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<芸術一般・エッセイ>ナンデ君とダカラ氏との12の対話(そしてときどき、ワカッタ嬢の闖入)(前編)

(前口上として)

 ある本(『日本人にとっての東洋と西洋』谷川徹三・福田定良 法政大学出版局)を読んでいたら、問答と対話とは異なるものだと説明されていた。それによれば、問答とは仏教、なかんずく禅の基本としてあり、師が弟子の問いに答えるものだそうだ。そして、この場合は、師が弟子に一方的に答えを伝え、弟子はその答えに疑問を挟んだり、さらにヘーゲルの弁証法のように、アンチテーゼ(反対となる命題)を提示したりはできない。

 一方、対話というものは、プラトンの対話を原点及び最上とするもので、それは一般市民の間にも共有されており、お互いが対等の立場に立って議論を行うとともに、相手の立場も十分理解した上で、かつユーモアも交えて行なうものだという。

 そして、日本では対話という形式が根付いておらず、問答になってしまうばかりか、議論とは勝者と敗者を決めるための、何か武装闘争のようになっていると嘆いている。たしかに言われてみれば、国会での与党と野党との討論は、よりよい政策を実施するため双方が知恵を出し合って協議するものではなくて、野党は与党に対して「独裁者」、「悪者」、「無能」といったネガティヴなイメージを与えつつ、自らは「正義の味方」、「勇気ある市民の代表」、「有能」といったポジティヴなイメージを獲得することを目指しているように見える。

 この政治の話になると、「衆寓政治」とか「ポピュリズム」といった方向へ話が展開してしまうので、これ以上の深入りはしないが、ことほど左様に、日本には対話という建設的な議論の形式が十分に認識されていないことがよく理解できると思う。

 そこで、昔、東京下町の庶民は、講談・落語・浪曲などの物語を通じて憂き世の生き方を学んだのだが、この中で良く使われる、「長屋のご隠居(大家)と住人(店子)との会話」、「熊さん、八っつぁんの会話」という形態は、実は下町の住民が人生を学ぶための一種の「対話」ではないかと私は評価している。

 そういうわけで、東京下町の生まれである私が、「なんで、なんで」と常に質問する「ナンデ君」、それに対して「だから、・・・だよ」と答える「ダカラ氏」、さらに、両者のやり取りに突然入り込んできて、「わかったわ」と自分勝手な解釈をしてみせる「ワカッタ嬢」が入り乱れる、東京下町の雰囲気を持った12の対話を展開してみたので、御照覧に供します。

なお、以下の会話では、ナンデ君は「ナ」、ダカラ氏は「ダ」、ワカッタ嬢は「ワ」と、それぞれ省略して表記している。


1.ナンデ君「なんで、生活するのにお金が必要なのですか」

 ナンデ君は、ダカラ氏の近所に住む高校生だ。子供時代から、わからないことがあるとダカラ氏にいろいろと質問して、その都度教えてもらってきた。既に仕事を辞めて隠居の身であるダカラ氏は、趣味を兼ねて膨大な読書をしてきた知識から、ナンデ君の問いかけに対していつも答えを出してきた。ときおり、ナンデ君の姉であるワカッタ嬢が、知ったかぶりをしながら邪魔をしてくるが、そんなことにも負けずにダカラ氏は、ナンデ君に真摯に答えている。

 そうしたある日、いつものようにナンデ君がダカラ氏を捕まえて、質問してきた。

ナ「ぼくのお母さんは、いつも物価が高い、給料が少ない、お金がかかってしかたないって、ぼやいているんだけど、なんで普通に生活するのに、お金がいるのかな」
ダ「そうか、ナンデ君のお母さんは、いつもそうやってぼやいているのか。そりゃあ、私もお金のことについてはぼやいてばかりだけど、ぼやかないで済むようになるためには、やっぱりお金がないといけないから、ナンデ君の質問のように、お金がない世界を考えてみようかね」
ナ「お金がいらない世界なんて、あるんですか」
ダ「もちろん、そんなものはない。地獄の沙汰も金次第、なんていう言葉があるくらいだから、あの世へ行くのにも金、金、金の世の中になっている。だからこそ、お金がない世界を想像してみてもいいんじゃないかな」

ナ「どういう世界なんですか、そこは」
ダ「簡単にいえば、人々が自分の欲望を無くした世界だろうな。あれが欲しい、これを持ちたい、こんなものを食べたい、こういう服を着たいなどという、個人個人の欲望がある限り、そしてその欲望を多くの人が持つ限り、そこに競争というか、奪い合いが出てくる。そして、けんかしないで上手くまとめるためには、お金を沢山払った人がそれを得られるとした方が、平和なやり方だろうね」
ナ「欲望が問題ですね」
ダ「でも、人の欲望は無くならないよね。やっぱり、他人と比べてしまうし、他人より自分は良いもの、といっても本当に良いのかどうかはわからないけど、これもわかりやすく言えば他人より高いものを持つことで、自分が他人より偉くなった気分になる」

ダ「こうしたことは、自尊心とかプライドという言葉になるけど、そうしたものを人は絶対に持っているし、それを無くすことはできない。これを無くせたら、それこそ偉い坊さん、例えば聖フランチェスコみたいになれるけど、皆が皆、フランチェスコにはなれないよね」
ナ「フランチェスコって、誰ですか」
ダ「ルネサンスの頃にイタリアで、貧しい修道僧の生活をする修道院を始めた人だ。もともとは大金持ちの家に生まれて、若いころは悪いことをしたい放題、難しい言葉で言えば放蕩三昧を繰り返した。戦争にも行った。しかし、ある日羽が六つある最高級の天使セラフィームに出会ってから、改心、つまり心を改めた人だ」
ナ「さんざん、お金持ちの暮らしを味わったのですね」
ダ「そうだね、さんざん味わったから、もういいやとなったのかも知れないけど、その後は、アッシジという丘の上に修道院を作って、一枚の粗末な着物だけという質素な生活をした。当時贅沢になっていたカソリック教会に対する批判もあったのだろうね。そうしたことから、聖人、聖なる人として称されることになった」
ナ「それなら、皆フランチェスコみたいな生活をすれば良いじゃないですか」

ダ「それは無理だろうな。ナンデ君だって、そんな生活はできないだろう?」
ナ「・・・はい、僕もいろいろと美味しいものを食べたいし、新しい服を着たいし、友達とディズニーとかにも行きたいから・・・」
ダ「それはみんな多かれ少なかれ、同じように考えているし、そもそも人の欲望なんて、無くすことはできないよ。だから、欲望と欲望がぶつかりあってけんかしないためには、欲望の対象をお金で換算して、お金を多く払う人が取るようにすれば、とりあえずは収まるよね」

ナ「はい、そうですが、じゃあ、お金がない人はどうすれば良いのですか」
ダ「そのために、福祉とか大金持ちの社会還元として財団を作るとかいろいろあるし、何よりも税金は、お金持ちほど多く払うことになっているからね。ただ、こうしたことは私の専門ではないし、何よりも私はあまり詳しくない上に、もし知っていても数学・政治・経済などの難しいことが沢山あるから、ナンデ君に話しても理解するのは大変だと思うよ」
ナ「そうですね。じゃあ結局は、お金は必要だから、そのためには働け、稼げ、ということですかね」

ダ「そういっては身も蓋もないが、この社会で生きていくためには、自分の与えられた仕事を通じてお金を得て、そのお金で生活していくことしかないだろうね」
ワ「そうよ、だから私は玉の輿に乗って、絶対に大金持ちと結婚するんだから!」
ダ「そうなったら、良いね」

2.ナンデ君「なんで、人は恋するのですか」

ナンデ君、この日はいつもより妙に真剣な顔つきで、ダカラ氏に話しかけてきた。

ナ「ダカラさん、質問があります。なんで人は恋をするのですか」
ダ「おやおや、お前もそんな年になったのか。早いものだな・・・」
ナ「違うよ。僕じゃなくて、友達が恋に悩んでいるから、それで、なんでかなって思ったんだ」
ダ「まあ、誰でもいいが、・・・人はなぜ恋をするからって質問だよね」
ナ「うん、なんでかなあと思って」
ダ「それは、そういう風にできているから、って答えたら、怒るよね」
ナ「怒る」
ダ「じゃ、違う答えをしよう。・・・それは、人は生き物だからだ」
ナ「それが、答え?」

ダ「もっと詳しく言うと、生き物は全て、自分のもっているDNAという遺伝子情報を、ずっと長く後の世代に伝えていくという使命を持っている。しかし、DNAをそのままコピーして伝えたら、かなりの確率で失敗が出てしまう。さらに、地球環境が変化するから、いつまでも同じだと変化についていけない」
ナ「それと、恋がどうやってつながるの?」
ダ「そのコピーの失敗する確率を下げ、さらに環境の変化に順応するような変化を加えるチャンスを得るために、自分以外の人間のDNAと掛け合わせるように人は進化したんだ」
ナ「進化ねえ・・・」

ダ「別人同士のDNAを掛け合わせると、より良いDNAができる可能性が高くなる。そして、この別人同士というのは、そのまま男と女の関係になる」
ナ「そこで、恋につながるのか!」
ダ「そう、だから人の男女は、もともとお互いにDNAを掛け合わせるために、引き付け合うように出来ている。もちろん、そうじゃない人もいるけど、それで、DNAを掛け合わせるもっとも良い年齢になると、人は恋をするのさ」
ナ「なんか、夢がない話だね」

ダ「生物学的に説明すると、こうなるね」
ナ「もっと、夢がある答えはないの」
ダ「そうだな、それは君たちのような年になると、人はみなとても美しくなって、その美しさに耐えられなくなるから、というのはどうだろう」
ナ「美しさねえ・・・」
ダ「美しいというのは、目に見えるものだけではないよ。内面の、心の美しさもある。なによりもそこに、その人が若い命が生きていることだけで、実はとても美しいのさ」
ワ「そうよね!このワタシは、とってもきれいでしょ!」
ナとダ「・・・」

3.ナンデ君「なんで、親子は選べないのですか」

 ナンデ君、今日はなぜかニコニコしながら、ダカラ氏に聞いてきた。

ナ「また聞きます。なんで、親子は選べないのですか」
ダ「恋の次は、親子のことかい?」
ナ「はい、ちょっと最近・・・別の家の子に生まれたらよいなあと思って」
ダ「そんなことを考えたら、ご両親は可哀そうだよ、・・・ナンデ君を一所懸命に育ててくれたのだから」
ナ「はい、そうですが、・・・最近、芸能人の家に生まれたら、僕も簡単に芸能人になれるのかなあって思ったもので・・・」
ダ「なんだ、そんなことで別の家に生まれたかったなんて、・・・まったく、・・・」
ダ「まあ、動機はなんであれ、そういうことを子供は得てして考えたりするものだからな、・・・一つ答えてみるか」
ナ「お願いします!」

ダ「簡単に答えれば、これも恋と同じだな、・・・。つまり、そういう風に初めから決まっているのさ」
ダ「でも、これでは何のことかわからないから、もっとかみ砕いてみよう。まず、恋と同じでDNAの話だ。つまり、ナンデ君のDNAは、お父さんとお母さんのDNAによって作られているから、今のナンデ君が、例えば別のお父さんとお母さんの子供として生まれたら、全く別のDNAになってしまうから、今のナンデ君とは別人になってしまう」
ナ「別人?」
ダ「そう、別の家に生まれるということは、別の両親を持つということになるから、当然そうなるよね。だから、今のナンデ君である限りは、今のお父さんとお母さんから生まれたということは、どうやっても変わらないし、変えられないんだ」

ダ「ただ、そこから変えようとすれば、養子になるなどの方法はあるけど、これはナンデ君も望まないことだと思うよ、そうだろ?」
ナ「はい、そんなことまでは・・・」
ダ「だから、今の自分がいるのは、今の両親がいるからであって、そこは感謝しなくてはならないよね。・・・そうはいっても、現実には本当に困った親というのもいるから、そこから逃げ出したい場合もあるだろう。でも、生まれてきた事実は変えることはできないから、さっき言った養子というようなことを探すしかない」
ナ「そんなことまでは考えたくないな・・・」
ダ「そうだろうね。だから、親子を変えようとするのではなくて、今自分がいることをスタートラインにして、これから自分がどうやって生きていくか、それを考えることの方が大事なんだよ」
ナ「じゃあ、僕はお父さんより、もっと大金持ちになってやるぞ!」
ダ「それは、楽しみだね」
ワ「ナンデがそういうなら、ワタシがナンデの姉ということにも、ナンデは感謝しないといけないのよね!」
ダ「親子の関係はそうだけど、姉と弟の関係は、・・・もっと難しそうだな?」

4.ナンデ君「なんで、死ぬのは怖いのですか」

 ナンデ君、この日はなぜか少し悲しい顔をしながら、ダカラ氏のところを訪ねた。

ナ「ダカラさん、この前友達が、親戚が亡くなったから忌引きで学校を休んでいたけど、僕は、死ぬのは嫌だし、怖いと思ったんです。でも、なんで死ぬことは怖いのですか」
ダ「これは、これは、大変な質問をしてきたねえ。・・・死ぬのがなぜ怖いなんて、もう宗教でも信心している人とか、偉大な哲学者とかでないと答えられない、難しい質問だね」
ナ「じゃあ、ダカラさんでも、なぜ死ぬのが怖いのがわからないのですか」
ダ「まあ、そう言ったら私も困るから、ここはひとつ一緒に考えてみよう」
ナ「はい、それで一緒に考えるってどういうことですか」

ダ「まず、ナンデ君は、自分が死ぬのは怖いだろ?」
ナ「はい、もちろん死にたくないです」
ダ「じゃあ、次に自分の家族・親戚・友人が死ぬのも怖いだろ?」
ナ「はい、怖いというよりも、そうなって欲しくないです」
ダ「でも人は、いつかは死ぬ。それがいつなのかはわからない。どうやって死ぬかもわからない」
ナ「いつ死ぬかがわかっていれば、準備もできますね」
ダ「そうだね。死ぬことが分かっていれば、例えば持っているお金を全部使い切ってしまおうとか、ずっと会っていない友達に挨拶しようとか考えるよね。・・・でも、いつ死ぬかは誰もわからない。わからないから、怖いのだと思う」

ダ「人が怖い対象は、例えば自分を傷つけたり、殺したりするようなものは当然怖い。そして、意外と気づいていないけど、知らないことやわからないことはとても怖く感じるんだ」
ナ「知らないことやわからないことが、それだけで怖いのですか」
ダ「そうだね。これから起きることや結果を知っていれば、人はそのための準備、とくに心の準備ができるけど、それがわからないから、例えば悪い結果になるんじゃないかとひどく心配したりする。また、良い結果になると期待していても、やってみたら悪い結果になると、酷く落胆してしまう。そうした、知らない、わからないことは、人にとって不安を引き起こすから怖いと感じるんだ」
ナ「じゃあ、死ぬことも同じですか」
ダ「死ぬことも、知らない、わからないことの一つだ。そして、死ぬことは、心や身体の苦しみにつながる場合が多いから、さらに怖くなる」
ナ「楽に死ねたら良いですね」

ダ「みなそう思って、例えば健康に気を付けたりしている。しかし、他人が死んだとき、特に自分と親しい人が死んだときは、やがて自分も死ぬのだということに気づかされる。でも、それは自分の健康を気に掛けるようには、自分でコントロールすることはできないから、余計にわからないことになる。それで、やっぱり怖くなってしまう」
ナ「そうか、でも怖くならない方法はあるんですか」
ダ「さっき言ったように、昔から宗教とか、偉大な哲学者たちが、そうしたことをずっと考えてきた。でも、これで十分ということは見つかっていない。いや、そもそも見つけることは難しいと思う」
ナ「なにか、もっと怖くなってきた」

ダ「死ぬことが怖いのは、何も間違ったことじゃない。そう思って自然だ。だから、無理に怖がることを止めなくて良い。しかし、ずっと死ぬのが怖いと思い続けるのも、これは困ったもんだ」
ナ「じゃあ、どうすれば良いのですか」
ダ「どこか心の片隅に、死ぬのが怖いという気持ちをしまっておく。そして、死ぬのがわからないからこそ、今生きていることを思う存分に楽しもうとするのが良い」
ナ「なるほど、生きていることの方を考えるのですね」
ダ「そういうことだね」
ワ「私もそう思っているから、いつもナンデを可愛がってあげてるんじゃない。・・・ナンデ、たまには私から可愛がってもらっているお礼を私にしなさいよ!」
ナ「ええ、そんなあ。それは可愛がりじゃなくて、いじめだよ!」

5.ナンデ君「なんで、死んだらいけないのですか」

 ナンデ君、少し深刻そうな顔をしてダカラ氏に話しかけてきた。

ナ「死ぬことについては、なんとなくわかったのですが、じゃあ、よく自殺する人がいるじゃないですか。それはなんで良くないことなんですか」
ダ「こりゃまた、深刻で難しい問題を聞いてきたなあ。・・・でも、私としてはなんでも答えるのがモットーだから、逃げるわけにはいかんだろう」
ナ「(微笑しながら)ダカラさんでも、難しいことがたくさんあるんですね」
ダ「そりゃあそうだよ。それに自殺というのは、軽々に論じられるものじゃないからね。・・・だから、あまり話題を広げすぎてもいけないから、いまここに生きていることのありがたさを言おうかね」
ナ「お願いします」

ダ「この前までは、DNAとか親子のこととか話したけど、そこに共通するのは、人はみなその人だけしかいないということなんだ。つまり、DNAが同じ人はいないわけだから、ロボットやコピー(クローン)のようなまったく同じ人はいない。『男はつらいよ』っていう映画を知らないかもしれないが、主人公の寅さんが『俺とお前は違うんだ!お前がイモ食って、俺が屁をするか?』というセリフがある」
ナ「いきなり、おならネタですか」
ダ「でも、これはすごくわかりやすいだろう。寅さんが言うとおりに、人はみな違う。そして、一人一人違う人がこの世にいることは、とっても貴重なことなんだ。なんでかと言えば、この世にいろんな人がいることで、私たちの世界は成り立っている。もし、同じ人ばかりであれば、皆他人の考えていることがわかったりして、ちっとも面白くない」

ダ「芝居でいえば、そこには主役も脇役もいない。皆主役で、脇役で、いろんな人がいろんな役割を演じているからこそ、この世は面白いし、いろんな予想がつかないことが起きる」
ダ「そして、予想がつかないからこそ、そこにドラマは起こるし、人の世の悲劇や喜劇が起きる。波乱万丈の人生は大変だけど、何もない同じことの繰り返しのほうが、実は人には耐えられないことなんだよ」
ナ「なんか、難しいですね・・・」
ダ「シェイクスピアというイギリスの劇作家の有名なセリフで、『全世界は一つの舞台』と言っている。つまり、この世の人たちによってお芝居を演じられているのが、世界そのものであって、そこに誰一人も役者として欠けてはならないということさ」
ナ「ますます、難しくなってきたな」

ダ「やさしく言えば、人は誰もが絶対に欠けてはならない。自分の寿命の限り、舞台の役割を最後まで演じ切るということさ」
ナ「でも、そこに自殺するという役割もあるのじゃないですか」
ダ「そこが難しいところだ。・・・だから、ここで私が言えるのは、そこのあなた、そして君は少なくとも自殺する役割じゃないよ、そのうち楽しい役割がめぐってくるから、と思って待つことだね」
ワ「そうか、じゃあ私は、いつも主役のお姫様をやることにしたわ。そして、ナンデ、あんたは私という姫の召使よ!」
ナ「さっさと逃げなきゃ」


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