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水は涼しく,氷は冷たく

梅雨も明け,梅雨明けの大雨も乗り越え,夏がやってきました。
冬の寒波は ”冬将軍” というわけですが,夏の大暑はなんと呼べばいいでしょう?
・・・”夏奉行” ?
巷ではお奉行様の御沙汰を待って炎天下に座らされていたのか,熱中症が大流行でございます。
お奉行様のお沙汰ならまだ良いですが,閻魔様のお沙汰が下ってしまっては大変です。
こまめな水分補給を行いましょう。

実は私,病院薬剤師だったりします。
病院薬剤師って,なんぞ?という方は,アンサングシンデレラという作品にお目通しいただけるとよろしいかと!

私の働く病院でも,熱中症は増えているわけですが,そんな方々に ”涼” と ”水” を与えるお決まりアイテムがあります。
俗に言うところの ”点滴” なのですが,ラクテック®というリンゲル液の一種を ”冷やして” 使う,その名も ”冷やしラクテック” !!
まぁ,急速に冷やしすぎるわけにもいかないので,使い方には色々ありますが,夏になると冷蔵庫にラクテックを放り込み,こんな点滴を準備するわけです。
「冷やし中華はじめました」の登りみたいに,救急部の軒先に「冷やしラクテックはじめました」と掲げてみましょうか?
・・・なんちゃって。

とはいえ,自宅でリンゲル液を点滴することはできませんしね。
氷枕だったり,外ならアイシングや水分補給,水を首にかけてもいいですし,冷やしてあげることが大事ですのでね。
我慢していると,あっという間なので,早め早めの冷を求めてくださいね!
なんだか,冷やしそうめんを食べたくなってきました。
作るのに湯を沸かすという ”熱” が待っているわけですが,それを越えた後の「あー,冷たい!」という ”涼” がたまりません。

”涼” といえば不思議なもので,田舎のおばあちゃんの家って,エアコンなんてないのに涼しかったりしますね。
土間のヒンヤリ感がとても気持ちよく,ベタではありますが,縁側の風鈴というものも乙なものです。
扇風機だけでも涼しい室内は,太陽に照り付けられた庭の明るさと対称的に,電気もつけないので薄暗いのだけれども,それがまた涼を誘います。

FUJIFILM X-100F

そういえば,福山雅治さんの「ひまわり」という曲がありますが,夏に垣間見える涼や冷の描写がとても美しいです。
”黄昏に 頬染めて膝枕  薫る風 風鈴は子守歌”
”夕涼み 肩寄せて宵祭り  洗い髪 濡れたまま氷菓子”
誰とは言っていませんが,そばにいてくれる,いてくれた,大切な人の思い出を歌い上げた曲でしょうか。
そして,夏の火照るような暑さと,心の中の熱さと,それに対して,ふと通り過ぎる風の優しさ,取り出して手に持つ氷菓子の甘そうな,涼しげな情景。

夏という熱に満ちた季節だからこそ,ふとした瞬間の涼しさが,優しく心の熱を冷ましてくれるのでしょうか。
暑い暑いと言ってしまう季節ではありますが,垣間見える涼しさを大切にしたいものです。


*タイトルについて
”涼” は ”さんずい” ,”冷” は ”にすい” なのが不思議だったのですが,”さんずい” は水の形,”にすい” は氷の象形だそうです。

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