今年の学びと気づき:知識から知恵へ、PLAYFUL LEADERSの探求
この記事を書いている人
7つのわらじを履いている小笠原(あだ名:てっちゃん)といいます。
今回は対談記事になっています。対談相手は、元木さん(あだ名:モックン)です。
学びのデザイン、人材開発や組織開発に取り組んでいます
記事の内容について
2024年から始まった「PLAYFUL LEADERS(プレイフルリーダーズ)」という実践プログラムを二人で主催・実施しました。主催している二人が、1年で2期プログラムを開催し、運営するなかで、どんな体験だったかをふりかえる記事になっています
前編はこちら
後編はどんな内容?
後編はこの1年間、2人がどんな本に出会ったり、どんな体験をしてきたかを紹介しています。
後編スタート!
知識から知恵へ:ティム・インゴルドとの出会い
モックン:今年はプレイフルリーダーズの実践コミュニティーや、いろんな実践をして、生業としてもファシリテーションや場づくりをやってきた自分たちはどんな本に出会ったり、どんな体験をしてきたかを紹介してみませんか? ワークショップとは少し離れているかもしれないけど、インプットしたことや体験を2つ、3つぐらい選んで話してみましょうか。
てっちゃん:それなら、やっぱりティム・インゴルドの『人類学とは何か』本だな。あの本は本当に響いたし、すごく大事だったなって思う。4年近く前に読んだけど、改めてね。
プレイフルリーダーズでも何度か話してきたけど、「知恵と知識」の違いがよく分かった。僕らはただ知識を伝えるんじゃなくて、みんなと実験しながら、経験しながら現場に生きるものをやっていたんだよね。それをインゴルドの本が整理してくれて、すごく腹落ちして、「間違ってなかったんだな」って納得できた。
それで考えると、今って知識に慣れ親しんでいるだけで、意図的に「知恵」を学ぶ機会ってあまり作れていないんじゃないかなって。でも、意識して学ぶ機会を作れたことがすごく大事だったなって感じている。
WSDとプレイフルリーダーズを受けてくれた人たちが、「WSDは知恵と知識の両方が入っている」って言っていたんだ。eラーニングを通じて知識をしっかり学びながら、プレイフルリーダーズでは、もっと知恵寄りでやってきたんじゃないかなって。修了生の言葉からもそれが見えたんだよね。
ティム・インゴルドの『人類学とは何か』は、まさにプレイフルリーダーズがやっていることだなって思ったよ。モックンは何かある?
特権に気づくことから始まる場づくり
モックン:『真のダイバーシティを目指して、特権に無自覚なマジョリティのための社会的構成教育』。かな
ワークショップや、みんなで学ぶ場を作るときって、「誰もが声を出しやすいように」って考えるけど、やっぱり意識しなきゃいけないのは、特権性なんだよね。それって男性とか年配の人だけじゃなくて、いろんな人に当てはまる話で。
この本を読んで思ったのは、主催者側がその構造にしっかり自覚的であることが大事だってこと。例えば「男性ばかりが声を出す状況」ってことがあればそれをそのまま声にだす。意識的に認識しないと見過ごしてしまう。そういうのをきちんと捉えて、場を進めていくことが必要なんだと思う。
直接インプットしなくても、主催者側がその構造を意識して場を作っていけば、集団での学びも変わっていくし。そういう意味で、この本はボディーブローみたいにじわじわ効いてきたなって思っていて。本の紹介としては、これを選んでみました。
てっちゃん:ランクと特権って、全く同じじゃないかもしれないけど、似ている部分があるよね。結局どっちも、自覚的になるってことが大事だなと思う。
モックン:そうそう。自覚的になることで、ワークショップを提供する側としても信頼関係を築いたり、肯定的に場に関わることができる。それに、アンラーン(学びほぐし)していくことが大事だよね。
てっちゃん:やっぱり「自分にちゃんと気づく」ってことだよね。
モックン:僕たちもさ、若手だと思ってたけど、気づけば場づくりを10数年やってるしね。笑
てっちゃん:そうそう。最近、企業研修をやったんだけど、アンケートに「若手の講師」って書かれてて(笑)。場によって立場が全然違うんだなって改めて思ったよ。だからこそ意識的にならないといけないよね。
モックン:てっちゃんの2冊目は何ですか? 本じゃなくてもいいよ。
展示という学びのプロセス:伝えることで深まる経験
てっちゃん:本じゃなかったら何かある?インプットしたことや体験で。
モックン:私は展示会とか入れようかなと思ったよ。
てっちゃん:聞いてみたい!それを先に聞かせて!
モックン:一つ挙げるなら。できごとのかたち展。2024年の12月7日と8日に、多摩美術大学のデザイン学科の1年生から3年生までの授業課題作品が並んだ展示で。プロダクトデザインやビジュアルデザイン、博物館と連携した展示なんかもあって、すごく幅広い内容だった。
特にいいなと思ったのは、展示を作ること自体が学習課題になっているところ。9月から3ヶ月かけて準備して、学びを展示という形にしていく。そのプロセスがすごく価値あるなと思ったんだよね。
ワークショップや会社のプロジェクトでも、アウトプットで終わっちゃうことが多いけど、それって研修やトレーニングの範囲でしかない気がして。でも、何を学んだかを他者に説明したり、見える形として何かを作ることで、学びが深まるんじゃないかって。レポートとは違った質感で、経験を語ることや他者に伝えるプロセスがすごく大事だなと思ってる。
だから、プレイフルリーダーズでも最後に展示やアウトプットをする機会を作っているんじゃないかなと思ってて。そういう意味で、展示は定期的に見に行くようにしてる。特に美大の展示は、作品の幅も広いし、最先端の技術や流行を感じることができる。それにインスピレーションも受けることが多いから、意識的に行くようにしてるかな。
てっちゃん:あれだよね。アメリカのハイテックハイも、最終的な学びは必ず外に発表するんだよね。
その瞬間に他者からフィードバックをもらったり、ちょっとした緊張感が生まれるし、それがどう他の何かと繋がるのかって考えられる。外への繋がりが生まれる感じがいいよね。
モックン:てっちゃんは次、何かある?
予定調和を超えて:その場で生まれるワークショップの面白さ
てっちゃん:それで言ったら、やっぱりインプロですね。今年、インプロの舞台に出たんだけど、すごく楽しかった。本当にその場にあるものを、みんなで生成していくドキドキ感があって。インプロの大事なところって、突拍子もないことをやるんじゃなくて、みんなの様子を見ながら進めることなんですよね。
頑張らなくてもいい、無理せずやっていけば、結果的にそれが面白くなる。そこにすごい可能性を感じて。なんでこんなに楽しいんだろうって考えたら、やっぱり答えは、その場の参加者とその場の環境が全部作ってくれるからなんだよね。その状況に合わせて一緒に何かを作るということが可能性でもあるし、荒削りでもみんなで作っていくことが楽しいんだろうなって。そういう意味では、今はインプロ推しだし、インプロを教えてくれた、堀さん推しです!
モックン:この記事、堀さんが読んだら喜びそうだね。
てっちゃん:最近、直接「推してます」って伝えたんだよね(笑)。今、堀さんの大学時代の論文も読んでいて。
モックン:えー! 私も読んでみたい!
てっちゃん:最近はインプロの本もひたすら買っているんですよ。キース・ジョンソンの真っ黒い本も買ったんだけど、正直まだよくわかっていなくて(笑)。堀さんに話したら「それについて修論を書きました」って言われて、今、論文を読みながら勉強しているところです。
でも、やっぱりシステムコーチング®️とかとも繋がっているんだなって感じる。
最終的に何も物がなくても、その場でみんなと一緒に作れるって最強だよね、という気づきがあって。この1年間、システムコーチング®️学んでプロ資格までとったのは本当学び。
今年は「もっと自由にやっていいし、やれるな」と感じた1年だったね。インプロ系の本を読んだり、ショーに出たりして、可能性がすごく広がった1年。
モックン:物にこだわる私と、物がなくてもできるっていうてっちゃんの話、面白いですね(笑)。
インプロって、ある意味、古典的な教育への批判でもあるんですよね。キース・ジョンソンさんも書いているけど、「頑張ろうとしない」「言語的に考えない」「計画しない」みたいな考え方って、WSDで言う「自己原因性感覚」や「身体性」とすごく繋がるところがあると思っていて。
ワークショップの起源を遡ると演劇の部分はもちろんあるから、繋がっていて当たり前なんですけど、即興演劇をワークショップデザイナーが学ぶことの意味ってすごくあるなと、改めて聞きながら感じたな。
てっちゃん:予定調和じゃないからね、ワークショップは。もっくん、他に何かあります?
仲間と共に学ぶ:実践者の成長を支えるコミュニティの力
モックン:もう一冊あげるなら『ワークショップデザインにおける熟達と実践者の育成』。森 玲奈さんの本ですね。やっぱり「熟達したワークショップデザイナー」と「初学者のワークショップデザイナー」って何が違うんだろう? その違いをしっかりまとめてくれている本で、すごく参考になった一冊でした。
ワークショップを設計する時の「デザインモデル」や「参加者の見立て」、それから「テーマの考え方」の深さが、熟達した人は全然違うんだなって気づかされたり。自分なりのプロセス設計をたくさん経験する中で、少しずつ熟達していくんだけど、それって個人だけの力じゃないんだよね。コミュニティの中で仲間と一緒に学び合うことがすごく大事なんだって、この本でも書かれていて、改めてその大切さに気づいて。
WSD(ワークショップデザイナー養成プログラム)も、実践者のコミュニティの1つだと思うんですけど、さらに深めたいテーマがあって、どんどん広がっていく。WSDの次のステップって、まさにそこなんじゃないかなと思うんですよね。僕たち自身も「実践者の育成」と「実践者コミュニティの形成」を意識しながらやっているけれど、そのためには、こういう博士論文や研究結果をしっかり抑えながら進めていくことが大事だなと。改めて、今年すごく参考になった1冊でした。
てっちゃん:今の話を聞いて思ったんだけど、『センスは知識から始まる』と『独学の技法』はすごく参考になったなと思って。
結局、ワークショップや場づくりって、センスだけでなんとかなるものじゃないんですよね。そしてセンスはちゃんと学んで身につけられるものだって、改めて感じました。今回、プレイフルリーダーズでやろうと思ったのも、お世話になっているウエダ先生がやっていることを見て、それが「先生だからできる」というわけじゃなくて、「センス」だけじゃなく徹底的に学び、実践しているからこそできているんだなと。
僕らもただ単にやるんじゃなくて、後天的にセンスを身につけることができるし、そのためには知識をしっかり蓄えたり、いろんな場に出て経験することが大事だと思っていて。
それが学べるし、経験できる場がプレイフルリーダーズなんじゃないかなと。ワークショップだけじゃなくて、いろんなテーマについて学ぶことで、それが結果としていろんな場面に活かされていく。そういう意味では、『独学の技法』みたいに「自分が何を学ぶのか」をしっかり決めて、僕らも学び続けることが大事だなと思いましたね。
モックン:やっぱりコミュニティが大事だよね。それと、テーマを一緒に探求できる仲間がいること。1人で学ぶのはやっぱり難しいけど、誰かと一緒にやることで学びが深まると思う。
てっちゃん:うん。いい感じに収まったんじゃない?ありがとうございました
終わりに
いかがだったでしょうか?ワークショップや対話、学びの場を探求していた二人が、「プレイフルリーダーズ」という実践コミュニティーを立ち上げ。1年間奮闘したなか、対談形式でふりかえった内容となっています。
何か共感したり、気になったかは是非コメントやご意見いただけると幸いです。プレイフルリーダーズの詳細は以下のページかFacebookページに最新情報がありますので、こちらもご覧ください
https://bit.ly/welcome_playfulleaders
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