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【曲紹介】 或ル少年少女ノ「シ」

作詞:宏川露之 作編曲:ein himinn
vocal:あづさ
収録作品:アイソレイト

「少年」あるいは「少女」が自ら命を絶った。そんなニュースを何度か聞いたことがあります。そこにはきっと様々な背景があって、簡単に推察できるものではないのだと思います。ただ、それでも一人の少年だった僕自身、彼ら彼女らに少なからず、そして本当に勝手ながら共感することがありました。

少年少女はなぜ傷つくのか。なぜ泣いてしまうのか。なぜ生きていられなくなるのか。その理由の、さらにその根源を、二人の少年少女の姿を借りて描こうと試みました。
そうして書き始めた歌詞が、物語が、『或ル少年少女ノ「シ」』でした。

□歌詞
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舞台は過剰にテクノロジーが進歩した近未来。そんな世界での少年少女の逃避行。

―少年少女ノ「シ」には 理由らしいものはなくて
―美しいってことに 惹かれるだけで 泣いて

詞の中にこんな二行があります。ここに僕の考えを詰め込んでいます。
「少年少女」の「シ」に、大それた、特別な理由なんてない。
ただ、自分が「美しさ」から遠ざかっている、というだけでどうしようもなく泣いてしまう、「シ」を選んでしまう。それが僕なりの答えです。

「少年少女」は「大人」とはわずかに、それでも確実に違う「美学」を持っていると思います。その「美学」は未熟で、幼稚で、「大人」から見れば馬鹿らしいものです。

「命を絶つくらいなら逃げればいいのに」

そんな言葉をよく目にします。とても正しく、何一つ間違っていない考えです。
でも、そんな「正解」よりも、自分が大切にする「美しさ」に惹かれてしまうのが「少年少女」なのではないかと思われてならないのです。
(宏川)

□音楽
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試行錯誤しているうちに当初考えていたものとは全く別のものが出来上がる、という経験は音楽のみならず創作全般に言えることだと思います。

実際にユキニフルの楽曲でもそういったことは多々あり、良くも悪くも予想外な結末にこれまで何度も出くわしてきました。

じゃあこの曲はどうかというと、実はそれとは全く逆です。
最初から明確な悪意をもったうえで難易度の高いメロディーや曲構成を考えました。
そして薄々予想はしていましたが、結果的にあづささんを苦しめることになり今ではとても反省しています。

話を戻して、歌詞を最初に見たとき真っ先に思い浮かんだのがダイイングメッセージの印象でした。
少年少女をテーマにした作品は世の中に五万とありますが、その中でも最も報われない、悲しい物語の中で命をかなぐり捨てる二人の心の声が文字になって浮かび上がってくる、そんなイメージをもとに曲を作りました。

最後に、この曲は初音ミク版も音源をアップしています。
もともと調声作業が得意でないこともあり、制作の中で一番大変だったのがこの作業でした。
当然これも予想通りです。
(ein himinn)

□vocal
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或ル少年少女ノ「シ」のデモをサビまで聴いた時、「え?これどうやって歌うんだ?」と、まず困惑したのを覚えています。

これはたくさん練習していかないと大変な事になる…と思いその日から自宅でひたすら聞いて練習しましたが、なかなか思うようにいかず、案の定レコーディングもサビに結構な時間を費やした気がします。ごめんなさい!

2拍3連というリズムで歌っていくサビで、これまで私が歌ってきたもの、聴いてきたものとは系統の違った楽曲だったこともあり、落とし込むのにも時間が掛かりました。リズムが難しいのに加えて、この曲の物語がとても悲しいイメージがあったので、サビに気合いを入れすぎてしまうと曲全体の印象のバランスが崩れそうになるんですよね。とても繊細な曲です…!

感情面でも、技術面でもとても複雑な難しい曲ですが、こんなに複雑でエモい曲を生み出すなんて、さすがユキニフルだなぁと今も聴き返す度に思っています。
(あづさ)


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