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めんつゆを使っちゃダメだなんて!

以前、ネット上で『料理にめんつゆ使う女とは付き合えない』なんて話題が沸騰していましたね。

時折、このような話題が出て来るようですが、元料理人の私が、一般の人に家庭料理を教える際に、特にリクエストが無い場合は、むしろ市販の出汁系製品を上手に使う方法を教えます。だって、みんな日々の生活に忙しいぜ。面倒じゃん。「きのう何食べた?」のシロさんもめんつゆ愛用者だぞ。笑

そもそも、例えば和食の出汁を、ちゃんと食材から出汁を引いて料理しても、そのへんに売っている低品質のかつをぶしや昆布を使うと、味がカスカスになってしまう事は良くありますし、ちゃんと出汁を引く技術が無かったり、高いからと量をケチったりすると、本当にカスカスな出汁しか引けませんから、むしろ高品質の出汁調味料を使った方が仕上がりが良く経済的な事が多いものです。

「めんつゆ使う女信じらんねえ系男子」は、例えば和食であるなら、高品質のかつをぶしと昆布を用意し、高品質なしょうゆ、味噌、みりん、酒などの高額調味料を買い、その保存のためのストッカーを用意してあげられるほどの高額所得者で、なおかつ、それを使いこなせる技術をお持ちなのでしょう(笑)そうそう、使う水も気をつけなければなりません。

自称、舌の肥えた「めんつゆ使用ありえん男子」が納得の高級品のみを使ったら、業務用で買うわけではないから割高な仕入れになるので、吸い物椀一杯のおつゆのみで原価100〜300円ぐらいかかりますよ(調味した出汁のみで)。しかも、食材の管理や使い方が悪いとむしろ、市販のめんつゆよりも不味くなります。良いものは、保存や取扱にも技術がいるのであります。

ちなみに、出汁系調味料は、説明書に書いてある分量を使ったらとてもじゃないけどもクドくて食べられません。薄くつかうことが大切です。

蕎麦つゆの高品質なものは別として。。蕎麦つゆなども、高級品を買って好みに応じて、しょうゆやみりんを足したりすると結構使えます。めんつゆの高級品といっても、自分でイチからつくるよりもずっと安いです。ただし、蕎麦専門店の「長期熟成させた”かえし”」を(しょうゆ、みりん、ザラメを混ぜて熟成させたもの)使った「枯れ感があるツユ」は、市販の蕎麦つゆではどうしても出せません。

なんにしても、問題は「加減」なのであります。

そばつゆ以外のめんつゆや希釈調味出汁を料理に使う際には「薄めに使って他の調味料や、具材から出る味で全体をまとめる」ということだけ押さえておけば、だいたい上手く使えます。

それと、意外かも知れませんが、むしろ本格的な自然素材を使った料理は物足りない、と言う人も多いのです。

(上にも書いたように、素材を上質なものを使えば素晴らしいものになりますが、それはそれで取扱や調理技術が悪いとむしろ不味くなることも多い)

だから無添加を売りにしているお店の料理は、物足りないと嫌う人が多いものです。

(無添加を「売り」にしているお店は調理技術が今ひとつ、という傾向があるのも理由かと思います)

食品添加物が沢山入った料理に慣れている多くの現代人にとっては、めんつゆを使った方が美味しいと感じることも多いのです。これは料理を提供する側の経験上そうでした。

「オレ様は味にうるさいよ」と主張する人ほど、市販品の出汁や調味料を上手く使うと「ウマい!」と。。。いうことが意外に多かったです。笑

例えば、イタリア料理を提供する際に「味がもの足りない」と文句を言う自称グルメな人には、スーゴ・ディ・カルネなどのちゃんと取った出汁だけでなく「味コンソメ」(業務用の粉のコンソメ・通称味コン)をちょっと足して出し直すと「これならウマい!」と喜んでもらえる、というのは良く体験しました。

もちろん、そのスーゴ・ディ・カルネがちゃんと作られていなかったとか、薄いとかではなく、味コンのちょっとジャンクな味だと美味しいと感じる人が結構多いということです。

人は元から知っている味が好きなのです。味だけではありませんが、人は基本的に何かを眼の前にする時、自分の記憶の内にある快の記憶と知識を引き出し、眼の前にあるものと比較し、品評し、判断し、納得し、安心します。

食味に関して人は基本的にかなり保守的です。だから、その人が普段美味しいと思っている味と似たもの、そして誰かに習った美味しいとされる味の知識と近ければ美味しいと反応します。

だから意外にめんつゆ否定論者の人が、実際にはめんつゆ的な味を沢山摂取していて、めんつゆの味を美味しいと思っていることは意外に多いです。

そもそも、出汁調味料も高級なものは大変研究されていて、添加物も少ない、あるいは無添加ですし、味も洗練されています。メーカーによってかなり味が違いますから、自分の好みのものを見つけると良いです。

もちろん、添加物の多い安いものは安いものなりに使いようはあります。

プロの調理場でも、プロ用の便利な調味料や半調理状態の食材、便利な調理用具を使いこなしています。だから当然、一般家庭で、日常生活の充実のために、めんつゆを使うのが悪いわけがない、と私は考えています。

(食品や添加物アレルギーなどで全て手作りせざるを得ない、という人のことはここでは話題にしておりません)

家庭料理は、日常生活の一部です。なので、自分たちが食事をつくること、食べること、その両方を無理せず心地よいと感じる料理があれば良い。そういう位置づけで良いと思うのです。

だから、無添加の手作りにこだわることが心地よいし楽しい人はそうすれば良いし、簡便化したい人はそうすれば良い。

普段簡便化している人が、今日は張り切ってイチから作るぞ!というのは料理がレジャーになり楽しいですし、普段、手作りしている人が忙しい時にはお惣菜を買って済ませて他の時間を有効に使っても良いわけです。

まあ、でも食に限らずですけども、居住と生計を一にする場合は同居する前にお互いの気になるポイントを良くチェックし合っておいた方が良いかも知れませんけどね。こういう問題は、同居人同士の好みをすり合わせようとしても無理な場合が多いので・・・笑


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