自分が幸せを感じるものに投資することは「自分を大事にすること」につながると実感した件
やっと、私好みのフラメンコシューズを注文した。
スペインの職人が作る、完全オーダーメイドの靴だ。
オーダーで靴を作るなんて、フラメンコをやっていなければ経験できない贅沢であろう。
自分の足にフィットし、自分の好みの革を悩みながら選んで注文し、待つこと3ヶ月。仕上がってきたときの嬉しさといったらない。
「くつ難民」のわたしに救いの神が舞い降りた
フラメンコはスペインの踊りだ。
需要が少ないため、日本で作られているフラメンコシューズは存在しない(と思う)。必然的にスペイン製の靴を買うことになるのだが、スペイン人の足に比べ、日本人の足は甲高幅広だ。
日本人の中でも、わたしの足はとんでもなく甲高幅広で、日本の靴でも合うものがなかなか見つからず「くつ難民」。
以前、アシックスのお店で足を自動計測してもらったのだが、横幅が最大の「4E」を越えて「F」という結果が出てしまった。せっかく測ったけれど、その店に合う靴が置いてないという悲劇まで起きた。
なので当然フラメンコシューズでも難民生活が長かった。以前フラメンコを始めたときは、なるべく幅広のシューズを買い、限界まで横幅を伸ばしてもらい無理やり履いていた。
そんな状態だったので、いまの教室の先生に、オーダーメイドで注文できるフラメンコシューズの存在を教えてもらったときは本当にうれしかった。
スペインに工場がある「セノビージャ」だが、日本人の足型を独自開発しており、日本人にもフィットする靴のオーダーが可能になったのだ。
サイズがオーダーできるのはもちろん嬉しいが、皮の色、ヒールの形、デザインなども選べるのが楽しい。
恐る恐る初めてのオーダー
初めて購入したのは、もう6年くらい前。恐る恐るお店に足を踏み入れた。対応してくれたスタッフの方がとても優しくて、オドオドしているわたしにの相談も親身に聞いてくれた。
豊富すぎる革の種類に恐れおののきながら、とりあえず発表会の衣装が何であっても使える、無難な黒で、足が大きいので馴染みのよいスエード素材を・・・とオーダーした。
手作りの、わたしだけのフラメンコシューズ。ウキウキして足を入れたのを覚えている。
フラメンコシューズの裏には、音が出るように釘が打ってあるのだが、その釘の打ち方が「よっ職人!」と言いたくなるほど緻密で繊細。感動した。
左が以前履いていたシューズ。右がセノビージャ。釘の密度が全然違う。
セノビージャのシューズをはいたら、足が安定して踊りやすい。この黒のシューズが一張羅で、長年愛用していた。
6年ぶりの2足目オーダー
教室では次々とセノビージャの靴を履く人が増えた。先生も足に左右差がありセノビージャの靴しか履けないといって愛用している。
そして最初はみんな黒を履いていたのだが、だんだん、セノビージャで靴をオーダーした人たちは、黒ベースにふちどりの色だけ深い赤やベージュを入れたり遊び心を入れるようになってきた。
先生自身もふちどりや靴ひもの色を変えて楽しんでおり、徐々に教室内のブームになった。わたしも紐の色をボルドーに変えて履いていた。
そのうち今度は、一部分だけ特殊革という、少し変わった革を入れるデザインを買う人が出てきた。誰かが新しいシューズを買うたびに、みんなで集まって靴をしげしげと眺める。
わたしの靴も、内側の革はが剥げてきたり、ふちどりの革がちぎれてきたりとかなりくたびれてきた。そろそろ素敵なシューズが欲しいと思い、機会を狙っているうちにコロナ禍がきて、息子の受験が終わったら買おうと思っていたのに機会を逃したまま2年経ってしまった。
そして今年、やっと2足目のフラメンコシューズをオーダーしにいった。教室の仲間と一緒に、ああでもない、こうでもないと悩みながら特殊革を使ったお気に入りをオーダーした。
出来上がりもめちゃいい感じで、とても気に入って履いている。
ただ、ひとつだけ心残りがあった。
とにかく自分好みのシューズを作ってみたい
今までは、フラメンコシューズを一足しか持っていなかった。
今回のオーダーも、好きな色が欲しいと思いつつ、もう履きつぶしている初代に替わる一足を購入するので、
どんな衣装でも発表会で使えるよう、とにかく定番な黒ベースにして、そこに少しだけ遊びをプラス、という控えめな選択肢になった。
群舞メインなので、ひとりだけ違う色の靴というのもマズイ場合があるので、やはり「黒、もしくはそれに準ずる色」と校則みたいだがそんな感じに落ち着いてしまう。
けれどセノビージャの店内には、見ているだけで楽しくなるようなポップな色の靴もたくさんある。プロの方々は出演する舞台の衣装に合わせてオーダーするらしいが、そこまでの金銭的余裕もないし、機会もない練習生。
けれど常に一張羅だと、ずっと黒を買い続けることになる。
履きつぶすのも良くないし、わたしの誕生日ということで、もう一足オーダーすることにした。
オーダーするのは楽しいが、すべて自分で選ぶというエネルギーも使う。リフォーム壁紙選びでも悩んだが、色の組み合わせなど、意外と難しいのだ。おっくうだけど、早く行かないと、また今のシューズを履きつぶして黒を買う羽目になってしまう。善は急げということで、セノビージャへ。
今度は自由に好きな靴を買おうと思いつつ、目移りして何が良いのか分からなくなる。また、革もその時によって在庫の有無だったり、欲しい色が見つからなかったりする。
好きな色を買おうと思っても、やはり「できれば発表会とかライブに使いたい」と欲を出すので、あまり奇抜な色は飽きるしなぁ、と悩む。
スタッフさんのアドバイスを頼りに、なんとか選んだ。
グレーとピンクに、ボルドーのふちどり。
仕上がりは約3か月後。スタッフさんがスペインにオーダーしてくれる。
※追記
このまる3か月後、スペインからオーダーした靴が届いた。想像通りの可愛さで、めちゃくちゃ気に入った。
スペインの職人手作りなので、同じサイズでオーダーしても、微妙に違ったり、思ったのと違う色の紐がついてきたりするらしい。
スペイン人とのやり取りは大変そうだが、そのあたりもスタッフさんが手慣れていて、保険をかけて気に入った色の紐を取り置いてくれたりとこまめに対応してくれる。
フラメンコシューズは靴ではなく「楽器」
フラメンコは、つま先とヒールに釘が打ち込まれた靴を履いて踊る。その足を打つことでリズムを出す、ちょっとタップダンス的要素がある。だからフラメンコシューズは、靴だが、「楽器」とも言えるの大事な要素だ。
まぁ、この「靴でリズムを正確に刻む」ことがフラメンコの難しさのひとつでもあるのだが、うまくできたときはひときわ嬉しい。
セノビージャの靴で、かかとのヒールに使われる木は、密度が高く音が良い「パロサント」という木を使っているそうだ。そもそもきれいな音を出すには、重心のかけ方、打ち方も大事なので、木が良くたって使う人が上手でないといい音は出ないのだが、そこは頑張るしかない。
新しい靴を履くと、レッスンもテンションが上がるし、この靴が喜ぶように、もっと頑張ろうと思える。道具って大事だ。
自分が幸せになれるものにお金を使いたい
セノビージャのフラメンコシューズは、そこそこお値段がする。オーダーでスペインに注文するので、選ぶ革にもよるが、だいたい4万~だ。靴にしてはけっこう贅沢なお値段だ。
けれど、自分が本当に幸せな気持ちになれるものにお金を使うことは、とても大事なことだと思う。
豪華で見栄は張れるけどそこまで欲しくもないものとか、ただ安いから買っちゃったとかではなく、自分がそれを持つと、本当に心から気分が良くなるもの、テンションが上がるものにはきちんとお金を使いたいなと思う。
それは「自分を大事にすること」だ。
最近は、買い物に慎重になるようになった。なんとなく衝動的に買うより、それを身につけたり所有することでどんな気分になるか?と考えて買うようにしている。
自分のことって、意外とよく知らないものだ。だから、自分の声に耳を傾けて、本当に欲しいものを知ることは大事。いろんな欲に惑わされずに、自分の欲しいものだけに邁進できるというのは、スッキリして気持ちよい。
今日もお読みくださりありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?