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第157回 インバウンドに舵を切っている企業はテレビCMは打たず、日本人が観る番組の広告費は安くなっている。ゆえに、そこから支払われるタレントのギャラは下がる一方…

経営者はみんな頭を抱えていることなのに、タレントは他人事だと思っていてヤバすぎる!?

西野亮廣が、日本の芸能界の“明日”を予測! 円安、インバウンド、資材高騰、AI台頭、高齢化…時代やテクノロジーの影響で、仕事は減り、ギャラは下がる

今日は【日本のタレントはこれからどうなるの?】です。

「外的要因に目を向けていない」これは結構危険だなぁと


今日は「タレントさん達は、この問題に蓋をしすぎじゃない?」という話をしたいと思います。

先日、移動中の車内で「AI芸人は出てくるのか?」「AIは芸人の競合になるのか?」みたいな話題がフワッと湧いたのですが、僕個人的には、「AI芸人」が出てくるイメージは無くて、出てきたところであまり面白くはないと思っていて、「AI芸人」が芸人の競合になることは無いと思うのですが、一方で、人々がAIを使って遊ぶ時間は確実に増えるので(可処分時間の奪い合いになるので)、結果的にAIは芸人の競合になる(芸人はAIに仕事を奪われる)と思っています。

この時の問題は、「芸人がどれだけ技を磨いても、こればっかりはどうしようもない」といったところ。

芸人個人の「努力不足」「才能不足」で仕事が減るわけではなくて、時代やテクノロジーといった外的要因によって芸人の仕事が減る‥という話です。

僕は仕事柄、芸人やタレントの友達が結構いるのですが、生き残っている人は皆、自責思考で、「全ての原因は私にある」と考える人達です。

それは本当に素晴らしいことだと思うのですが、一方で、「だからこそ外的要因に目を向けていない」というところもあって、これは結構危険だなぁと思っています。

経営者さんなら当たり前のように考えることですが、たとえば「資材の高騰」に頭を抱えるタレントさんってあまりいないんです。

普通に考えて、「資材が高騰している中、日本人のお客さんの収入は上がっていない」という状況は、演劇の舞台に置き換えると、「美術セット費は高くなっているけれど、チケットの値段は上げられない」という状況だから、行き着く先は「これまでのような美術セットは作れない」ということで、シンプルにパフォーマンス(お客さんの満足度)は落ちちゃう。

舞台役者さんなら「資材の高騰」で予算が圧迫されて、稽古場を押さえる予算が削られ、稽古日数が減らされて、十分な稽古ができないまま本番に臨む…ということもあるでしょう。

なので、「資材の高騰」がタレントさんの仕事に影響しないわけがないのですが、どういうわけか、皆さん、この問題に目を向けない。

今、日本中の経営者が「このままでは会社を守っていけないから、外国で売れるものか、インバウンドをとらないと! でも、どこから手をつければ…」と頭を抱えてらっしゃると思うのですが、一方で、「自分を海外で売る」とか「海外から来られる観光客に自分を売る」と考えているタレントさんは、ほとんどいません。
(『ゴット・タレント』に挑戦する人がチョコチョコいるぐらい)

エンタメ屋が社会状況を無視し続けることは絶対に不可能


タレントさんを取り巻くビジネスモデルを考えた時に、タレントさんが「円安」や「インバウンド」を無視できるわけがありません。

たとえば、まず、インバウンドに舵を切っている企業は基本、テレビCMは打ちません。
日本語が分からない海外の観光客が日本語で展開されるバラエティー番組は見ないので。

YouTubeもそうですが、広告費というのは「そこに広告を出したい」という企業が増えれば増えるほど高くなるし、少なかったら安くなる‥という性格があります。

その中、今は「海外に商品を売らねば」「インバウンドをとらねば」という企業が増え始めてきていて、「日本人だけを相手にしても、会社が守れない」という企業が増え始めている…ということは、日本人向けに広告を出す企業はジワジワと減り始めているわけだから、普通に考えて、日本人が観る番組の広告費は安くなっている。

タレントのギャラはその中から支払われるわけだから、その番組の中でタレントがどれだけ活躍しても、ギャラが上がることは無いどころか、今の状況だと下がる未来しかない。

「ギャラが安くなる」ということは、「稼働(発信量)を増やさなきゃ食っていけない」とイコールで、それはつまり「インプットの時間が減る」ということだから、新しいことは発信できなくなる。

よく言えば「伝統芸能」なのかもしれませんが、見る人が見れば「やっていることが10年前と何も変わってないじゃん(まだ、そんな古臭いことをやってんの?)」というガッカリに繋がる。望んでそこに向かっているなら構いませんが、そこに向かうしか選択肢がないのは問題だと思っています。

エンターテイメントは社会と密接に絡みあっていて、エンタメ屋が社会状況を無視し続けることは絶対に不可能です。「資材高騰」の影響は受けるし、「円安」の影響は受けるし、「高齢化」の影響は確実に受ける。

この数十年は日本がそれなりに元気に回っていたから、その恩恵を受けて、タレントはあまりそこを考えなくても良かったのですが、もう日本のボーナスタイム(タレントが社会状況を考えなくても良かった時間)は終わりを迎えていて、これは自戒を込めて、タレントは次の時代に向けて、今のうちから種を蒔いておいた方がいいと思います。

ここは逃げきれません。

西野亮廣

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