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アンデルセンの雪の女王

小さい頃、とても好きだった物語です。

アナ雪が公開された時、それがアンデルセンの雪の女王とは全く違うストーリーだと知って密かにがっかりしました。アンデルセンの雪の女王も壮大で素敵な童話なのにこれを使わないなんて。

カイとゲルダの雪の女王の物語をご存知ですか?
幾度となくアニメ化されたこともあるのですが、すっかりアナ雪に上書きされてると思うので、簡単に。

 少年カイと少女ゲルダは仲良しの友だち。
 ある日悪魔の鏡の欠片がカイの心臓と目に刺さり、カイの性格が一変。
 カイが雪の女王に連れ去られる。
 ゲルダはカイを探しに旅に出て、旅先で色々あるが、カイの元に辿り着く。
 ゲルダの涙でカイの悪魔の鏡の欠片が溶けて、元のカイに戻り故郷へ帰る。

私が小さい頃の童話の大半はプリンセスの話ばかりで、シンデレラも白雪姫も眠り姫も親指姫も、最終的に王子様が幸せにしてくれる話で正直つまらなかったのです。
王子様が幸せにしてくれなかった人魚姫は悲劇のヒロインで、切なさを感じたという意味では別格ですが、でもこれも王子様ありきの話です。

けれど、雪の女王のストーリーは違います。
少女ゲルダが仲良しの少年カイを助けるなんて、こんなに女の子が活躍する童話があったでしょうか。
こんな格好いいヒロインを他に知らなかった私は、ドキドキしながら何度も絵本を読み返しました。

しかも、ゲルダが助けようとしているカイは、悪魔の鏡の欠片が心臓と目に刺さり性格が激変しているんです。

ゲルダ、すごい。
私なら、人が変わってしまったカイをそこまで信じられるだろうか。

その自信はあまりないんですが、突然乱暴で冷たい心の持ち主になったカイを、それでも信じているゲルダの存在が、幼い私に何かしら衝撃を与えたことは確かです。

アラフィフになった今でも、理解不能な人に遭遇したときに
「ほんとうはいい人なのに、悪魔の鏡の欠片が刺さっているのかも。」
と、必ず思ってしまうのです。
そう思うことがいいか悪いかはわかりませんが、少なくとも私は人を憎みきれません。

悪魔の鏡の欠片は、不健康な食事や環境かもしれないし、不適切な養育かもしれない。或いは誰かが得になる偏った情報や、生きていくための立場だったりするのかもしれません。

悪魔の鏡の欠片を溶かす、ゲルダの涙みたいな万能薬がこの世に 存在しないことは悲しいことです。

ただ、この本で私が気に入っているもうひとつの理由は、世界を守るとか地球を守るとか、そんな大きなことではなく、ひとりの大切な友人を助ける、というシンプルなテーマ設定なのかもしれません。

この本を読む時、世界を救う万能薬はなくても、ひとりの大切な友人を救うための涙は存在するかもしれない、と思えるのです。

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