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【エッセイ】双眼鏡で初めてみた月

小学生の高学年だった頃。
天体観測の授業があって夜空の星に興味を持った。

超田舎だったから、いつも夜空には星がいっぱい
星座は余裕でわかるし、天の川もうっすら見える。

さっそく「望遠鏡」が欲しい!と親におねだりしたけれど
「お年玉を貯めて自分で買いなさい」となってしまった。

その前の年に、同じく授業で興味を持って「顕微鏡」を買ってもらっていた。一通り使って放置してたことが原因なのは自覚・・。


「なんとかして天体観測をしてみよう!」


そう考えて、まずは星空のスケッチ。

○月○日(○曜日) 晴れ、気温○℃
シーイング 5、透明度 3

覚えたての観測項目を入れて少し満足。
でも、星座を点で書いているだけじゃ全然面白くない。


「やっぱり望遠鏡がないと・・ダメだな」


その時、押し入れに望遠鏡と同類?の「双眼鏡」があることを思いついた!
山などに出かけた時に、昼間に家族で使っていたものだ。

昼間にしか使えないイメージがあったけど
望遠鏡っぽいから天体観測に使ってみることに。

「倍率が小さいから星なんてみても何も変わらないかもな」

そんな不安もあったので、最初は一番わかりやすくて
大きな天体の「月」を見てみることに・・


「あんなにでっかくて肉眼でも模様見えてるわ!」
と思いながら、「双眼鏡」越しに月をみてみる。


その瞬間、とてつもない世界が飛び込んできた。

「・・・このイボイボはクレーター、すげー数ある・・」


ビックリしすぎて無言になるほど衝撃だった。


まるで自分が地上にいないみたいな不思議な空間
空気がユラユラしていて
鮮明な月の地肌は剥き出しになって
大きな穴ぼこ、小さな穴ぼこが数えきれないくらいある。

教科書にのっている天体写真とは全然違う、とんでもない迫力
絶対、空気もないし人もウサギもいないと確信した
宇宙の世界を感じた瞬間だった。


それ以来、どっぷり天体観測にハマった私は
無事にお年玉数年分を注ぎ込み、望遠鏡も購入
赤道儀にモータードライブを付け一眼レフカメラで露光をためて
土星の輪や木星の縞模様、星雲・星団を撮影したりした。


でも、やっぱり
「双眼鏡で初めてみた月」
が一番強烈で、一番綺麗で、一番リアルだった。

今でも鮮明に覚えているし、一生忘れない感動の一瞬だ。


スーパームーンやら、皆既月食やらは
ミーハーなイベントだから、そこそこアプリで見れればいいけど

今度実家に帰った時に
何十年ぶりかに望遠鏡を引っぱり出して
天体観測でもしようかな、と思った。

そんなことを思い出した皆既月食の日でした。


終わり


©️Mahalopine

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