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<ラグビー>2024年シーズン(7月第二週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 東京の地下鉄でも観光地でも、夫婦連れは皆同じような服装をしている。まるで彼らが若い頃に流行したペアルックをそのまま引きずっているようだ。しかし私は、ペアルックというのは、何か気色悪くて避けたい服装の代表だ。だいたい流行の服装というものは、私にとっては気色悪いものが多いのだが、とにかく売るために、もともと不必要なものを無理矢理にデザインを変えて作っているから、自ずと非日常的なものになってしまうのだろう。そういう観点から考えると、服飾産業というのは、まさにジョルジュ・バタイユの概念である「浪費のための浪費」を象徴していると思う。

 もっとも、スキー、テニス、ゴルフ、車とオートバイといった単価の高いものに比べれば、服飾における「浪費」の割合は低い。しかし、より広範囲かつ効果的という観点から見れば、服飾における「浪費」は、バタイユが「最大の浪費」と措定した「戦争」を防ぐために最も貢献していると思う。皆さん、どんどんペアルックや流行の服を追い求めましょう。そうすることで「戦争」で「浪費」する必要がなくなりますから。


1.テストマッチの結果

日本23-25ジョージア

 日本は、さすがに中堅選手を復帰させた。キャプテンのマイケル・リーチが4番LOに入り、NO.8にフランスでプレーするテヴィタ・タタフが入った。SOが李承信で22番のリザーブに山沢拓也が入っている。今回初キャップとなるのは、17番PR岡部崇人、21番SH小山大輝の二人で、ともにマオリオールブラックス戦でプレーしている。ジョージアは、リザーブの17番PRルカ・ニオラゼと18番PRギオルギ・ジマナシュビリの二人が初キャップとなる以外は経験値の高いメンバーにしている。キャプテンは、NO.8のベガ・ゴルゴゼで46キャップ。最多は11番WTBアレクサンドル・トドゥアの113キャップ。

 試合は、日本が先にトライを取るなど良いペースで進めたが、19分に7番FL下川甲嗣がラックのディフェンスでクロコダイルロールを犯してしまい、シンビンからレッドに格上げされた。このため、日本は残り時間を14人で戦うことになった。それでも、前半を13―18の5点差で折り返し、58分にジョージアにシンビンが出て一時的に数的不利がなくなったことから、63分のトライで23-18と逆転したときはわずかな勝機が見えていた。ところが、ジョージアのパワープレーにスクラムを中心に押されまくった日本は、71分に反則の繰り返しでシンビンとなってしまい、残り時間を15人対13人で戦うことになったことが致命傷となった。日本には二人少ないFWで対抗できる余力はなく、73分に簡単にトライを取られ、結果的に反則が大きく影響した内容となった。

 レッドカードになったクロコダイルロールの反則を厳しく取ることは、すでにワールドラグビーから各国協会に通知済みであるので、これを選手たちに十分落とし込めなかったコーチ陣の責任は重い。レッドにならずに15人揃っていれば、日本にも十分な勝機があっただけに非常に悔やまれる敗戦となっただけでなく、マオリオールブラックスに勝利した成果が帳消しになった試合結果だった。

オールブラックス24-17イングランド

 オールブラックスは、SHのTJ・ペレナラが膝の怪我で欠場したため、先発にフィンレイ・クリスティーを、21番のリザーブに初キャップとなるコルテス・ラティマーをそれぞれ入れた。イングランドは、左PRジョー・マーラーの怪我により、2キャップ目となるフィン・バクスターが1番PRで初先発する。また、リザーブ17番にはベヴァン・ロッドが入った。18番PRダン・コールは、ジェイソン・レオナードを超えるPRの最多キャップとなった。

 試合は、HOコーディ・テイラーがハカをリードしたオールブラックスが、11番WTBマーク・テレアのトライで先行したものの、すぐにイングランドに追いつかれ、前半を13―14とリードされる。後半も13-17までリードを拡げられたが、その後23番FBボーデン・バレットの好アシストからつないだテレアの二つ目のトライで18―17と逆転し、SOダミアン・マッケンジーの2PGを加えて24-17までリードを拡げた。ところが、79分イングランドにゴール前のモールを押され、そのままインゴールに入られたが、23番FBボーデン・バレットと12番CTBジョルディ・バレットの値千金のディフェンスでトライを防ぎ、どうにか連勝した。

 オールブラックスはイングランド相手に連勝したとはいえ、いずれも僅差であった上に、この試合で取られた2トライは、いずれもテレアのキック処理のまずさから取られており、テレアの2トライを記録したアタックは高評価できるが、ディフェンスについては疑問が多く残ることとなってしまった。ロバートソン監督としては、キックデュフェンス対応をどう修正するかが注目される。一方イングランドは連敗したものの、SOマーカス・スミスが、オールブラックス相手にキックパスから2トライをアシストしており、オウウェン・ファレルに代わるSOとしての存在感を見せていた。

オーストラリア36-28ウェールズ

 オーストラリアは、FLリアム・ライトが怪我で離脱したため、1番PRジェイムズ・スリッパ―がキャプテン代行を務めた。また、FW3列もロブ・ヴァレティニが6番に移動し、7番FLはフレイザー・マクライト、NO.8はチャーリー・ケールが初先発した。リザーブの16番HOジョシュ・ナッサーは、父ブレンダンに続き13人目となる親子二代のワラビーズとなった。ウェールズは、アーロン・ウェインライトがハムストリングスの怪我で欠場し、NZ人のテイン・プラムトリーがNO.8で先発する。6番FLはジェイムズ・ボッサム、7番FLはトミー・レッフェルとなった。WTBジョシュ・ハサウェイの怪我でリアム・ウィリアムスがFBから14番WTBに移動し、FBにはキャメロン・ウィンネットが入った。

 試合は、前半を23-14とリードしたオーストラリアが、後半もリードを維持し続けて、不振のウェールズに対して危なげなく連勝した。これで、ジョー・シュミット体制の出だしとしては上出来の結果となった。11番WTBフィリッポ・ダウグヌが2トライを挙げ、勝利に貢献している。

南アフリカ24-25アイルランド

 南アフリカは、2023年RWC決勝時の987キャップを超える、先発15人で990キャップという経験値の極めて多いメンバーにした。CTBのダミアン・デアレンデとジェシー・クリエルのコンビは、スプリングボクス最多となる30試合目を記録した。アイルランドは、キャプテンのFLピーター・オマーニーを20番のリザーブに下げ、NO.8で先発するケイラン・ドリスをキャプテン代行に指名した。その他、怪我人や脳震盪などにより数人の入れ替えをし、SHの先発は大ベテランのコナー・マリーが務め、21番リザーブにケオリン・ブレイドが入ったが、ベテランCTBバンディー・アーキはメンバー外となり、ギャリー・リングローズが先発した。

 試合は、前半をアイルランドがコナー・マリーのトライなどで6-16とリードしたが、後半は南アフリカに追い上げられ、61分に21-19と逆転され、65分には24-19とリードを拡げられた。しかし、70分と80分の22番SOキアラン・フラウリーの連続DGにより、劇的な再逆転勝利となった。アイルランドは、FW3列の3人の働きが勝利に大きく貢献したが、南アフリカはSHファフ・デクラークがキックミスを連発するなど、チームの脚を引っ張るプレーがあった。

 世界ランキングの1位争いは、結果として1勝1敗となり、アイルランド及び南アフリカともに優位に立つことができない結果となった。

ウルグアイ28-43フランス

 メルヴィン・ジャミネの帰国、ユーゴ・ウラドウとオスカル・ジュグウの逮捕など、スキャンダル続きのフランス代表だが、週末のアルゼンチン戦を控えてBチームがウルグアイに対して順当に勝利した。とりわけ、U20で大活躍した後に代表入りしたサモア人LOポソロ・ツイランギは、194cm、149kgの巨体ながら、50m独走トライを記録し、ジョナ・ロムーのようだと評判になっている。

アルゼンチン33-25フランス

 アルゼンチンは、前半を、ペナルティートライを含む3トライで先行し、21-7で終える。後半もリードを維持し続け、選手のスキャンダル続きで動揺するフランス相手に見事な勝利を収め、1勝1敗でシリーズをイーブンの結果にした。特に両RPがトライをするなど、大活躍したことが高く評価される。FLパブロ・マテーラが100キャップを達成した。

アメリカ7-42スコットランド

 スコットランドはアダム・ヘイスティングスがSOで先発した。試合は、順当にスコットランドが今や弱体化しているアメリカ相手に圧勝した。

トンガ14-36イタリア

 イタリアは、アンジュ・カプオッツオがFBに復帰した。そして、ホームで強さを発揮するトンガ相手に順当に勝利した。好調を維持しながら、来週の日本戦に臨めることとなった。

カナダ35-22ルーマニア

 カナダが強いのか、あるいはルーマニアが弱いのか、判断が難しい。

サモア34-30スペイン

 ホームのサモアにしては苦戦しているので、スペインが強化されていると見て良いと思う。

ナミビア22-37ポルトガル

 ポルトガルは順当に強化されているので、南アフリカとの対戦が楽しみになってきた。

2.U20世界大会結果(三試合目)

アイルランド対オーストラリア
 悪天候により中止となったが、オーストラリアの準決勝進出を阻害した結果となったため、様々な意見が出ている。
アルゼンチン52-12フィジー
フランス29-11ウェールズ
ジョージア28-17イタリア
南アフリカ12-17イングランド
NZ45-13スペイン

各プールの順位は以下の通り。
プールA:NZ、フランス、ウェールズ、スペイン
プールB:アイルランド、オーストラリア、ジョージア、イタリア
プールC:イングランド、アルゼンチン、南アフリカ、フィジー

準決勝の組み合わせ
 イングランド対アイルランド
 NZ対フランス

3.その他のニュースなど 

(1)フランス代表メルヴィン・ジャミネが、人種差別発言発覚で強制帰国

 フランス代表FB兼ゴールキッカーである、メルヴィン・ジャミネは、アルゼンチン遠征のスコッドから除外されフランスへ強制帰国させられた。理由は、アルゼンチン戦勝利の後に、夜間街中を歩きながら「母から、もしパーティをやるとすればと聞かれたので、俺は誓う、この道を歩いてきた最初のアラブ人を自分のヘルメットで殴る。俺のヘルメットで殴ってやる。もう一度言う。俺のヘルメットで殴る。俺のヘルメットで殴るんだ、俺は奴を殴る」と発言したビデオを、自身のインスタグラムで投稿したことが発覚したため。

 このジャミネの発言に対してフランスラグビー協会は、「酷い言い方だ」、「このようなコメントはまったく受け入れなれない。そしてスポーツが基本的に持っている価値に反する」というステートメントを発出した。この結果、ジャミネはフランスに強制帰国となり、「非常に重大な事案」に対する捜査を受けることとなった。なお、フランス協会及びジャミネが所属するツーロンともに、ジャミネの発言を強く否定した上で、ラグビーの持つ友好的な価値を支持していくことを表明している。

 25歳のジャミネは、フランスのイエール州出身で、ペルピニャンからツールーズでプレーし、2021年からフランス代表FB兼ゴールキッカーとして20キャップを重ねている中心選手の一人である。そのため、フランスラグビー協会のみならず、代表監督ファヴィアン・ガルティエの責任も問われる可能性がある。また、ジャミネに対する処分が、例えば過去に差別発言をした当時オーストラリア代表だったイズラエル・フォラウが、オーストラリア協会から除名処分を受けたように、フランスラグビー界からの追放という処分及びフランス国内での刑事事件として量刑になる可能性も想定される。

<参考>
 日本人の多くは、フランスの料理、ファッション、印象派などの美術から、一方的に進歩的文化的民主的な国民性であると思い込んでいるが、それは幻想に過ぎない。実際のフランスは、十一世紀から十三世紀の中東地域への軍事遠征である十字軍の中心勢力であり、当時のアラブ人たちは、十字軍をフランスの前身である「フランク」と呼称していたこと、十四世紀にローマ教皇を自国内へ拉致(アビニヨン捕囚)し、ローマンカソリックを支配しようとしたこと、十六世紀の新教徒(カルヴィン派=ユグノー)に対する残酷かつ計画的な大量虐殺の歴史などが証明するように、非常に強硬かつ保守的な宗教及び中華思想を持っている国民性がある。そして、ローマンカソリックの盟主を自負する一方、アフリカ北部の地中海沿岸地帯やシリア・レバノンなどの旧植民地からのイスラム教徒移民に対する差別及び反感が非常に強いことが、この発言の背景にあると言える。

(2)さらに二人のフランス代表選手が、アルゼンチンで性的暴行容疑により逮捕される。

 フランス代表としてアルゼンチンに遠征している、ポー所属の20歳のユーゴ・ウラドウとラロッシェル所属の21歳のオスカル・ジュグウの二人のFLは、アルゼンチン戦で先発からプレーしていたが、二人が若い女性に対して極めて深刻な性的暴行(後にレイプと判明)をした容疑により逮捕され、現在捜査中となっている旨、フランス協会会長のフロリアン・グリルがメディアに伝えた。これに対して、フランス・スポーツ大臣のアメリ・ウデュアカステラは、「言語道断の酷いことだ。公表したラグビー協会会長には感謝する。」と述べている。

(3)NZの85kg以下の代表チームが、南アジアへ遠征し、代表チームと対戦予定

 NZの各州にあるクラブラグビーでは、体重を85kg以下に制限したクラスがある。そうしたチームからNZ代表を選抜し、ラグビー後進国である南アジアへ遠征して、代表クラスと対戦することが、今般NZ協会から発表された。これは、オールブラックス、マオリオールブラックス、オールブラックスXV、ハートランドXV、U20代表、NZUなどが、これまで海外へ度々遠征し、あるいは遠征してきた代表チームと対戦してきたが、これらのチームとの対戦が困難な他国代表チームに対して、NZのチームと対戦する機会を持つことにより、世界のラグビーの発展に寄与することを目的にしている。

<個人的見解>
 今回の遠征は、世界ランキングでも低い国代表チームとの対戦を予定していると思われるが、ラグビーの発展には良いことだと思う。そして、このやり方をさらに発展させるのはどうだろうか。ラグビーはフィジカル・スピード・スキルのすべてを総合的に競う最高のスポーツだと思っているが、一方でスピードやスキルが劣っていてもフィジカルが強いチームが勝つ傾向が昔からある。これは、ラグビーとしての面白さを阻害する一因だと私は見ているので、これを制限し、ラグビー本来の面白さであるスピードとスキルを競うことに特化した85kg以下のレベルのゲームを世界に拡げることは、セヴンズの発展よりもラグビーの普及と向上に良い効果をもたらすのではないか。特に日本の大学生までの学生ラグビーに、こうしたレベルを導入すれば、特に高校の花園大会でミスマッチを防ぐ有効な方法になると思う。

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