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ゴッホという人物が身近に迫ってくる。原田マハのアート小説「たゆたえとも沈まず」にのめりこんでしまった件


昔から絵画鑑賞は好きなのだが、
最近になって「ゴッホ、いいかも」と思い始めた。

星

初めて絵画に心を奪われたのは、ルノワールだった

初めて絵画に触れて、素敵だなぁと思ったのはルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」。たぶんまだ群馬の田舎住まいだったので、婦人たちが美しいドレスを着て、木漏れ日の下でダンスを楽しむフランスの風景に思いっきり憧れたのだろう。

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その後、ルノワール、モネ、ドガなど「いかにも印象派」にハマって企画展など見に行っていたのだが、30近くなり、だんだん「いかにも印象派」に見飽きてきて、ファンタジックな色遣いで幻想的な世界を表現する「シャガール」にハマった。

結婚後、ずっと玄関に飾っていたのはシャガールのポスター。

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印象派は好きだったのだけど、ゴッホの絵は当時のわたしには強すぎて、あまり響かなかった。もっと線が優しい、ふわっとした絵が好きだった。

シャガールの絵は色遣いが美しく、寓話的で、この結婚式の絵はなんとも幸せになりそうな雰囲気に満ちていたので、大事に玄関に飾っていた。

その後、出産して、絵画に親しむ暇もない育児生活を10年余り過ごしていた。昆虫だの恐竜だの、どっぷり息子の好みの世界につきあっていて、上野に行っても美術館を素通りして、国立科学博物館ばかり行っていた。

大塚美術館であらためてゴッホに触れる

それはそれで楽しい世界を知ることが出来て良かったが「ゆっくり絵を見たいなぁ」と気持ちは知らぬ間にふつふつと湧き上がっていたのだろう。

先日、ふとひとり旅を思い立ち、四国徳島「大塚美術館」を訪れた。もし自分のためだけにどこかに行けるとしたら、と考えて一番に思い浮かんだのが「美術館」だった。

すべて陶板の複製とはいえ、世界中の名画がここに集結していて本当に10年分の美術に対する欲求不満を解消できるくらいすごかった。

そして、自分が年齢を重ねたせいか、あれだけ好きだった印象派のルノワールより、ゴッホの展示に興味を奪われた。

大塚美術館で、全部で7点(うち一点は焼失)ある、ゴッホの「ひまわり」の連絡を、すべて一堂に会して観ることが出来る企画展があり、そこにゴッホの作品が集められていた。

もちろんゴッホの作品は有名なので、いくつかの作品は知っていたし、耳を切っちゃったアブナイ人だというのもうっすら知っていたが、それ以上のことはあまり知らなかった。

だが大塚美術館内でゴッホのドキュメンタリーを流しており、休憩がてら見ていると、生前にはまったく絵が売れず、弟の助けを受けてそれでも絵を描き続けた人物だという。耳を切ったのは一緒に暮らした画家、ゴーギャンと仲違いした際の事件だとも知った。

大塚美術館がけっこう「ゴッホ推し」なのかもしれない。

ゴッホの部屋を再現しちゃったりしていたし。

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上の部屋は、この絵をもとに作ったようだ。

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そんな知識を入れながらゴッホの作品集を見ると、なんだかとてもゴッホと言う人物が身近に感じられた。

自画像を見る限り、気難しそうな人であるが、

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こんな絵を描く人は間違いなく天才だ。

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ゴッホの絵のオリジナル作品は、絵の具の凹凸が激しいため、陶板の複製画にも、上から絵の具を足して凹凸を出していたが、「やっぱり本物の迫力を味わいたい」と思わせる魅力があった。

大塚美術館では、古代から歴史をたどって近代、現代まで時系列に作品を展示しているが、やはり印象派あたりからの絵画史はとても革新的で面白く、特にゴッホの迫力が際立って見えたのだ。

ゴッホを題材にした小説「たゆたえとも沈まず」に出会う

四国の旅行から帰宅後、たまたまNHKで北川景子さんと、美術キュレーターの原田マハさんのゴッホ特集の番組をやっていた。ゴッホのあしあとをたどって、療養していた部屋や、亡くなった場所などをたどり、その絵のモチーフになった場所も訪れていた。

それを見てさらにゴッホに興味を持ち、その番組内で紹介されていた、原田マハさんがゴッホをモチーフに書いた「たゆたえども沈まず」という本を手に取った。

育児に追われていると、ゆっくり小説を読む余裕がなく、さらに老眼が追い打ちをかけてここ数年本当に小説を読まなくなった。

だが、これはぜひ読んでみたい!と思わせる作品だった。

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登場人物はゴッホ、ゴッホの弟テオ、ゴーギャンなど実在の人物で、ゴッホの人生に沿って物語が進むが、内容はフィクション。

「ほんとうはこうだったんじゃないか劇場」という感じで、今は誰も知ることが出来ない、ゴッホと、彼を取り囲む人物に命を吹き込んで、わたしたちの周りにいるのではないかと錯覚をするほど生き生きと彼らを描く。

美術キュレーターということもあり、原田マハさんの考察がとんでもなく深く、ゴッホはきっとこのとき、こう感じたのではないか、ゴッホを支え続けたテオは、こんな人物だったのではないか、と絵や史実を深く掘り下げてこの小説を完成させたことが伝わってくる。

小説「たゆたえとも沈まず」に登場する絵画も当然実在する作品で、「アイリス」や「糸杉」などの作品は、きっとこんな気持ちで描いたのかなと想像すると、よりゴッホの作品が身近に感じられる。

サン=レミ療養院の入り口に咲くアイリス

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ゴッホが最後に暮らした、オーヴェルの教会

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すっかりゴッホと知り合いになったような気持ちで、もっともっと彼のことを知りたくなり、読み始めた新刊「リボルバー」は、ゴッホが命を絶ったという銃、リボルバーの謎をめぐるミステリー。

ゴッホとゴーギャンとの関係を深く掘り下げて描いていて、こちらも一気読みしてしまった。原田マハさんの中では、すでにゴッホ像がしっかりと出来上がっているようだ。


ゴッホの足跡をたどるエッセイ、
「ゴッホのあしあと」もさらりと読めて面白かった。

ゴッホが暮らして素晴らしい作品を残した地を巡ってみたいと思った。絵に描かれたモチーフはまだその地にある。それがゴッホにどう見えたのか知りたい。ゴッホが住んでいた狭いアトリエを覗いてみたい。ゴッホが幾度となく描いた糸杉を見てみたい。ゴッホが下宿していた1階のレストランで食事もしてみたい。コロナ禍が明けたら、ぜひゴッホ巡礼に行ってみたいと思っている。

海外には行ってみたい場所がたくさんあるのに、また行きたい場所が増えてしまった。でもこうやって、家での時間を過ごして未来の計画を思い描くのも悪くない。

その他、原田マハさんのアート小説

原田マハさんのアート系小説は、

アンリ・ルソーを題材にした「楽園のカンヴァス」

ピカソの「暗幕のゲルニカ」

俵屋宗達の「風神雷神」これは著者をあまり知らないときに、あまりにカッコよい表紙でジャケ買いしたのだが、まだ読んでいない。

次は、自分があまり興味のない画家アンリ・ルソーをテーマにした「楽園のカンヴァス」を読む予定だが、原田マハさんなら、わたしのようなルソーのことを全く知らない人にも、画家の魅力をたっぷりと伝えてくれそうなので、あえて知らない画家をテーマにした小説を読んでみようと思った。

まだまだ先の見えないコロナ禍、読書など、外出しないからこそ取れる時間を使ったり、いまこの瞬間だから出来ること、楽しめることをしていこうと思う。

最後までお読みくださりありがとうございました!




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