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工芸品と芸術品の性質の違い

私は普段、このnoteに書いている通り、全ての人為と人造物は等価なので、例えば工芸品と芸術品の「上下は無い」としております。

工芸品の創作的に進化した最終形態が芸術品みたいに言われますが、そういう事実は無いという立場です。

「この蒔絵は工芸品を超越して最早芸術品である」

みたいな言い方ですね。そんな事あるかーい!笑

工芸品と芸術作品は、人造物の分野の違いに過ぎません。

しかし、それぞれ性質が違うところがいくつかあると思っております。

例えば、工芸品と芸術品とでは、以下のような違いがあると私は考えております。

*工芸品とデザインは常に「陽」の存在

*芸術品には「陽」の性質を持った作品と「陰」の性質を持った作品の、どちらも存在し「その両方」を持ったものもある

デザインや工芸は、精神的実用だけでなく、手や身体による実用も伴う場合が多いので「陰」の要素があるといろいろ滞りますよね。機能しないのです。また、曖昧では使いにくいので明快さも必要です。明快さも「陽」に含まれると思います。製品として完成品である事が求められます。

しかし、人間の精神は、常に陽ばかりでは成り立たず「陰」が必要な時もありますし、製品として完成していない状態に美が顕現する事もあり、それを残したい・・・となった場合、芸術品ではそれが可能です。

工芸品やデザインは「やりかけの美」というのは存在出来ないんですね。「使いにくいけど創作心が刺激される魅力的な道具」というのは存在しますが、それも一応道具としては完成品という事が前提です。

あくまでもそれは性質の違いなので、工芸品でも芸術品でも「美」はどちらにも顕現します。ゆえに絶対的平等の性質を持つ「美」のもとで、どちらも人造物として上下はありません。

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ヘッダー画像は、東京国立博物館の法隆寺館にあった、1,300年ぐらい前の、天然染料で染められた絹布です。これぐらいのものになると、工芸とか芸術とか超越してしまって、ものスゴイ存在になっています。


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