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アメリカとメキシコの国境にかけるシーソーがデザインアワードを受賞

アメリカとメキシコの国境に設置されている1000キロを超える不法移民対策のフェンス。2019年7月、カリフォルニアを拠点とする建築家のロナルド・ラエル氏とバージニア・サン・フラテッロ氏によって制作されたプロジェクト『Teeter Totter Wall(シーソーの壁)』が、ロンドンのデザインミュージアム(the Design Museum)による、2020年のデザインアワード「Beazley Design of the Year」を受賞しました。

Teeter Totter Wall(シーソーの壁)とは

これは、2009年から10年以上にわたって両氏が取り組んできた、国境の壁に焦点を当てたリサーチと、シーソーのアイデアが実現したもの。設置されたシーソーは、壁を挟んで片方がアメリカ、もう片方はメキシコの国境に入っていて、フェンスで隔てられた両国の人々が一緒に遊べるようになっています。

当時、美術手帖で取り上げられていた記事はこちら。


このプロジェクトは国境を“site of severance”とし、「一方の側で行われる行動が、もう一方の側に直接的な影響を与える」として、両国間の貿易と労働関係の象徴としています。また、シーソーによってよろめく壁は、2つの国の間の微妙なバランスを示していることを、自身のウェブサイトで述べています。
ラエル氏は自身のinstagramの投稿でも、「国境の壁は、喜び、興奮、一体感をもたらし、アメリカとメキシコの関係とって文字通りの“支点”となった。子どもと大人たちは、一方の側で行われる行動が、もう一方の側に直接的な影響を与えるということを認識し、両側にとって意味あるかたちで繋がった」とコメントしています。

人々を引き離すように設計された壁を逆手にとって、アメリカとメキシコの両側にいる人々を結びつけるユニークなインスタレーション。分裂に向かわせる力に立ち向かい、人と人との繋がりを新たなかたちで奨励するアイディアは素晴らしいと思いました。
3本のシーソーがフェンスに設置されたのは、わずかな時間だったそうですが、その時間のなかで得た経験は、人々の心に勇気や希望を感じさせる豊かなものだったと想像します。

2019年に The New Yorkerに掲載されている15分間ほどの短いドキュメンタリー映像のなかで、通勤者や都市計画者、子どもたちが都市を隔てる壁とどのように暮らしているか紹介されています。

アメリカとメキシコの国境

2016年の大統領選で、トランプ大統領が不法移民の取り締まり強化を掲げて当選し、メキシコとの国境に「トランプの壁」の建設を主張していた当時。鮮やかなピンク色のシーソーで楽しそうに遊ぶ子どもたちの様子は強いインパクトを与え、世界中で大きな話題になったのを覚えています。

アメリカとメキシコの国境は全長約2000マイル(約3100キロメートル)。国境は多様な地形を横切っていて、約1000マイルは、砂漠や山岳地帯、リオ・グランデ川などの自然が壁となり、メキシコ側からの侵入を防いでいました。人工的なフェンスは残りの約1000マイルに設置されているということになります。

1月20日にアメリカの第46代大統領に就任した民主党のジョー・バイデン氏。トランプ政権下で離脱した「パリ協定」に復帰する文書に署名するなど、大きな政策転換が話題になっていますが、メキシコ国境沿いの壁建設の停止や移民規制についても、就任初日に撤廃したようです。

Beazley Design of the Year

Beazley Design of the Yearとは、社会的正義や気候変動、パンデミックなど、今、世界全体が直面している数々の問題において、デザインがどのようにアプローチできるか。強いメッセージ性を含み、革新的で、関連性が高く、示唆に富んだプロジェクトに与えられる賞です。

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