見出し画像

【保育の場から】あんしんできる場所

大好きな番組『ドキュメント72時間』で何か月か前に、「"どろんこパーク" 雨を走る子どもたち」という回がありました。

年末に、2022年のもう一度みたいランキングでも1位になっていましたが、私にとっても名作でした。
いろんなことに思いを馳せました。

舞台は川崎市にある子ども夢パークという施設。
少し危ないと感じられることでも体験させてあげられる場所に、というコンセプトの公共施設。
だから、雨の日に水溜りに向かってすべり台を豪快に頭のほうから滑ったり、火を起こしてみたりという体験を、子どもたちが自分で考えてやってみることができる。

そこはフリースクールも併設していて、学校に行かない選択をした子たちが思い思いに過ごす。

たくさんの子どもたちが、彼らなりの言葉で自分の話をしていました。
いじめられたのが嫌だったこと、学校で座っているのが苦手だということ。
将来への不安と展望。自分が好きなこと。

私はまだ、子どもは子どもだと、思ってしまっていたなと感じました。
子どもは所詮子どもだと。
ところがどうでしょう。
彼らは、経験が少ないなりに自分の頭で一生懸命考え、自分の言葉を持っていました。

さらにこの場所では、自分らしくあるためのさまざまな行動を茶化したりする人がいないように見えました。
ギターを弾いて歌ったり、演奏に合わせて踊ったり合いの手を入れたり、泣いたり、急に側転したり、集中しすぎて返事しなかったり、昼間に花火したり。
みんなみんな、楽しそうな顔をしていました。

最も感動したのは、遊びのなかで10歳から12歳くらいの子たちが話し合っていた場面。
サッカーのゴールをどこにするかという話し合いで泣き出した子の話を、誰も茶化さずに真剣に聞き、その子がこだわった理由を理解して別の案を提案する。
そして、泣いていた子も、それならOKと笑顔で応じ、協力して決まったとおりに動き始める。

彼らはちゃんと、人の話を聞いて理解しようとするし自分たちで解決できるのだ。
ここで形成されている集団は、温かな秩序を保った小さな社会であるように見えました。
(もちろん、よい側面を多く見せていることは承知してますが、それでも)

学校っていうのは、社会生活を学ぶ場でもあると思ってたんだけど。
その学校という場で生きづらい人たちがいて。
そんな彼らはちゃんと、自分たちの場所で秩序を守れているみたい。
学校ってなんなんだろう。

番組では、学校に馴染めなかった子どもたちの保護者の方の葛藤も語られていました。
なぜ保護者は葛藤しなければならないのか。
社会に馴染めない我が子の生きづらさへの心配や、我が子がそういう目で見られることがつらいから、かなぁ。

「社会に適応する」ということの歪みについて考えてしまいます。
よく、大人の前で非常にいい子である子が逆に危ういという話があります。
本来の「適応」ってなんなんだろう?
社会は本当は、さまざまな人たちを受容できる場所であるべきなのに。
その上での秩序なんじゃないのか。
子どもが社会で生きていくために大人たちが本当に教えないといけないことってなんなんだろう。

翻って思えば私は、自分を窮屈なところに押し込めていたようです。
学校に馴染んで社会に馴染んでうまくやっているように見える人たちはみんな、実は自分が窮屈なところに押し込められていたことに気づいていなかっただけなんじゃないだろうか。
自分らしくあろうと振舞っていた人たちのことを「イタイ」なんて周囲に合わせて言っていたんじゃないか。

思春期ぐらいのころから、「そのままのあなたがいいんだよ」と言われることを強烈に求めていました。
ということはきっと、周囲に合わせて自分をなにかしら押し込めている自覚があったということなのでしょう。

本当はもっと、突然歌ったり踊ったり、したかったのかもしれない。
本当はもっと、「違うと思う」とか「それは嫌だ」とか「私は行きたくない」とか「私はその子のこと嫌いじゃない」とか、言いたかったのかもしれない。

そして現在私は、幼い子どもたちを相手にしている。
どんなときでも、「そのままのあなたがいいんだよ」というメッセージを子どもたちに向かって発信し続けられているだろうか。
「嫌だ」っていう気持ちに、いつも寄り添えているだろうか。
いつも自分自身でいていいんだと、安心できる場所を提供できているだろうか。

どんな人でも安心して自分自身でいる権利があるんだということ。
それを互いに尊重できるということ。
これからを担っていく子どもたちが、そうした価値観を当たり前に持って成長して、優しい社会をつくっていけるように。
その基盤をつくる大切な仕事を、保育者は担っているんではないかと、あらためて身の引き締まる思いになりました。

あぁ、すごい暑苦しく書いてしまったじゃないか。

素晴らしい回でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?