声をかけながら愛情たっぷりに育てましたが、冬はどうにも難しい。本州でも冬場は厳しいと思いますが、北海道では氷点下の世界となり、屋根があるとはいえベランダにも多少雪が積もる。そんなところで野菜は育てられません。そんなところで「ミズナちゃん」や「トマちゃん」を育てるなんてかわいそうです(笑)


 そんな訳で北海道の短い夏と秋が終わり冬が訪れてからは、ひたすら「来年はこれを育てたい」「これを食べたい」と妄想するばかりでした。






 年が明け2019年、妻が「カイワレ大根を育てたい」と繰り返すようになりました。
 妻は僕に熱心に説明します。
 カイワレ大根は簡単に育てられる。大きなプランターではなく、使い捨てのプラスチックのコップを容器にしても問題ない。つまり場所はとらない。土もいらない。コップに種を入れて水をやれば芽が出て育つ。とても簡単だ。土を使わないから臭いもないし、虫がわくこともない。おまけに1週間程度で収穫できるからとてもお手軽。室内で北海道の冬でも室内で育てられるはず。


 妻の熱い説得に僕もあっさり乗り気になりました。
 そうと決まればすぐに行動です。
 カイワレ大根の種を購入するべく向かったのは、北海道民御用達、「ホーマック」です。

 DCMホーマックは北海道札幌に本社があるホームセンター。北海道民にとってホームセンターといえばホーマックといっても過言ではないでしょう。もともとは釧路市の石黒さんが営む「石黒商店」から始まり、徐々に北海道各地へ店舗を出していったそうで。僕が子供の頃には「石黒ホーマ」という名前でした。その後、社名は「ホーマック」へと変わり、今では関東にまで進出しているとのこと。ニトリが全国的に有名になったことなどに並び北海道民にとっての誇りである、と、僕は思っています。

 要するに、北海道民にとって、とても信頼度が高いのです。

 もちろん、「ミズナちゃん」も「トマちゃん」も、家庭菜園に関する道具も、すべてホーマックで購入しました。

「冬でも野菜が育てられる!」「カイワレ大根を育てるぞ!」
 僕らは意気込んでホーマックへと向かいました。しかし、僕らは絶望することになります……






 あの北海道民の頼れる存在ホーマックに、我々が求めていたカイワレ大根の種がなかったのです。
 カイワレ大根だけではありません。何の種も売っていません。



 何故か。

 それは、冬だから。

 北海道の、冬だから。



 そりゃそうです。ホーマックへ向かったのはまだ2月のこと。最初に書いた通り、北海道で冬に家庭菜園することは難しい。年中家庭菜園をするような熱心な人がいたとしても、わざわざ冬に種を買いに来る人はごく少数でしょう……熱心な人は熱心に種も準備しておくはずです。冬に植物の種は売れないのです。
 さすが、ホーマックさん、全国に店舗を展開するホーマックさんは、北海道で冬に種を売るほど商売下手ではないのです。

 夏場、種が売っていた一画には、スコップやママさんダンプ(ママでもダンプカーのように雪が運べる、大型の除雪用具)など冬の必需品が並んでいました。
 さすが、ホーマックさん。地域住民が求めているものを理解しています。

 さすが、ホーマックさん。揺らいだ信頼はすぐに戻りました。
 しかし僕らは「カイワレちゃん……」と二人揃ってホーマックで立ち尽くしたのでした……


 家庭菜園が好きすぎる僕らは、やはりちょっと変わった夫婦なのかもしれません(笑)

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