見出し画像

79. 支援の「本当のゴール」とは

皆さんこんにちは。三浦優希です。
先日、クリスマスブレイクで日本に一時帰国した際に、”Team Chiba"のこどもたちと一緒にアイスホッケーをすることが出来ました。その時の様子はこちらから。

それでは、僕がなぜ彼らと一緒にアイスホッケーをすることになったか、その経緯をお話させていただきたいと思います。

2019年9月に発生した台風15号の被害により、千葉県唯一のホームスケートリンクである「アクアリンク千葉」が修理改善のために2020年5月まで使用不可能になりました。これは、近隣に住むアイスホッケー選手、フィギュアスケート選手、そして氷上スポーツを愛する全ての方々にとって非常に残酷な出来事です。そして、千葉県内にはジュニアアイスホッケークラブがあります。そのチームに所属する80名近くの小中学生にとって、唯一と言ってもいい練習環境が閉鎖しました。アイスホッケーを愛する、未来ある子どもたちが路頭に迷っているという事実を耳にしたとき、本当に胸が痛みました。そして、それと同時に、アメリカにいる自分でも、彼らのために何かできないかと考えました。

そもそも僕が、台風でこのような被害が千葉の子どもたちに出ているということを知ったのは、普段お世話になっているトレーナーさんからのラインメッセージでした。

画像2

これを知った直後、まずはこのような事態が起きているということをもっと多くの人に知ってもらいたい、との思いから私自身のSNSアカウントにてこの件について発信させていただきました。大変ありがたいことに、たくさんの方のご協力のおかげで、ツイッター上では20万以上のインプレッションを得ることが出来ました。

画像1

その後、チーム関係者の方々と直接連絡を取ることができ、
・選手たちやその家族の被災状況
・求められている支援内容
を確認することが出来ました。そして、彼らが困っていることとしては大きくわけて2つあることが判明しました。それは、

①練習環境
②モチベーションの維持

ということでした。
①の練習環境については、知り合いの方がチームを紹介してくれたり、他の方々からも練習試合や合同練習などの誘いがあり、移動の負担はあるものの、「当面は問題なさそう」という話を聞くことが出来ました。

僕が感じていた、解決すべき課題は②のモチベーション維持でした。千葉のリンクが使えないということで、都内や他県に移動する必要があり、その長時間移動や送迎にストレスを感じる選手や親御さんがいることは当然のことでした。そこで私は、海外で活躍する日本人選手や現役日本代表選手たちに呼びかけ、彼らを励ます応援メッセージを作成しました。たくさんの方々の前向きな協力のおかげで、無事、このビデオメッセージは彼らの目に届き、微力ながらも勇気を届けることが出来たと思います。

そして、もう一つ取り組んだことがあります。それは、「千葉の選手+その父兄の方々+私」のグループラインを作成したことです。こちらのグループラインでは、
・道具を必要としない家庭内でもできるトレーニングの方法
・スキルアップのための練習動画
などをシェアし、少しでもアイスホッケー上達に活かせるような内容の共有を続けてきました。また、彼らからの質問や疑問にも答えています。突然の取り組みで上手くいくかどうかも分かりませんでしたが、チーム千葉の選手や父兄の方々のご理解もあり、定期的に彼らと連絡を取ることが出来るようになりました。普段のやり取りはこんな感じです。(グループ名が千葉氷球伝承になった経緯は僕も分かりませんが、気に入っています。笑)

画像3

彼らとこのようにコミュニケーションをとるようになってから…いや、台風による影響でホームリンクが閉鎖したということを聞いたその瞬間から、「日本に帰ったら必ずみんなと一緒にホッケーをする」ということを心に決めていました。

そして、それを実現できたのが先日ということになります。みんなとは体育館でエクササイズをした後、江戸川にあるリンクに移動し、氷上練習を行いました。練習の内容は基礎スケーティング、ハンドリング、レシーブ、そしてシュートを中心としたものでした。僕のコーチング力不足でなかなかスムーズに練習を回すことが出来ませんでしたが(ごめんなさい)、それでもこどもたちが真剣にメニューに取り組んでくれたおかげで、充実した時間となりました。

--------------------------------------------

そして、聞いてほしいのはここからです。ここからが本題です。(長々と申し訳ありません。笑)

なぜ、こんな話をしたかというと、「復旧が進んでいる中でもまだこうして自分のやりたいことを実現できない子どもたちがいる」という現状を、少しでも多くの方に知っていただきたかったからです。今回に限らず、震災などが起きた直後はみんな心配をするけど、時間が経てばそのことを忘れてしまうことが多いと思います。もちろん、自分が当事者でない分、仕方のないことなのかもかもしれません。ただ、僕らが当たり前に生活できている中で、まだまだ被害の影響を受けている人たちが必ずいます。

一回の氷上練習をするためだけに、毎回往復4時間近くかけて移動する10歳ほどの選手、そしてその親御さんを思うと、とても胸が痛いです。

自分が当たり前に練習をすることが出来る中、大変な思いをしてホッケーを続けてくれている人たちがいるということを忘れてはいけません。

彼らとやり取りをしている中で、学んだことがあります。それは、

本当の支援とは、
・自分がやりたいことではなく、必要とされていることをすること
・最後は今までの日常に送り出すこと


ということです。「自分が助けたいから行動をする」というのはもちろん素晴らしいことですが、だからと言って相手が望まないものを自分のエゴで押し付けてしまっては逆効果です。被災地に千羽鶴を送ることが常に現地の人を助けているかというと、そうではないことと似ているのかもしれません。支援をする側は、どうしても「俺は善意でやってあげてるのに、それを無駄だというのか」と感じてしまうこともあるかもしれませんが、大変な生活を送っている人たちにとって、必要とされていないものをこちらが勝手に用意するというのは、「傲慢」以外の何物でもない、と考えています。

しっかりと求められているものを見極めるということが支援のファーストステップとしてとても大切だと感じました。

そして、今まで通りの日常に戻すという事。これが最も重要なことです。あくまで僕個人の考えですが、なにか自分が支援をしたからと言って、被害を受けた人々の生活がそれですぐに元通りになるわけではありません。一瞬の助けにはなるかもしれないけど、長い目で見たら効果は少ないかもしれません。

だからこそ、アスリートとして、千葉の方々を現段階のように直接的に支えるだけでなく、しっかりと区切りをつけて普段の生活に戻るのを後押しすることこそが本当の長期的な支えになると思っています。いつか、僕が手を引くべき時はきっと訪れます。「今のため」ではなく、「未来」を見据えた行動というものが大切です。綺麗ごとかもしれませんが、将来、ここにいる子どもたちが「あの時自分がしてもらったことを、今度は自分が他の誰かにしてあげよう」となれば、このアイスホッケー業界全体が少しずつ良くなっていくのではないのでしょうか。

アイスホッケーで今こうしてチャレンジを続けているものとして、そして日本代表のユニフォームに袖を通したものとして、80名近くの若きアイスホッケー選手たちがこのような問題に直面していると聞いた時、いてもたってもいられなくなりました。

今回のnoteは、「自分がこれだけ頑張ったんだぞ!」なんてことを見せつけたいなんて思いは全くありません。そんなちっぽけなことではなく、今現在も、日常に戻るために大変な中で生活を続けている子どもたち、そしてその親御さんがいるということを皆様に忘れてほしくない、という思いを込めて書かせていただきました。

先日”Team Chiba"のみんなと初めて会ったとき、そのキラキラした目や元気な姿に、僕は心から励まされました。また、サプライズで写真&コメント付きの寄せ書きまでいただいてしまいました。

本来励ますべき人間は僕の方なのに。
彼らは本当に強いです。

今後も、こどもたちに少しでも多くの希望を与えられるよう、僕なりの形で応援していきます。来年の夏に再度帰国したときに、またみんなでホッケーをするのがとても楽しみです。

大変長い文章となりましたが、今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。

三浦優希

画像4



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?