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日米のカウンセリング事情2<カウンセリングに対する意識の差>

前回の記事『日米のカウンセリング事情1<保険適用の有無>』では、米国においては医療保険でカウンセリングがカバーされることが普及の背景にあることをご紹介しました。今回は、日米のカウンセリングに対する意識の違いについてご紹介します。

これまでの経験を通して私が感じてきたのは、日本人のクライアントさんには「内面的問題は自分一人で解決しなければならない」という考え方が根強いのではないか、ということです。そのため、初めていらしたクライアントさんから、

・こんなことでカウンセリングに来るなんて甘えでしょうか?
・一人で解決できずに相談に来てしまったことが恥ずかしい...

といった言葉を耳にすることがよくあります。

この結果、日本人のクライアントさんは事態がかなり深刻になってからカウンセリングにいらっしゃる傾向が強いように感じられます。

一方、米国人のクライアントさんはより気軽にカウンセリングを利用する方が多い印象を受けます。もちろん個人差がありますが、比較的多くの方がカウンセリングを自己研鑽の一環と位置づけている印象を受けます。例えばカウンセリングを受け始めた理由として、次のようなことを耳にすることがあります。

・最近なんとなく閉塞感があるので、ちょっと話してみたいと思った
・結婚をする前に、カップルカウンセリングを受けてお互いの理解を深めたい

深刻な状況をきっかけにカウンセリングを始めるクライアントさんもたくさんいらっしゃいますが、上記のように、「現状に大きな問題はないけれど、毎日をより楽しく生きるためにカウンセリングを受けてみたい」といった理由も、日本人に比べて圧倒的に多いようです。

こうした文化的違いがカウンセリングの継続期間にも影響しているように感じられます。日本人のクライアントさんは、受診するきっかけとなった深刻な状況にやや改善がみられ始めると、カウンセリングを終了する傾向が強いようです。他方、米国人のクライアントさんは当初の状況が改善された後も継続され、その他の悩みや改善したい点についてご相談くださることが多いように感じます。

日本で生まれ育った私自身、米国においてカウンセリングがどのような存在なのかを把握するのは難しいのですが、長年通ってくださっているあるクライアントさんがこのようにお話してくださいました。

「私にとって、カウンセリングはジムに通うようなもの。体のメンテナンスが必要なのと同じように、週に1回カウンセリングに通って自分の気持ちに向き合う時間を作ることで精神が整えられる」

もちろん、これは私のクライアントさんの一意見に過ぎず、一般化することはできません。しかしこの言葉を聞いたとき、日本でも多くの人にとってカウンセリングがジムに行くくらい身近で気軽な存在になれたらよいのに、と強く思ったことを覚えています。

世界保健機関(WHO)が提唱し、近年注目を集めている「ウェルビーイング(well being)」という概念は、「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態」を指します。そしてこのウェルビーイングを達成するためには「医学、心理学や関連する学問の恩恵をすべての人々に広げることが不可欠」とされています。

日本でカウンセリングがより気軽に利用できるようになることで、より多くの人がこのウェルビーイングを享受できるようになればと願って止みません。

私一人にできることは些細なことに過ぎませんが、心理やカウンセリングに関する情報をブログ等を通して発信することにより、少しずつ「心理学って面白いな」「日常生活に取り入れてみたい」といった意識が広がっていけばよいと考えています。

長谷川由紀

☆おことわり☆

本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。
また、本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。

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