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ゼロから始める伊賀の米づくり8:稲刈り編:準備を終える

大きな勢力を誇る台風が2つ、立て続けに訪れた今年。例年、8月末から9月初めにかけて行われる実家での稲刈りだが、その直撃の合間を縫って行うという肝を冷やすような実施となってしまった。

「昔、伊勢湾台風に襲われた時、台風に収穫前の稲穂が倒されたことがあった。そんなことが今後ないようにと、収穫の時期を台風がよくやってくる秋ではなく、夏の終わり頃になるよう調整してきたんや」

父の友人であり、仕事上の同僚であったHさんは言う。

それにも関わらず、こうして今年は台風に見舞われるとは…。天気の都合だけは、本当にどうしようもない。

ともあれ、予定上では翌日に控えたその日、Hさんに手伝ってもらいながら、稲刈りの準備を進めていくこととなった。

父が他界し、初めて迎える収穫である。父の大事にしてきた田んぼを守るべく、家族・親戚の期待の後押しもあり、前のめりに始まった今年の米づくりが、ようやく終わろうとしている。

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コンバインの整備〜初の運転

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初めに行ったのは、同じ作業場に入っていた田植え機を移動させ、稲刈りの主役であるコンバインを整備するところからだった。

コンバインは、大きな車のようなものである。燃料を入れ、エンジンを動かし、ギアが動いて刈り込みのための爪を動かす。掃除の不行届でネズミが侵入したり、刈り込みの際に土を掘ってしまわない限り、大きな損傷とはならない。

ならば、その損傷を防ぐための手入れをすれば良い。ここまでは、理屈としてわかる。問題は、それを手で覚え、実施していくことだ。

前日、午後からきてくれる約束になっていたはずが、Hさんは午前中から現れ、自分もその流れで作業を始めることになった。

「ここと、ここ。見てみ。刈る時に回る部分や。ここについている藁や土を落としていくんや」

コンバインの爪を動かすギアや、チェーンに絡んでいるゴミを丁寧に落としていく。祖父が亡くなる数年前に購入したコンバインは、父に継がれ、とうとう自分が手入れをする番になったわけだ。

小一時間、コンバインの整備に向き合い、一通りの操作の仕方をHさんから伝授された。

運転席に乗り込むと、左手には、刈り込みと、刈り込みを行った籾をタンクに運んでいくコンベアのレバーが2本。右手には、刈り込みの爪の上下および方向転換を行うレバーが1本。

いざ、稲刈り作業が始まった時は、右手と左手を交互に動かすことになるが、この時点ではまだ全然ピンとこない。

コンバインの整備を終え、作業場から出して待機させる時には、ゆっくり、ゆ〜っくり前進と方向転換を行うことで、恐々動かした。

運転席に乗り込むと、自分の視界は2メートルほどの高さから見下ろす形となり、また、コンバインの車体は中型トラック並みの大きさである。

普段、軽自動車の運転がメインの自分にとっては、運転の距離感覚が全く掴めず、いつどこにぶつけてしまうかと冷や冷やしながら作業場を脱出させたものだ。

この時点で、コンバインの整備から初の運転と言う新たなインプットがあったわけだが、準備はこれでは終わらない。

続いて、乾燥機等の整備へと向かう。

乾燥機および精米機の整備

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乾燥機や精米機が何か故障することがあるとしたら、籾や米を運ぶコンベアのゴムベルトが緩むか、籾と一緒に刈り込んでしまった小石等が機械に詰まってしまうこと、大きくこの2つに大別される。

Hさんは、ネジを緩め、カバーを外せる各部分を徹底的に取り外しをし、掃除を行うことを指示した。また、ゴムバンドの緩みをチェックするよう指示を続ける。

それらを終えた後は、乾燥機の空気やゴミが排出される排出口から出ているホースを、作業場外に固定。これで、乾燥機の点検も一通り覚えることができた。

こうして言葉にしてみると、とてもシンプルではあるが、高さ2メートル、幅3メートル、奥行き1メートルほどの鉄の塊に、梯子を使ってよじ登ったり、床に寝そべったりしながらネジの緩め・締めを行うため、想像以上に重労働。コンバイン整備からここまでで、すっかり2時間ほどが経ってしまっていた。

「じゃあ、昼にするか。コンビニの飯でもなんでもええけど、また1時間後くらいに来るわ」

「ありがとうございます!」

昼休憩を挟んで、残りの準備を進めていくこととなった。

精米機については、基本的に動作確認。電源と、電源によりモーターが回転しているかの確認が主であり、さくっと終わってしまった。

最後は、軽トラである。

軽トラへの、運搬ネットの積み込み

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コンバインで刈られた米は、一旦コンバインのタンク内に収まり、その後は軽トラによって乾燥機まで運び込まれる。

水分量が多い米を乾燥機に入れ、乾燥後に精米。最後、JAに出荷する分と実家で取り置く分を袋詰めし、終了。と言うのが、稲刈りの流れである。

その、乾燥機へと運ぶための軽トラの準備が、最後であった。

これはネットを荷台に運び込んですぐに終了。ほとんど、これで稲刈りの準備は終了だ。

軽トラの準備を終えたその後、平山さんは田んぼの方へのそのそと入っていく。

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「今、露で、このズボンが濡れてるやろ?これが濡れなくなったら稲刈りを始める頃や。天気の良い日、まぁ、朝から始めるとしても10時すぎくらいやろな。風が吹いて、日が照ってくると露を吹き飛ばしてくれる。そうなったら、刈り時や。」

天気予報によれば、翌日は雨。夕方、夕焼けが見えるほどの天気だったのだが、不安を抱えつつ夜を迎えながら、準備の日を終えることになった。

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