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読書感想文が消えても残る格差

文章力養成コーチの松嶋です。

みなさん、読書感想文は好きですか。大嫌い、その話読みたくないという人と、大好き、賞も良く取ったよ!というように、日本人を二分する夏休みのラスボス。

読書感想文は、書く前の指導も、書いた後の添削も、学校では難しい。なぜなら正解がないから。感想や意見には模範解答も間違いもないので、本当に書いた人の数だけ指導の方法がある。もちろんそういうことにとことん付き合うのが、教育と言うものの役割だ。

ところが、学校はもうコンビニ並みにやることが多すぎて、ブラック企業なみに労働の質が悪い。そこで、教員の負担軽減なのか夏休みの宿題に出さない学校も増えてきた。

読書感想文指導はメインに近い仕事。では、私にとって、不利かというとそうではない。大学入試、高校入試、そして中学入試でも、記述式や小論文形式の問題が増加して、むしろ、文章が書ける子と書けない子で得点差が大きくなっている。需要は以前より高まっている状態。

小学校のうちは「宿題なので」と読書感想文指導を申し込んでくる場合もあるけれど、中高生になると「なんか、書けないとほんとヤバい」と駆け込んでくる生徒が増える。親に言われてじゃないところに必死さを感じる。

ところが、今まで書くということをしてこなかった生徒に書く作業はつらい。書けない自分に自己肯定感も下がる。泣きそうになっている子もいる。私もここまで励ますか?というくらい励ましてモチベーションを上げる。文章指導というより、書くことに向かわせることに力を注いでいて、まるで幼稚園児に教育をしているような気分になることもある。
もちろん私はとことん付き合う。それが肩書「文章力養成コーチ」に込められている。

ところが、今まで書いてきた子は、書くこと自体に抵抗力がないので、
この表現はほかの言葉に置き換えられる?
どっちがドラマチックな展開になるかな?
この具体例の持ち出し方、どんな作品からエッセンスをもらった?
というような、本当に高尚な「文章指導」ができる。

大人で文章のうまい人は、先輩や上司が文章に厳しかったという人が多い。
レポートを突き返された、赤ペンでびっしり添削された。そんな感じ。
きっとその人たちは、とことん付き合ってくれたんだろう。
素晴らしい人たちに巡り合えて、そして、鍛えられて良かった!
そう口をそろえて言う。

10年以上たって、卒業生から感謝のメールが届くこともある。
あの時、文章の書き方を習っていてよかった。
毎週毎週作文を書くなんて、よくあんなことを何年も続けたと思う。でもそれが良かった。

そんな時、やっと、私は、今他の子にしている教育の意味をかみしめる。

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