ゼロから始める伊賀の米づくり12:秋起こし
初めての収穫が終わった『ゼロから始める実家の米づくり』。
いわゆる農閑期となった秋冬も作業は続きます。
直近の稲刈りで活躍したコンバイン(稲刈り用の重機)の点検を行った後は、『秋起こし』です。
『秋起こし』は、稲刈りの時に残った稲藁をトラクターで鋤き込み、土に還していくと言うものです。
実は稲刈りの際に、コンバインを運転した時、稲を割と地上から離して収穫を行いました。地面が先頃の雨でぬかるんでおり、土ごと収穫して機械が故障してしまうリスクがあったからです。
そうすると、秋口になると稲の切り株が成長し、上の図のように蘖(ひこばえ)が伸びてきます。
初めてじっくりみたときは
『うわぁ、自然の生命力ってすごいなぁ』
と思っていたのですが、これは稲の成長点が地面すれすれにあるため。
この成長点より上の位置で刈り取ってしまうと、株は土の栄養を吸い上げて何度でも再生しようとするようです。
閑話休題。
兎にも角にも、収穫後の作業としてはこの蘖もろとも、トラクターで耕して土の中で栄養に分解してもらい、土を循環させていく必要があります。
と、トラクターを運転していると、近所のSさんがやってきました。
『もうそろそろ、爪の替え時違うか?後、一回二回くらいは行けるかもしれんけど』
Sさんはそう言う。
ところが、自分はこれまでトラクターの爪の交換をしたことは無い。さて、どうしようかと思い、トラクターのメーカーであるクボタの近所の営業所を検索し、電話をかけてみることにしました。
『もしもし、お世話になります。大森と申しますが、トラクターの爪の交換をしたいんです。一度、家の方まできてもらってもよろしいですか?』
「はい、あぁ、あの家の大森さんですか。え〜と、最近は隣の営業所でお世話になっていた大森さんですね。うちの営業所の方でも、だいぶ前になりますがご利用いただいていた名前が残っていますね」
『あぁ!それは祖父の名前ですね。実は祖父は8年ほど前に、それから今年は父も亡くなりまして代変わりしました。そのあたりの話もよく分からなくて。』
「そうでしたか、なるほど。わかりました!それではそちらに向かいますね」
どうやら祖父と父はそれぞれ別に営業所を頼っていたようです。それにしても、まさかこうしてクボタを通して父や祖父の名前を聞くことになるとは思いもしませんでした。
「どうも!お世話になります。それでは始めさせてもらいますね。え〜と…まだもう少しいけそうな気がしますけど、交換しちゃいますか?」
『え?そうですか。まぁ、でもお願いします!』
「わかりました。それでは電源をお借りしたいと思います」
作業が始まると、錆びついたトラクターの爪がクボタカラーのティール(青緑)色の爪に交換されていきます。
近所の農家さんは自分でトラクターの爪交換までするそうですが、こちらは素人。まずはプロのやり方を見て覚えようと言うことで、お願いしました。
「せっかくなので、他も一通り見させてもらいますね〜」
「ん、これはちょっと。」
『どうしました?』
「トラクターのロータリー部分。爪を回転させる動力を回す部分ですね。これが地面に触れて擦られて劣化してるので、これは交換した方が良さそうです」
『(営業かな?)そうなんですね、ちなみに、具体的にどうまずいんでしょう?』
「トラクターって、車の部分とロータリーの部分って、別になるんですよね。それで、ロータリーが壊れてしまったら、それをまた別で全部取り替えて…となると、結構大掛かりになるんですよ。今、見てる部分は動力を伝えて爪を回す軸になる部分なので、尚更…。」
『それは困りますねぇ。わかりました、それでは部品の手配と交換、お願いします』
「今日、これから出られますか?」
『ええ、まず爪の交換だけ済んだら、田んぼに出ようと思います。備品交換は、後日、おそらく私はいないと思いますが、お願いできますか?』
「大丈夫ですよ。それでは部品については、まずは見積もりをお送りさせてもらいますね」
『よろしくお願いします』
さて、気を取り直してトラクターに乗り、耕してみるとこんな感じです。
若干地表に残っているかもしれませんが、一通り稲藁を地面に鋤き込むことができました。
ちなみに、こうして一回耕しに出てみると、新品の爪もこんな具合です。
塗料、剥げるの早いなぁ。
後日、無事に部品交換も済み、秋起こしはこれにて一旦落ち着きました。
次回は、年末年始の作業となりそうです。
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