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ゴッホは本当に自殺したのか?一丁の拳銃をめぐるミステリー「リボルバー」が面白すぎて一気読みした件

「ひまわり」など名作を残した、かの有名な画家ゴッホは、拳銃自殺したと言われている。


が、本当に「自殺」だったのか?

ゴッホについて何も知らなかった私は、

「ゴッホって、発狂して、耳切って、自殺したんだよね。」

で完結していたのだが、

もし、ゴッホの死因が自殺じゃなかったら?

というのがテーマの
原田マハさんによるアートミステリー小説が
「リボルバー」だ。

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実際、ゴッホはわき腹に銃弾を受けたが即死ではなく、そのまま自宅に帰り、そこで数日生死の境をさまよった後亡くなったそうだ。

いちおう自殺だと言われているが、もしそうだとすれば、こめかみに一発ぶちこめば即死だろうし、拳銃自殺ならそういう方法を選びそうだなと思う。

そのあたりの事実関係がまだ謎に包まれている部分をフィクションにして物語に仕立てるあたり、現実とフィクションが交錯する不思議な世界に引き込まれてぐいぐい本を読み進めてしまう。

原田マハさんの小説で、ゴッホに焦点を当てた「たゆたえとも沈まず」も、ゴッホの思いや彼を支えた弟、テオの想い、そしてゴッホの孤独などが伝わってくる作品だったが、

今回の「リボルバー」は、同時期に生きた画家で、一時期はゴッホとともに暮らした画家、ポール・ゴーギャンにも焦点が当たっていて、同時代の話ながら、全く別の時間軸に連れて行ってくれる。

ポール・ゴーギャンで一番有名な作品はこれだろう。
「私たちはどこから来たのか、我々は何者か 我々はどこへ行くのか」

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徳島の大塚美術館には、実寸大で陶板で複製された作品が飾られている。
かなり大きい作品だ。

大塚美術館についてはこちら。

ゴーギャンと言えば、さきほど紹介したようなタヒチでの生活と、そこでの人々を描いた絵が有名だが、もともと株式売買の仕事をしていたらしい。画家を志し、フランスで絵画の修行していた彼は、ゴッホと知り合い、2か月だけ生活を共にする。その間にいろいろと仲違いがあったようで、ゴーギャンがゴッホの元を去ろうとした矢先に、ゴッホの耳切り事件があったりと、ゴッホとゴーギャンの間には短いけれど濃い関係があったようだ。

「リボルバー」の表紙にも使われているゴッホの「ひまわり」は、ゴーギャンを迎える部屋に飾るために描いたといわれている。

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ゴッホがゴーギャンを歓迎するために描いた絵、と思ってこの作品を見ると、ゴーギャンを思い、この絵を飾った部屋にいるゴーギャンの姿まで思い浮かべてこの絵を描いたのだろうと思うと、また見え方が違ってくるから不思議だ。

残念なことに、このゴッホとゴーギャンの同居生活は、たった2か月で終わったようだが、きっと二人の人生に大きな影響を与え合った期間なのだろう。

その後ゴッホは精神を病み療養院に入り、その後オーヴェルという村で人生を終える。一方ゴーギャンは、ゴッホのもとを去ったのちにパリに行き、その後タヒチに向かう。

「リボルバー」では、あるオークションサイトで働く日本人女性、冴のもとに持ち込まれる、一丁の拳銃(リボルバー)から話が始まる。

ゴッホが自殺したリボルバー、という触れ込みで持ち込まれたこの拳銃は、果たして本物なのか・・・?

そんなミステリアスな冒頭から読み進めていくと、そこにはなんとも深い愛に満ちたストーリーが展開される。

ネタバレになるのであまり書けないのだが、もしこれが本当だったなら・・・と思いながら没頭して読み進め、最後になんともじんわりと暖かい感情になる。

原田マハさんのアートミステリーは、大塚美術館を一緒に訪れた友人にも薦められていたので、読もう読もうと思いながらなかなかまとまった時間が取れなかったが、北海道の帰省時に、家事をせずにゆっくりする時間が出来たので、そこで一気に読んだ。

やはり小説は、のめりこんで一気に読むのが気持ちいい。

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ちなみに、帯を気にせず購入したのだが、よく見たら安田章大主演で舞台化もされるようだ。

でも、この小説の完成度が高すぎて、できれば映像化してほしくないなぁ、と思ってしまう。すでに自分の頭の中に、ゴッホやゴーギャンの肖像や絵画がインプットされていて、この小説を読みながら、ゴッホやゴーギャンがわたしの脳内で実際に動いているので、なんとなく別の人が演じるよりも、わたしの中の膨らんだ想像でとどめておきたい気がする。

原田マハさん自身が美術のキュレーターでアートに造詣が深く、そのぶん画家の心理描写がとにかく細かく。実在の人物や絵画が登場するので、読んでいると、うっかり史実かと思ってしまうくらいリアルなのだ。

こんなコロナ禍で外出の楽しみも多くないし、秋の夜長、何か小説を読みたいなと思っている人にはぜひおすすめの作品だ。

次は、予備知識がゼロの画家、アンリ・ルソーについて書かれた「楽園のカンヴァス」を読む予定。

コロナワクチン2回目が来週に迫っていて、その日と翌日は予定を入れていなくて、ご飯作りもすべて投げ打つつもりなので、そのタイミングに元気があれば一気読みする予定だ。

副作用があまりなく終わりますように。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました!

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