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ポルトガルと日本の2拠点暮らしになって2年。だいたい年の半分ずつ、両方の国で過ごしています。こっちで暮らして思ったことを、少しまえに書いた散文みたいなものに、付け足して書いてみます。

僕らの家があるのは首都リスボンから、クルマで40分ほどのところにあるトレシュ・べドラス。中心地からさらに10分ほど走った片田舎に住んでいます。周りには、ワイン用のブドウを栽培する畑と、洋ナシの畑ばかり。あとは家が数軒。ここにいるとあまり人と会いません。

ポルトガルで暮らしているのは、サーフィンが好きだから。世界的なサーフスポットがたくさんあって、今住んでいる家からも1時間圏内にたくさん。あとは、ここを拠点に欧州の取材などを進めることができたら、という思惑からも。サーフィンに足繁く通うことはもちろん予想していましたが、こちらの快適な気候(湿度少ない)や、奥深いポルトガルワインの魅力にはまってしまい、空を行き交う鳥や航空機、近くの森で草や虫を観察しながら、田舎暮らしを満喫過ごしてしまっているのが正直なところ(仕事しろ)。

日々の暮らしは、割と単調です。朝4時ころに起き出し、仕事をして、朝8時半になったら、子どもを保育園へクルマで送る。そのまま、カフェで仕事をしたり、昼過ぎに家に帰ってきてまた仕事したり、波がよかったらサーフィンに行ったり。夕方、子どもが帰ってきたら、犬の散歩に行ったり、庭でプール遊びをして、ご飯を食べて、寝る。だいたい夜9時くらいにはベッドに入ります。こっちは陽が長いので、夏は10時とかでも薄明るかったりします。子どもが寝るには部屋を真っ暗にする必要があって、分厚い布で窓を塞いでいます。日本のクオリティの高い遮光カーテンが恋しくもあります。

こっちの暮らしで悩ましいことは、意外と少ないです。英語も比較的通じますし、また、Google翻訳などの精度も上がっていますので。ただ、これまではいろいろ大変だったこともありました。

まずはガソリンを入れること。ただガソリンを入れるだけなのですが、ガソリンスタンドの表記には、gasolinaとgasoleoって書いてある。この微妙に違う感じが紛らわしくって、最初は何度も戸惑いました(ちなみに、gasolinaは日本でいうガソリンのこと。gasoleoはディーゼル車用の軽油です)。

クルマ関係で言うと、基本的な整備も自分でしなければならないこと。エンジンが調子悪いから修理屋さんにみてもらったとしても、エンジンオイルや冷却水を足したりしてくれるとは限らない。

路上駐車も悩ましい。とくに坂道でのマニュアル車縦列駐車の難しさと言ったらありません。こっちではマニュアル車が普通ですので、オートマに慣れた日本人の僕にははなかなか慣れません。

スーパーで買い物をするときにもあります。それがNIFナンバー。「Número de Identificação Fiscal」の略で、出資番号 「Número de contribuinte」とも呼ばれる、9 桁の個人納税者番号で、これをいちいち聞かれるんです。結構、社会のデジタル化は進んでいるのですが、スーパーやレストランで、これを口頭で伝えるとき、なんだかなあと思うのです。一方で、ちゃんと伝わったときに、ちょっとうれしくもなります(発音が通じたのだと)。

あと、書類をプリントするのも一苦労。こっちにはコンビニなんてありません。小さい、ぱっと見コンビニみたいなお店でも、プリントサービスなんてやっていません。プリント専門のショップや、または小さな商店でやっていたりするので(カーテンを売っている店がサービスを提供していたり。でも、そんなのわからないですよね)、それを探す。でも、なかなかないのです。

あとは自宅でガスを使うことも大変だったりします。いや、ガスを使うのは簡単なんです。日本と一緒。問題はガスが切れたとき。それは突然やってきます。ある朝、急にコンロが使えなくなる。そんなとき、うちのような田舎では、プロパンガスの交換も自分しないといけません。ガスボンベの外しかた、どこで買うのか、また付けかたなど、すべてが初めて。間違ったら爆発するんじゃないかって、最初はかなり慎重になりました。

こっちにいると、生活の基礎的なことで精一杯です。でも、それが楽しい。日本でできていた当たり前のことは、 こっちでの僕にとってはいちいち大変 。言葉もろくできないので。

一方で、暮らしの隅々で〝普通〟を実現できたときには、 すごくうれしくもあります。 シンプルに〝生きている〟と感じられる。遮光カーテンやガスの交換も、無いなら無いでなんとかしようと、努力します。で、結果、なんとかなります。便利すぎる日本と比べたら、地球のどこでも不便と思えてしまうのでしょうけど、今の僕にとっては、こちらのほうが快適かもしれません。だって、自分で〝できる〟んですから。

自分たちで暮らしをつくっていると感じられると、生きているのがより楽しくなる。

こんな格言めいたことを、まだまだ口にできるほど実践できてはいませんが、なんとなく、そう気付き始めています。

最近よく、人生に必要なものってなんだろう、って考えることが多くなりました。大事なものって意外と少ない気がします。残ったものを大切にしたいです。

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