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「演劇」を「体験」すること

《私だけど私ではない私になること 》

2015年の6月、私はプラハにいて日本に帰る前にパリに2日ほど寄って帰ろうと思った。確か、その年の2月に寄れなかったLV foundationに行きたかったんだ。
その時に14区に前から気になっていた日本人宿があって、そこに泊まることにしたのだけれど、その日出会った人たちのうちにモデルさんがいた。今日パリについて明日からロンドンでブックを見てもらうためにエージェントに会うのだという。
すらりと背が高くて切れ長の瞳のいわゆるアジアンビューティー、外国人が好きな日本人スタイル。
InstagramとFacebookのアカウントを交換して、彼女とはそれ以来オンラインでしか会っていない。ランウェイで歩いたり活躍は目にしていたけれど。

一般公開前からプレスプレビューなどでもなかなか評判になっていた「彼女と」

それに「彼女」の友人役で参加するとの彼女のSNS投稿があって、もともと行くつもりだったけど俄然行く気になって、アクター役で参加できたらなお面白かったのに、エキストラだけど参加してきた。

運命的だわ!

エルメスが送る、映画体験

言ってしまえばわたしなんか完全に業界に片足突っ込んでるような人間だから、テレビの撮影現場も映画も舞台もあるのである。

展示としては非常にシンプルで、観客はガイドツアーに引きつられながら順番に展示を見て行く。いわば、「撮影現場ツアー」だ。展示の流れは一方通行なのは既存の美術展と変わらないし、バックステージツアーといってしまえばそれまで。ただ違うのは、完全にこれは映画の撮影現場を模した展示会場で、作られた撮影現場。そして、観客すら出演者ということ。不思議な二重構造になっているのだ。

こういうカット表とか貼ってある。

こういうの見ちゃうのは舞台美術出身のサガだね!

正面から見るとちゃんと海辺になってるんだよ
(予算潤沢で羨ましくなる…!)
もちろんこの撮影現場の衣装も靴も鞄も自転車に至るまでエルメス製。

シネマ体験であり、エルメスの展示であり、ここまで徹底した世界観は凄すぎる。
そしてこの日のスタッフロールを貰えるのだ、動画で。しかも終了後十数分という本当に撮って出しで。
これを凄いと言わずしてなんと言おう。

観客は普段から観客?

すごく演劇的であり、はたまたアトラクションであり、出演者でもあり。
じゃあこの展示を観に来る人は、普段から演劇や映画を見る人なのかしらと考えてみたら、意外とそうではないのかもしれない、勘だけど。
完全事前予約で、当日の飛び込みは絶対に無理な環境(キャンセルあれば張ってれば予約はできるが)ともなると、もともと、こういう展示の類、ファッションの類に興味のある人、感度が高い人であるのは想像に難くない。
そしてそこで、えいやと「アクター」で予約する人は、もしかしたら本当に普段は何も観ない人なのかもしれない。
そこを飛び越えさせるだけの「何かが」ここにはあったんじゃなかろうか。

チケット料金が高いから、遠いから、時間が合わないから。
芝居を観に行かない「言い訳」はいくらでもある。
でも何より、自分で選ぶのであれば値段とか場所とかは関係なく、自分が、行きたいと思える作品じゃないとお愛想で行くほど人間暇も金もない。
これだけの期待値を与えるだけの展示であり、限定された体験であるってこと。

この限られた人間しか味わえない感覚とか、、自宅のテレビで映画もアニメもましてや演劇もレンタル屋に行くことなく見れてしまうこのご時世に、「実際に足を運ぶ」ことに意味を見出すとは。


それだけだね。

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