見出し画像

【ショートショート】語れ!全国BMG大集合!


 「皆さん、こんにちは!待ちに待った第1回全国BMG大集合のお時間です!全国各地域に聞き込み調査を行いまして選りすぐりのビッグマウスじーさん略してBMGの方々にこの会場にお越しいただきました。
会場にはこの様に土管が積み上げてありましてこの上にBMGの方々に座っていただき、下にいる3人の子供達にお話しをしていただくと言う形になります。
司会はこの私、マッチョ肝川がやらせていただきます。
本日の審査並びに解説をしていただくケーチー山餅さんです。ケーチーさんはスーパーマーケットの評論家でもありましたね」

「はい、大体この手の隙間産業的な物には専門家の役割で呼ばれています。ワイドショーのコメンテーターでは大抵文化人枠で呼ばれますね」

「よろしくお願いします。そして本日は審査員の他に監視員の皆さんにも来ていただいてます。あちらから青少年健全化教育委員会の方々、子供達の明日を見守る会の方々、そして3人の子供達の保護者の方々です。皆さんには厳しい内容の場合において意見をいただきディレクターの方からBMGパフォーマンスの中止の指示を出させていただきます。尚、BMGの方々は元々性的、人種的な発言の配慮に乏しいものと見なしていますので、監視員の方々のお声が無い場合でもこちらの方でパフォーマンスの中止の指示、あるいは問題発言の音声を伏せて放送いたします事をご了承下さい」

「楽しみですね」

「さぁ、1人目です。この方は近所ではタケルじいさんと呼ばれていまして、他の方々も同様ですが『あのじいさんとは関わるな』と近隣の住民から言われています」

「あぁ、話し始めましたね。知り合いの芸能人自慢ですね。大体は旅館で1度会った、職場に1度来た、バーで1度奢ってもらったといった所から話が広がってああなります。酷い時は年齢が一緒なだけで『あいつの同級生』と学校が一緒だったかの様に言い切ります。残念ながらありふれたBMGですね」

「残念ですがタケルじいさん、高評価は得られませんでした。子供達は話に出てくる芸能人の名前を知らなくてキョトンとしてますね。続いてはヨシマサじいさんです」

「あぁ、これは『誰々に何々を教えたのは俺』系の話ですね。この場合はさっきと違って元の話自体が無い、全くの嘘の場合が多いです。派生として『何々を救った』『何々を変えた』等の話もあります。このBMGも高評価は出来ませんね」

「ヨシマサじいさん、残念です。子供達も『じゃあポルトガル語喋ってみてよ』と詰め寄っています。サッカーの神様にサッカー教えたは作り過ぎでしたね。続いては克也じいさんです」

「あぁ、これはダメじゃないですか?若い頃のモテ自慢ですが…」

「はい、早速監視員が動き、ディレクターからストップが入りました。」

「スタッフに引っ張られても身振り手振りでまだ話続けていますね。実際はモテ自慢ではなくてお金を払って入ったお店の話ですから」

「もう子供達は何の事かさっぱり分からないと言った表情です。次はモテ自慢ではなくのど自慢の大俵のじっさまです。モミ手で手拍子を始めましたね。監視員の方々も手拍子を合わせてますね。」

「歌い始めましたね。あっ」

「気づいた監視員が慌てて直接止めに入りました。歌を遮られて大俵のじっさまは不満そうですね。放送では歌にBMGならぬBGMが被せられると思います。子供達も何が何だか分かってませんね」

「今どき猥歌なんて覚えても学校内では流行らないでしょうね」

「続いては石田先生と言う方です。BMGにしては珍しい呼び名ですが他の方々同様、近隣住民からは関わるなと言われているそうです。BMGの中で唯一スーツ姿ですね」

「あぁ、絶対あの年齢じゃ分からない問題を子供達に出してますね。答えられないと『そんなことも知らないのか?』と言うタイプでしょう。ほら、言った。あっ、それはダメ!」

「ディレクターからストップがかかりスタッフに連れられ強制退場です。監視員が子供達の所に集まりケガは無いか確認してます」

「小突くのはダメですね。最低です。子供達は小突かれてもヘラヘラしてますけど、あの手のBMGはそれを見て余計に触発される場合がありますから危険です」

「続いては玉柳さんと言う方です」

「あぁ、戦争体験の話ですね。うーん。でもちょっと」

「何かおかしいですか?」

「その時期に無い型の戦闘機や銃の話をしてますね。これ、作り話ですね。資料見ても年齢的に戦争には行ってないでしょう。本人涙ぐみながら喋ってますが、この資料にある『若い時は小説家を目指していた』が気になります」

「ずいぶんケーチーさんも博識ですね。しかし監視員の方々もハンカチで目頭を押さえながら聞き入っていますのでしばらくは我々も聞き入ってみますか」

「本人も顔をクシャクシャにして泣きながら話してますね。良い話なんですがねぇ、嘘なんですよねぇ。資料の『なぜか語り部の申し出は断られる』とありますが方々ブラックリスト入りを果たしているのでしょう。中々のBMGです。しかしこういった話に嘘を残してはいけないので評価はしかねますが」

「子供達もしっかり目を見つめてうなずきながら聞き入ってましたね。話が終わって皆さん拍手をしています。嘘なんですけどね。続いては最後になります。四丁目のケンちゃんと言う方です」

「あぁ、ダジャレ好きだ。タイミングが悪すぎる。誰一人笑わない」

「そうですね。さっきの方の大好きだった弟さんの死の話を聞いた後ですから、我々は資料でさっきの方、『玉柳家の末っ子として生まれる』と書いてあるのを確認してるんですがね」

「もうこの時点で前のBMGの話をしているって事は私達も完全に今目の前で起こってる悲劇から目を背けてますね。間の悪さやうざったさも含めてBMGとしては今日1番でしょう」

「高評価いただきました。本日、1番評価の高かったのは四丁目のケンちゃんさんです!あぁ、先ほどの石田先生は不満なのかスタッフに暴力を…大俵のじっさまはフラフラでもう酒が入ってますね。最後にケーチーさん一言お願いします」

「皆さん、絶対うちの近所には引っ越してこないでください!」

「それでは皆さん、次にお会いできるまでごきげんよう!さようなら!」





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?