ユキニフル

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【曲紹介】 アイ変わる世界

作詞:宏川露之 作編曲:ein himinn vocal:あづさ、初音ミク 収録作品:明日、嘘をつく たった一晩明けると、昨日とは全く別の話題が広がっていたり、世界のあり方が大きく変わっていたり。そんな世界で愛、相、i、逢い、さまざまな「アイ」が変わっていく、「アイ変わる世界」はそんな歌です。 □歌詞 ------ この歌詞を書いたのは一年以上前のことですが、そのころよりもずっと世界の変化は激しくなっているように思います。夜眠る前と目覚めた朝とでまるで別世界になっているよ

    • 【新世紀の流行歌 4章】 「開演前夜」

       わたしとユイネは、わたしの狭い部屋で音楽制作を続けた。スタジオから持ち出したのはギターと小型のPC、あとはより小さな、いくつかの機材。それに、わたしのキーボードが加わるだけで制作には充分だった。  ユイネはギターを上手に弾いた。前はわたしも一人で音楽をやっていたんだとユイネは言った。詳しくは教えてくれなかった。  音楽づくりは楽しかった。コードもビートも知らないことだらけで、その度にユイネは、少し口は悪いけれど丁寧に教えてくれた。  歌詞は思っていたよりもするすると書けた。

      • 【新世紀の流行歌 3章】 「アンドロイドの奏でる音楽」

         ユイネはわたしの顔を眺めて、大きくため息をついた。 「あなた、わたしのことは知ってる?」 「……はい」  やっと声が出せた。 「そう、なら話は早いね。わたし、しばらく身を隠さないといけないの。あなた、これからすぐここを出ていける?」 「それは、できません…」 「なんで?」 「行く宛のないアンドロイドは、見つかればすぐにスクラップ行き……。よくてリユースステーションに送られて、初期化されて、意識も何もかも失ってしまいます」 「それの何が問題なの? アンドロイドがそんなこと気

        • 【新世紀の流行歌 2章】 「わたしのプレイリスト」

           脆弱なセキュリティ。アパートの鍵を開けて、自室へ入る。職場にあてがわれた古い部屋。見慣れた風景。何も変わらない小さな世界。  コンビニエンスストアで購入したリキッド・セルをクーラー・ボックスに移し替える。これも慣れたルーティン。一本は手首の投入口から流し込む。  ほんのわずかな快楽。いつもはただそれだけのためにこの部屋に帰ってきていた。でも、今日は違う。    部屋の隅。昨晩、出勤前にリサイクルショップで買ったばかりのキーボード。その前に座る。  鍵盤の白、白、黒。人差し指

        【曲紹介】 アイ変わる世界

          【新世紀の流行歌 1章】 「午前5時、2人のアンドロイド」

           最後にわたしの顔、胸、太腿、いたる所の肌を撫で回し、小さく「ふん」と鼻を鳴らして男は服を着始めた。鼻息に合わせて、口元のひげが揺れるのが見えた。 「なあ、イクハちゃん。おまえたちアンドロイドってのは、おれみたいなやつに、やりたいようにやられてる間中、なにを考えてんだ」  よくある質問。だから、用意している、客を満足させるための回答で返す。  男はまた鼻を鳴らした。 「あっそ。まあ、結局は人形だな。いや、そうとも言えねえか。最近は性能の高いやつもいるもんな。ほら、なんてったっ

          【新世紀の流行歌 1章】 「午前5時、2人のアンドロイド」

          【曲紹介】 キミらしく生きて

          作詞:宏川露之、ein himinn 作編曲:ein himinn vocal:初音ミク 収録作品:キミらしく生きて 「〇〇らしく」という言葉が苦手です。 もとい、「〇〇らしく」という言葉をたやすく使う人が苦手です。 もしも僕が「キミらしく生きて」良いと言われたら、1日中寝たり好き勝手したりして過ごすはずです。でも実際はそんなことできるわけもなく、ありふれた今日を生きていくしかないのです。 志が高く、背中を押すような力強いメッセージも勿論大切ですが、たまには平凡で退屈な

          【曲紹介】 キミらしく生きて

          【曲紹介】 ちいさな飴玉

          作詞、作編曲:ein himinn vocal:あづさ 収録作品:Letter in the airs かれこれもうだいぶ昔に作った曲です。 テレビでとあるMVを偶然見た途端、すぐにメロディと歌詞が思いつきました。 普段はサビから曲を作ることが多いですが、この曲に関しては全パート同時に出来上がっていったと記憶しています。 「ちいさな飴玉」というタイトルも割と早くから頭の中にありました。 サビでは飴玉に関連した歌詞は出てこないのですが、全体的な情景など曲を通して上手くまと

          【曲紹介】 ちいさな飴玉

          【掌編小説】 『スマイル・オン・フリーデッド』 (From『或ル少年少女ノ「シ」』)

           悲しい話で泣けるのに悲惨な現実に泣けないぼくも、端末から聞こえる無機質な音声に胸を痛めた。たしかゲームかアニメのキャラクター。標準設定されているAI。人身事故のため、電車全線で遅延が発生したとのレポートを告げてくれた。AIの人工的なグラフィックがわざとらしく悼んでみせた。キャスター風の女性キャラクターが語るのは自殺志願者集合体『スマイル・オン・フリーデッド』との関連性だ。  ここ数ヶ月、報じられる自殺の大半は、『スマイル・オン・フリーデッド』という団体に所属するメンバーに

          【掌編小説】 『スマイル・オン・フリーデッド』 (From『或ル少年少女ノ「シ」』)

          【曲紹介】 或ル少年少女ノ「シ」

          作詞:宏川露之 作編曲:ein himinn vocal:あづさ 収録作品:アイソレイト 「少年」あるいは「少女」が自ら命を絶った。そんなニュースを何度か聞いたことがあります。そこにはきっと様々な背景があって、簡単に推察できるものではないのだと思います。ただ、それでも一人の少年だった僕自身、彼ら彼女らに少なからず、そして本当に勝手ながら共感することがありました。 少年少女はなぜ傷つくのか。なぜ泣いてしまうのか。なぜ生きていられなくなるのか。その理由の、さらにその根源を、二

          【曲紹介】 或ル少年少女ノ「シ」