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大切な人を想う気持ちと、自分の好きを貫く勇気。「リメンバー・ミー」の美しい映像と切ないメロディに感涙


また泣いてしまった。
切なくて、暖かくて、幸せな映画だ。


「リメンバー・ミー」
メキシコの「死者の日」をスポットにあてた
ディズニー/ピクサーの美しいアニメーション作品。

息子と初めて劇場で観て号泣して以来
DVDを購入して通算5回目くらいの鑑賞。

大好きな割に観る回数が少ないのは、
鑑賞したら、泣きすぎてしまい、
その後自分が使い物にならないのが分かっているので
相当、時間に余裕がないと観られないからである。

あとは寝るだけ。の状態でないと観られない。

割とネタバレ禁止な要素があるストーリー展開なのだが
物語がどうなるか分かっていても、それでも号泣してしまう。

主題歌の「リメンバー・ミー」の切ないメロディを聞くと
「あのシーン」が瞬時に脳裏によみがえり、涙ぐんでしまう。


「あのシーン」は、観た人だけが知っているので
ここでは言わずにおこう。


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(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

メキシコの「死者の日」と日本の「お盆」がソックリな件


本作はメキシコの慣習「死者の日」を舞台にした作品なのだが、メキシコに「死者の日」なんていうものが存在するとは知らず、この映画で初めて知ったのだが、日本の「お盆」に非常に似ている。

先祖を迎えるために祭壇に写真を飾り、先祖が帰ってこられるように、マリーゴールドの花で道を作る。

日本のよりもテンションが高く、お祭りムードなのは南米メキシコならではの陽気さだろう。

映画でしか観ていないので、実際の「死者の日」がどこまで本当か分からないが、ご先祖を迎えるために花火やお祭りなどさまざまなイベントを催すのも、なんとなく日本ぽい。

そして、主人公の少年ミゲルがひょんなことから「死者の国」に行ってしまうのだが、「死者の日」に死者の国からこの世に帰るルールとして

「祭壇に自分の写真が飾られていること」
が絶対条件となっている。

祭壇に写真が飾られている者=この世で誰かの記憶に残っていること、だけが、家族の元に返ってくることができる、というルールのもとで、死者の国からこの世へ「出国審査」が行われる。

なので、祭壇に写真が飾られていないと、出国NGとなり、死者の国へ帰されてしまう。

「モンスターズ・インク」「トイ・ストーリー」など、人間以外の世界を、いかにも人間の世界っぽく描くのが得意なピクサーアニメらしく、死者の国の出国審査などは笑えてしまうほど「成田空港の出国審査場」みたいだ。


「好き」は誰にも止められない

主人公は、片えくぼが可愛いハスキーボイスの少年、ミゲル。
彼の家は代々続く、靴職人の家だ。

ミゲルのひいひいおばあちゃん、イメルダの夫は、音楽家だったのだが、
家庭を顧みない夫に失望し、女手一つで娘を育てるべく、靴づくりを志、がむしゃらに働いて生計を立てた。(靴職人の家に「イメルダ」という名前が面白い)

その教訓として、自分の家族には「音楽禁止」という家訓をつけた。

ただ、残念なことに主人公の少年ミゲルは、とにかく音楽が好きだった。陽気な音楽であふれるメキシコの街で、音楽を禁じられているミゲルは、往年のスター、デラクルスに憧れ、隠れ家で自作のギターを作って日々練習に励んでいた。

靴磨きのアルバイトをしながら、マリアッチにギターを弾かせてほしいとせがむ毎日。広場で開催される音楽コンテストに参加しようと企てたり、音楽に触れようと家を出ては、見つかっては家族に連れ戻される。

そんな日々の中である事件が起こり、ミゲルは死者の国に行ってしまう。

そして死者の国で、先祖に会うことが出来るのだが、先祖にさえも音楽を否定されてしまう。最悪すぎる。

しかも死者の国から自分の世界に戻るための条件も「今後音楽は絶対禁止」という条件付きだ。逆に死にたくなる。

わたし自身、好きなことを我慢することがとても苦痛なので、
好きで好きでたまらないものを「家族の掟だから」という理由で禁止されることの辛さに痛いほど共感してしまう。


家族ってなんだろう?

もちろん家族という先祖があってこそ、わたしが生まれたことは間違いない。だが、その家系に生まれたからといって趣味嗜好が似ているわけではなく、まったくの別人格が生まれてくるわけだ。

伝統はもちろん大事だし、「医者一族」だの「慶応一族」だの、家系で縛りを設けている家庭があるのも知っている。だがその中で、その「縛り」に苦しんでいる人もいるかもしれない。

我が家は残念ながらそういった伝統も継承もなく、それどころか父は農家が窮屈で家を飛び出したフーテンなので、その父から生まれ、放置プレイで育った私は「縛られる」ことが非常に窮屈に感じるので、なおさらミゲルに肩入れしてしまうのかもしれない。

好きなことがあって、それをやりたい、という気持ちがあるのに、なぜ押さえつけられなければならないのか?

子どもに限らず、こんな葛藤を抱えている人は、世の中にたくさんいる気がする。

だからこそこの映画によりいっそう、感情移入してしまうのかもしれない。

まっすぐなミゲルに導かれて物語は進む。写真を飾られていないことが原因で、死者の日だというのに、この世への出国NGを食らったヘクターと出会い、先祖との葛藤を抱えながらも、ミゲルはやはりまっすぐに音楽への情熱を燃やす。


映像の美しさとリアリティ


とにかく映像の美しさにもやられてしまう。ミゲルの住む街の陽気な田舎町の雰囲気もさることながら、死者の国の描写がひときわ素晴らしい。マリーゴールドで彩られた、あの世とこの世をつなぐ橋。死者の国の色とりどりの幻想的な世界観。メキシコの芸術家、フリーダ・カーロの登場などユーモアあふれる演出で、夢の世界に一瞬でトリップさせられてしまう。

映像のすばらしさはピクサーアニメーションの得意技だが、今回は、リアリティに加えて、幻想的な美しさが加わり、本当に死者の国ってこんなところなら、ぜひ行ってみたいと思ってしまうような素敵な場所になっている。

その対比描写として、出国拒否されてしまった行き場のない者たちの住処は、バラックのような場所だ。死者の国にも天国と地獄がある。

さらに報われないことに、一度死んだ者が、現世に住む誰からも思い出してもらえなくなった瞬間には、この死者の世界からも消えてしまう「二度目の死」、つまり永遠の死が待っている。

「あの世で待ってるよ」なんて言ってたはずが、
あの世でも会えないという悲惨なことになってしまうのだ。

家族を、先祖を大事にするというのは、こういう信仰があるからなのかもしれないし、もしくはピクサーの創作かもしれないが、この設定は子どもにもわかりやすく、そして大人の私たちにもグッとくる設定だ。

そんな悲しい「二度目の死」の存在を知り、死者の国でミゲルは奮闘することになる。

ここから先は観てのお楽しみ、だ。

主人公ミゲルのまっすぐな魅力

わざわざ特筆したいほど伝えたいのが、主人公、ミゲルのまっすぐな魅力だ。好きなことを好きと言って何が悪いんだ!僕はこうしたい!と少年らしいまっすぐさをもってこの物語を引っ張り、周りを動かしていくひたむきさ。

言いたいことも言えないこんな世の中じゃ、、、と
30年くらい前に反町隆史が「ポイズン」なんて歌っていたが
いまどきの子はさらに言いたいことが言えなくなったり
親がすすめた将来のために今を忙しく過ごしていたり
昔よりももっと「こうしたい」が言いにくい世の中になっている気がする。

日本はもともとムラ社会だし、島国なので同調圧力が強いと思うが、メキシコのような他の国でも「家族」や「伝統」などのしばりで窮屈な思いをしている人がいるのかもしれない。

そんな世の中で、ミゲルのまっすぐな情熱は、キラキラ輝いて見える。

そして、そのミゲルの表情がいちいちたまらない。
少年らしいあどけなさと、切なさと、優しさが絶妙なさじ加減で表現されている。もはやアニメが人間を超えたのではないかというほどのリアリティをもって感情移入してしまう。

もちろんミゲル以外の登場人物しかり。死者の国では全員が「ガイコツ」なのに、全員が個性豊かな表情で死者の国を彩る。


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(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

切なく胸にしみる音楽と、声優のすばらしさ


「リメンバー・ミー」が最もすごいのは、やはり音楽の力だ。

音楽は人の奥底にある体験を呼び覚ます。

わたし自身がフラメンコにハマっており、アコースティックギターに馴染みがあったり、スペイン語を習ったりでラテン文化にも興味があるからかもしれないが、劇中に流れる音楽のすばらしさといったら、そりゃもうすごい。

明るく、そして切ないギターのメロディと、
ミゲルの子どもながら、少しハスキーな声で奏でる歌。

すごいのは、ミゲル役の声優は、英語でも日本語吹き替えでもほとんど印象が変わらないほど似ている。どちらの言語で観ても感動できるので、お好きなほうで観てほしい。

わたしはどちらかというと洋画は原語で観たいほうだが、言葉に意識をそらさずに感情移入したいときは吹き替え版で見る。

この映画で思うことは、音楽は心、そして脳の深く奥に刻み込まれる「体験」である、ということだ。

わたし自身、小学生の頃に聞きまくった、聖子ちゃん、明菜ちゃんなどアイドルソングをテレビで見ると、その瞬間に自分の小さいころにタイムスリップしてしまう。

小さいころに馴染んだ曲は、数十年ぶりに聞いても歌詞が口をついて出てきて、ソラで歌える。そしてその時の感情まで一緒にぶり返す。

小さいころに限らず、青春時代にカラオケで歌いまくった歌を聞けば、その当時の楽しかった記憶を思い出すし、誰かと恋をしていた頃に聞いていた曲を聞けば、その当時の恋人とのことを思い出す。

「考える」のでなく「よみがえる」のだ。

本作ではこういった音楽のチカラについても描かれている。

そして何よりも主題歌の「リメンバー・ミー」が素晴らしい。

吹き替え版でも素晴らしい、というか、吹き替え版がこれまた素晴らしい。
「アナと雪の女王」でも、日本語吹き替えの秀逸さが取り上げられたが、子役の声優「石橋陽彩(ひいろ)」(男の子)の声で歌う「リメンバー・ミー」の日本語版も本当に素晴らしい。

いまこの瞬間に主題歌を流されたら一瞬で泣く自信があるくらい
心に刻み込まれる名曲だ。

この主題歌が作品のキーにもなっているので、
この歌を聞いてグッと来た人は絶対に観るべき。


アニメーション、というだけで敬遠する方もいるので、そういうバイアスも取っ払ってぜひできるだけ多くの人に見てもらいたく、ネタバレを避けてその魅力を書いたのだが、少しはお伝えできただろうか。

観た後に、自分の大切な人に想いを馳せる、そんな素敵な映画だ。

かなりもどかしく書いたので、ぜひ本作を観た人と、ネタバレ全開で好きなシーンを語り合いたいものだ。

そしてわたしはまた、掲載用の動画を探しているうちに「リメンバー・ミー」を聞いてしまい、また胸がこみあげてウルウルしている。

今日もお読みくださりありがとうございました!


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