熱帯林を船でゆく【バングラデシュ旅行記6】
こんにちは!yukiです。
バングラデシュ旅行記の6回目。
今回は、船旅のお話をしようと思います。
楽しんでいただけると嬉しいです。
前回のお茶畑のある町・スリモンゴルから、
首都・ダッカへ戻ったところから始まります。
それでは、どうぞ!
船着場へ
外の雑踏と喧騒からはなれた、
小綺麗な船の運航会社のオフィス。
中年の男性スタッフが明るく言います。
「今晩の船便、
乗れそうですよ!」
首都ダッカに戻ってきた僕は、
国の南西部に向かう交通手段として、
船便を検討していました。
さっき戻ってきたばかりだけど、
この街で一泊するのはちょい厳しい。
なぜなら、ここ数日、
喉の痛みと咳が止まらなくなったからです。
間違いなく、
排気ガスとホコリのせい!
都市部のホコリはかなり酷く、
シャワーの時も、シャンプーを
何度か繰り返さないと泡立たないほどなのです。
ここには留まらず、
さっさと通り抜けたかったのでした。
男性スタッフは続けます。
「あとは、船着場に行って、
スタッフに聞いてみてください。
支払いも現地でお願いします。」
「わかりました、
ありがとうございます。」
オフィスを出て、
船着場に着くころには
辺りはもう薄暗くなっていました。
船着場、混みすぎ…
人に聞きながら目的の船を探し、
ようやく見つけてスタッフさんに
乗りたい旨を伝えました。
スタッフさんがいいます。
「この船の行き先は、
モラルガンジです。
あなたが行きたい町からは、
バスで数時間の場所です。
大丈夫ですか?」
モラルガンジ…
まったく情報のない土地。
まあ、目的地の近くみたいだし、
行けば何とでもなるでしょう。
「はい、大丈夫です。
船室のランクは、中を見てから
決めてもいいですか?」
「もちろんですよ、
着いてきてください。」
お金は節約したいので、
船室の選択肢は2等か3等。
まず3等から見せてもらいます。
土足の硬い床があるだけのスペース。
ここで沢山の人に混ざって寝るのは、
さすがにちょい厳しい。荷物も怖いです。
続いて2等。
狭いけれど、清潔な船室。
ピカピカのシーツ。
うん、こっちにしよう。
日本円で、
だいたい2000円くらいでした。
(バングラだと安くはありません)
船は、18時半頃に出航しました。
辺りはすっかり真っ暗。
デッキの手すりに身体を預け、
ぼんやりと風を受けます。
何も見えないけれど、
かなりスピードが出ていることは分かります。
それにしても夜行船って、
なんだかテンション上がるー!
PCを持っていたので、
船室で「タイタニック」を観るという
なんとも月並みな行動に出ました笑
主人公のジャックは、
「根無し草のような
生活に満足しているの ?」
と問われ、サラッと答えます。
「満足ですよ。」
そして、こう続けるのです。
「毎日、何が起こるか分からないから楽しい。
人生は贈り物、どんなカードが配られても
大切にしたいんです。」
旅の途中で聞くと、刺さるなあ。
映画を見終わって、
余韻に浸りながら、
電気を消してごろんとします。
時刻は、もう0時近くなっていました。
ときどき港に停泊すると、
人々の声や、積み荷をおろす音が
聞こえてきます。
穏やかで心地よい揺れを感じながら、
だんだんと意識が遠くなっていくのでした。
熱帯林を船でゆく
翌朝。
船が沈没する夢で目を覚まします。
もう、タイタニックなんて観るから!!
時刻を確認すると、
午前7時ちょっと前。
身支度して外に出るとまだ薄暗く、
夜明けが近づいているところでした。
海なんじゃないかってほど、広大な河。
船なのかよく分からないものが
通り過ぎていきます。
寝ぼけて撮り損ねました。
ほとんど沈んでるんじゃないか?
って船もやってきました。
砂を積んでるようですが、攻めすぎです笑
河の両岸は、深い熱帯林。
しばらく景色を眺めているうちに、
朝食をいただける時間になりました。
なんと洋風の朝食。
トースト、オムレツ、紅茶!
バングラ風の朝食に飽きていたので、
テンション上がりまくってました。
・・・こうやって見ると、
あんなに喜んでいたのが理解不能なほど、
美味しそうには見えませんね。笑
朝食を終えて、
ぼんやりと景色を眺めていると、
4人の男の子たちが、少し離れたところから
こちらを見ているのに気づきます。
朝だし、このまま景色眺めてたいし、
気づかないフリをしていると、
とうとう近寄ってきて話しかけられました。
「ハロー。
お兄さん、どこから来たの?」
「ハロー。日本だよ。
きみたちはお友達?」
「うん、そう!」
それから4人で交互に質問してきて、
最後は、
「写真、撮ってほしいなあ」
無邪気でかわいくて、
たくさん撮らせてもらいました。
街と同じく、
大人からも声をかけられます。
話してて気が合いそうだったけど、
すぐ船を降りていってしまった大学生は、
「僕のこと忘れないでね、
このペンあげる」
とプレゼントをくれました。
何かお返しできればよかった…
いったん部屋に戻っても、
外に出るとまた男の子たちが
駆け寄ってきてかわいい笑
男の子たちと遊んでいるのを
黄色い服の女の子がじっと見ていたので、
こっちおいでよって声かけると、
サーっと走って逃げていきます。
何回かそれを繰り返したのち、
その子は友達を連れてきて、
今度はそろそろと近寄ってきました。
すると周りの大人たちが、
「おい、この子たちも撮ってやれ!」
って言います。
どうする?って聞くと、
2人は首を横に振る笑
なぜか周りの大人たちが
女の子2人を説得するという、奇妙な構図。
かわいそうに苦笑
結局撮ることになりましたが、
2人とも緊張してカチコチでした。
やや緩んだ1枚。
その後はすっかり慣れたみたいで、
いっぱい話しかけてくるし、
景色を眺めていると背中をつついてきたりして
かわいらしかったです。
停泊するごとに、
乗客はどんどん減っていきます。
子供たちも、
ある港でいっせいに
降りていってしまいました。
みんなで
「バイバーイ!」
って叫んで手を振ってくれて、
最後までかわいかったなあ。
子供がいなくなった船は、
すっかり静かです。
少し寂しく景色を眺めていると、
赤ちゃんを抱いた女性が
歩いてくるのが見えました。
赤ちゃん可愛すぎるし、
女性もびっくりするほど美しい。
2人の周りの空間が輝いているかのようです。
僕はそれまで、すれ違っただけの人に
撮影をお願いすることはありませんでした。
写真のために旅してるわけじゃないし、
そんな積極性も持ち合わせていない汗
でも、この時だけは違いました。
気づくと、
「あの...!」
と声をかけていたのです。
自分でも驚きました。
「あなたたちの写真を、
撮らせてもらえませんか?」
ちょっと驚いた顔の女性。
「え、いやよ、
どうして撮るの?」
「あなたたちが
とても素敵なので…!」
想いが伝わったようで、
そう、分かったわ、と女性は少しほほえみ、
肩に下ろしたヒジャブをスッと被りました。
赤ちゃんを抱き直して、こちらを向きます。
1枚だけ、静かにシャッターを切りました。
シャッターを切ったとき、
2人と心がつながったような感じでした。
感謝があふれてきます。
女性も、
「よく撮れてるね!」
と喜んでくれました。
お礼を言って、
しばらく赤ちゃんをあやさせてもらい、
女性は家族のもとへ戻っていきました。
船は進み続け、ほどなくして、
終点の小さな町に到着しました。
残っていたお客さんが
ゾロゾロと桟橋に下りていきます。
楽しかった船旅も終わり。
温かい思い出をたくさんもらい、
得たものの多い旅だったのでした。
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
それでは、今日も良い1日を!
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