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うまいもの食いの人たち

私が思う「本当のうまいもの食い」の人たちは、だいたいの食べ物から、良さを発見し愛でる事が出来る人の事です。

殆どのものを楽しめます・・・傍から見ると、意外にテキトーに見える感じです。

これはグルメ関係に限らずですが、意外に「ガチ勢」は、自分が好きなもの以外をクサす事はあまりなく「まあ、それはそれで・・・そういうの、好きな人もいるし・・・」という感じで呑気にしていて、出てきた料理があまり好みではないとしても文句を言わず、とりあえず食べます。

しかし、学習も資質も才能もないシェフや、知識だけで結果が伴っていないような「褒められ待ちの面倒くさい自称料理好き」がドヤっているのに対しては厳しい態度になります。メディアや特定の団体が変に持ち上げて商売しようとしている場合にも反発します。

逆に、誰かが、料理が得意ではないのに自分をもてなそうと頑張ってワザワザ料理を作ってくれたら、それが不味かったとしても、自分のために作ってくれたという事に感動して、それは心に美味に感じます。そういうのを楽しめる人は「ガチグルメ」です。

いわゆるグルメな方が「食事を楽しむには、もの凄く美味しいものを知らないでいること」なんてしたり顔で語る事がありますが「ガチのうまいもの食い」たちは、飲食に関する研究をする事、新しい発見をする事が大好きで、それが日常生活に組み込まれているので、自然になんでも「とりあえず試す」人が多いようです。

それに「ガチグルメ」たちは、味覚なんて、体調や、食べる環境や、予備知識があるか無いかで簡単に変わってしまうもの、という事を良く知っています。

以前食べて美味しいと思ったものが、今回は美味しく感じられない・・・料理人が変わったのか、手抜きをしたのか、素材の質を落としたのか、などなど考えてしまうものですが、最終的には「自分の体調がその料理を美味しく感じない状態だっただけ」だったりするのは、良くあります。

絶対味覚というのは無いと考えて良いと個人的には思っています。口や鼻の粘膜は、今食べているものの前に食べたもの、香りを嗅いだものから大きく影響を受けますので・・・それがあるから、ワインと料理の「マリアージュ」を楽しめるわけですし。(ワインに限りませんが)

それと「肉体・神経が、その味覚を感じていても、それを脳が認識し、具体性をもって体感し、言語化出来るかどうか」という事は、とても重要です。

子供や若い人は明らかに大人よりも味覚や嗅覚が鋭敏です。しかし、子供は「味覚と認識の配線がまだ未発達」で、神経がそれを感じても脳で認識までは出来ておらず、結果としては、まだ味が分かっていない、という事になります。

また、成長期にある子供は「心地よいマイナスの味わい」・・・程よくあれば、複雑でエレガントな味わいになる苦味、辛味、強い酸味、渋み、などは好みません。肉体も精神もそれを必要としておらず、嗜好が単純だからです。

味覚や嗅覚は余程特殊な体質を持って産まれた人でない限り、若い方が絶対に肉体と神経は感じているわけですが、キャリアの長い人の方が微妙な味わいまで具体的に感じられるのは「神経と脳での認識の配線が沢山出来ているから」というわけです。それはやはり「飲食が好きだから」という事がベースにあるから、そういう場所に到達したのだと思います。

だから「ただのブランド食い」みたいなタイプの自称グルメの人は、そういう「ガチ勢」からは「知的好奇心も行動力も経験も愛情も教養も無いヤツ」と観られてしまいます。これもグルメ関係に限りませんね。

ガチのうまいもの食いは、凄く上も、凄く下も知っているし、もちろん中間も知っているし、不味いものですら楽しみます。そして、これはとても大切な事ですが彼らは「自分の好みを把握している」のです。

「自分の食欲が満足するようなものを自ら与える楽しみを持っている人」が本当のグルメだと私は思います。

ある意味、自分の欲に忠実で、その欲自体が強いのです。

それは、値段が高いも安いも、希少もありきたりも、料理人が有名無名関係なく、自分の感覚にピッタリ来るものを選んで、自分に与えられる人・・・偏見少なく本質を観る人、という事なのです。

だから、最初から変に篩にかけずに、自分を取り巻くもの全体にニュートラルな態度でアンテナを張っていて、そこでいろいろ試して楽しむ事が出来るのです。

ただし「自分の内側に入れるものに関しては慎重」とは言えるかも知れません。そこは厳しい。

しかし、そのように自分の価値観をしっかり持っているがゆえに、その周辺のもの、自分の好みと違うものも楽しめるのです。

そして、ただ美味しかったと言うのではなく、どのように美味しかったかをキチンと他人に分かる言葉で語れるような人を「うまいもの食い」と言います。

さらに、食べた料理を自分好みにアレンジした上で再現すらします。

「ブランド食い」の人は「うまいもの食いの人」ではありません。


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