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<ラグビー>ザ・ラグビーチャンピオンシップ第三週、ブラックファーンズ対ワラルーズ第二テストマッチ、女子日本代表対女子アイルランド代表第二テストマッチの結果

 前オールブラックスのNgani Laumapeが神戸スティーラーズ入りしたことがニュースになっている。彼の名前の日本語表記は、神戸側はナニ・ラウマペ、これまでのラグビーマガジンなどの表記はンガニ・ラウマペ。そして、私個人の表記は、ナガニ・ラウマフィー。いずれも間違いではないと思う。なぜなら、いずれも日本語の発音にそのまま変換できないものだから。そういれば、以前オールブラックスのCTBでチャーリー・ナタイというのがいたが、これもナタイ以外にンタイという表現が可能だ。また、アフリカ系の地名や名前で最初にNが付くものが多くあるが、一般的にはンと表記している。

1.ワラビーズス25-17プリングボクス

 
 スプリングボクスのジャック・ニーナバー監督は、オールブラックスにホームで連勝する目論見が崩れたものの、現在のスコッドとチームに自信を持っており、アルゼンチンにアウェイで大敗したワラビーズとの対戦に際しても、連勝するつもりだ。

 オールブラックスとの初戦で脳震盪になったSHファフ・デクラークが先発に戻り、ジェイデン・ヘンドリクスはリザーブに下がった。また、これまでリザーブは、FW6人+BK2人にしていたが、今回はワラビーズの機動力を考慮して、通常のFW5人+BK3人にした。この関係で、22番にはエルトン・ヤンチース、23番には大ベテランのフランス・ステインが、それぞれ入っている。

 ワラビーズのNZ人監督デイヴ・レニーは、コーチ陣や選手の入れ替えに苦慮している。長年ディフェンスコーチをしていたマット・テイラーが、個人的な理由で辞任した。後任には、ブランビーズで結果を残しているローリー・フィッシャーが就任した。

 また、キャプテンのFLマイケル・オコナーが引き続き欠場する他、SOジェイムズ・オコナーは、アルゼンチン戦大敗の責任を取ってスコッド外となった。しかし、ワラビーズのSOは、大ベテランのクエード・クーパーが今シーズン復帰不可能となる怪我をしている他、若手のノア・ノレシオも怪我で欠場中だが、今回先発に戻った。念のため、長く日本でプレーしていた32歳で71キャップを持つベテランのバーナード・フォリーをスコッドに入れた。

 2番HOフォラウ・ファインガア、3番PRアラン・アラアラトア、5番LOマット・フィリップが先発に戻った。SOノア・ロレシオ、13番CTBレン・イキタウがそれぞれ怪我から復帰している。また、FBには、スプリングボクスのキック戦術に対応するため、リース・ホッジを早々に指名した。リザーブでは、16番HOデイヴィット・ポレッキ、17番PRスコット・シオが戻っている。

 一方、元オールブラックスのSHとしてリザーブから数試合プレーしたタウェラ・カーバローは、現在フランスのラロッシェルでプレーしており、オールブラックスでプレーしてから5年を経過している。そのため、メルボルン生まれのカーバローは、ワラビーズ入りの資格があるため、本人はワラビーズ入りを希望している。ワラビーズは、海外でプレーしていても代表入りできるので、今後2か国目の代表チームとしてプレーしそうだ。なお、これに対してレニー監督は、カーバローの才能を認めている一方、ワラビーズには有能なSHが何人もいるので、まずオーストラリアでプレーすること、次にSHに怪我人が出ることを条件としている。

 試合はワラビーズが先制した。1分に、7番FLフレイザー・マクライトがトライ、SOノア・ノレシオのコンバージョン成功で、7-0とリード。続く7分に、ロレシオがPGを入れて、10-0とした。その後、スプリングボクスも反撃し、15分と21分にPGのチャンスを得たが、SOアンドレ・ポラードがいずれも外してしまった。しかし23分には、ポラードがPGを入れて、10-3とした。

 その後30分に、スプリングボクスの攻撃に対してワラビーズが反則を繰り返したため、14番WTBトム・ライトがシンビンとなったが、スプリングボクスは得点に結びつけられず、40分には、SHファフ・デクラークが、ワラビーズSHニック・ホワイトに対してスクラムからボールが出ていないときに腕を叩きつける反則をしてシンビンになってしまい、このまま前半を10-3のワラビーズのリードで終えた。また、ワラビーズ11番WTBマリカ・コロイベテの素晴らしいトライセービングタックルが、ワラビーズの士気を盛り上げた。

 後半は、47分にワラビーズ11番WTBコロイベテがトライを挙げ、ロレシオのコンバージョンは失敗したものの、15-3とリードと拡げた。続く57分、ワラビーズは、SOロレシオのラインブレイクからつないだ7番FLマクライトがこの日二つ目のトライを挙げ、ロレシオのコンバージョン成功で22-3とし、さらに64分には、ロレシオがPGを加えて、25-3とほぼ勝負を決めた。

 その後スプリングボクスも反撃をし、75分に、20番FLクワッガ・スミスがトライ、22番SOエルトン・ヤンチースのコンバージョン成功で25-10とし、終了間際の80分には、ワラビーズNO.8ロブ・ヴァレティが故意のオフサイドでシンビンになると、再びクイックスタートからスミスがトライを挙げ、ヤンチースがコンバージョンを決めて25-17としたものの、時すでに遅しとなった。

 ワラビーズでは、WTBコロイベテが攻守にわたりMOMの活躍をした他、キャプテンのマイケル・フーパーに代わって7番FLでプレーしたマクライトが活躍した。フーパーの状態は不明だが、フーパー不在でもまったく心配ないことを自ら証明した。

 スプリングボクスは、なんといってもSOポラードのゴールキック不調が大きく影響した。しかし、彼に代わるSOはヤンチースしかいない一方、プレーぶりが安定していないため、今後一抹の心配が生じている。

2.オールブラックス18-25アルゼンチン

 アルゼンチンのオーストラリア人監督マイケル・チェイカは、前回のワラビーズ相手にホームでの圧勝で自信を深めている。このままオールブラックスから2回目の勝利を目指したい。

 フロントローのフランシスコ・ゴメスコデラ、アガスティン・クレヴィイ、ナフエルテタズ・シャパーロの3人と、WTBのユアン・インホフを遠征スコッドから外した。先発3番PRにヨエル・スクラフィが入り、CTBのルキオ・チンチが11番WTBに移動した。また、ヘロニモ・デラフエンテの怪我により、12番CTBにはマティアス・オランド―が入っている。

 オールブラックスのイアン・フォスター監督は、自身の監督続投に大きく貢献した敵地エリスパーク(しかも、オールブラックスにとってのイーデンパークのような存在のスタジアム)でスプリングボクスに勝利したチームから、基本的に変更のないメンバーとしてきた。ただし、SOボーデン・バレットは練習中に首を怪我したため、初キャップとなるスティーヴン・ペロフェタを22番のリザーブに入れた。今シーズンのスーパーラグビーパシフィックで好調だったペロフェタが、今回初めてテストマッチで実力を試す機会となった。活躍が期待される。

 またオールブラックスのSHアーロン・スミスは、107キャップを持つが、今回100試合目の先発出場となる。オールブラックスのSHとして多大な貢献をしていることがわかる数字となっている。なお、クライストチャーチでのテストマッチは、6年ぶりとなる。クライストチャーチの2011年の地震で壊れたスタジアムの再建はもう少し先になっているが、既にクルセイダーズのゲームは普通に行われている。かつて、NZでのテストマッチは、オークランド、ウェリントン、クライストチャーチ、ダニーデンの4ヶ所で開催された。その後チーフスが出来た関係もあり、ロトルアが加わった。またスタジアムは、オークランドのイーデンパーク以外は、古いものが壊されて新しいものに置き換わっている。しかし、そうした大きな伝統は、今も続いていることを、このクライストチャーチでの久々のテストマッチで実感する。

 この試合は、珍しくジョージア人レフェリーのニカ・アマシュベリが担当する。

 4分、オールブラックスは攻勢からPGを得るが、SOリッチー・モウンガが外してしまう。これに対して8分に、アルゼンチン14番WTBエミリアーノ・ボッフェリがPGを入れて、0-3と先制した。しかし、優勢に攻め込むオールブラックスは、11分に2番HOサミソニ・タウケイアホがトライを挙げ、モウンガのコンバージョンは外したものの、5-3と逆転した。ところが、18分にボッフェリがPGを入れて5-6と逆転する一方、29分にモウンガがPGを返して8-6として、リードは二転三転した。

 その後32分に、オールブラックスは11番WTBケイレブ・クラークがトライを挙げ、モウンガのコンバージョン成功で、15-6とリードしたものの、37分と41分にボッフェリにPGを決められて、前半を15-12と僅差のリードで折り返した。2トライを挙げたものの、反則の多さでアルゼンチンに詰め寄られているので、後半に修正が期待された。

 後半に入って、オールブラックスは反則の多さから攻勢をしかけることができず、45分にFBジョルディ・バレットが60mのPGを失敗した後、47分にモウンガがPGを入れて18-12とするまでが精一杯だった。その後はアルゼンチンが優勢に試合を進め、47分に6番FLフアンマルティン・コンザレスが、オールブラックスのキックオフレシーブのミスを突いてトライ、ボッフェリのコンバージョン成功で、18-19と逆転した。続く57分と66分には連続してボッフェリがPGを入れ、18-25とリードを拡げる。オールブラックスは残り時間に反撃を期したものの、71分に6番FLシャノン・フリッゼルがチームの反則の繰り返しでシンビンとなり、数的劣勢から逆転の可能性は低くなり、そのまま得点できずにノーサイドとなった。

 オールブラックスは、スプリングボクス戦で活躍したSOモウンガがクラブのホームグランドという多くの期待を背負いながら、ゴールキックを外すなどのふがいないプレーに終始してしまった。多くの選手が不調なプレーに終わった中では、LOサムエル・ホワイトロックがベテランらしく奮闘していたが、7番FLサム・ケーンのキャプテンシーには、引き続き疑問が残った。一方のアルゼンチンは、ゴールキックが素晴らしかったWTBボッフェリに加え、NO.8パブロ・マテーラ、2番HOフリアン・モントーヤが活躍し、アウェイでオールブラックスに2勝目を挙げるという歴史的快挙に貢献した。この結果、引き続きアルゼンチンがザ・ラグビーチャンピオンシップの首位を維持している。

 またオールブラックスは、監督イアン・フォスターのRWCまでの続投が決まったものの、この直後のスプリングボクスよりは与しやすいと思われるアルゼンチンに対して、しかもホームゲームで完敗してしまったことは、改めて指導者としての責任を問われることになる。また、フォスター続投を決めたNZ協会CEOマーク・ロビンソンの責任問題も、改めて浮上している。

3.ブラックファーンズ22-14ワラルーズ

 先週のホームゲームでワラルーズに圧勝したブラックファーンズは、アウェイとなるkのゲームで、チームの大黒柱であるSHケンドラ・コックセッジを休養させ、若手2人のSHを起用して、世代交代を試みたが、結果としては不満足なものとなってしまった。

 ブラックファーンズは、試合開始早々からワラルーズに攻め込まれ、7-0とリードされる。その後シンビンになるなどしてチームは停滞してしまう中、PGとトライを返して、7-10とする。そしてワラルーズにもシンビンが出て数的優位となるが、得点に結びつけられずに前半を終えた。後半は、2トライを挙げて22-7とリードして勝負を決めたものの、79分にトライを返され、22-14と7点差でどうにか勝利したゲームとなった。

 ウェイン・スミスの指導により、飛躍的に復活したブラックファーンズだが、SHという中心的なポジションの選手が代わることで戦力が大きく落ちてしまうことは、10月のNZで開催される女子RWCに向けて、まだまだ多くの課題が残されていることを確認する結果となった。

4.女子日本代表29-10女子アイルランド代表

 第一テストマッチの内容と結果から、この試合も悲惨なものになるだろうと容易に予想できた。少なくとも南アフリカとの第二戦で第一戦の修正ができていないようなコーチでは、さらに強敵となるアイルランドに大敗した次の試合で、まともに通用するとはとても思えない。

 この試合は、テストマッチでありながらTMOを置かないという不思議なものとなっている。そもそも、レフェリーは中立国から選ばれているが、アシスタントレフェリー2人は日本人であることも異例であり、テストマッチとしては、第一戦に続きオフィシャル(審判団)の構成に疑問が残るものとなっている。

 結果的に大方の予想に反して、日本代表が見事なリベンジをした。しかし、アイルランドのプレーぶりをみると、第一戦の圧勝で過信してしまったのか、はたまた東京に来て六本木で遊び過ぎたのか、第一戦と比べるとアイルランドの集中力やプレーの精度が著しく落ちていたので、アイルランドの自滅的要素も関係したと思われる。

 試合は、アイルランドがキックオフ早々からの速攻でトライを挙げ、予想通りに先制した。また日本の最初のトライは、スクラムでNO.8がノッコンしたのではないかと思われたものの、これをスルーしてもらったもので、多分にレフェリングに救われている。その後33分まで一進一退が続いた。相変わらず日本のラインアウトは劣勢だが、スクラムとともに徐々に改善の兆しが見られるようになった。

 その後、日本が執拗なディフェンスで耐え忍んだ34分、SH→SO→内返しのパスでFBが抜けて取ったトライは、チームとして素晴らしいものだった。また、このプレーで貢献したSH、SOに加え、キックボール処理の上手い11番WTBは、現代ラグビーにマッチしている選手だと思う。このまま日本は12-5と前半をリードして終わる。

 後半に入り、第一戦同様にアイルランドの猛攻が予想されたが、蒸し暑さのためかイージーミスが多くなり、なかなか思うようにアタックできない。そうした中、48分に日本はトライを加えて17-5とリードし、続く54分、右サイドでアイルランドのノッコンをターンオーバーしたボールを、ロングパスで大きく左サイドに展開し大外のFB松田がフリーとなるボールをつないだ。松田はタックルに来るアイルランドの選手2人を次々とハンドオフで退けて、約40mを走りきる優れた個人技によるトライを挙げた。このトライは、1対1で勝負して勝ったという大きな意味を持っており、海外でプレーすればもっとこの優れた才能が伸びることを期待させられるものなった。

 これで22-5と大きくリードした日本は、58分にアイルランドにトライを返されて22-10と差を縮められたが、64分のトライで29-10とリードを拡げて勝負を決めた。終わってみれば、連敗必至の予想に反して、先週の惨敗したゲームの攻守を反転させたような試合結果となった。日本としては、特に後半に多発したアイルランドのポイント(プレーの拠点)毎のイージーミスに助けられたものがあった一方、スクラム、ラインアウト、ラインディフェンス、ラックサイドのオフサイド対応に進化が見られ、こうしたプレーの安定が結果につながったと思われる。

 10月のNZで開催される女子RWCで日本が戦う相手は、アイルランドと同等またはそれ以上の格上チームばかりであるが、次大会へつなげられるような成果を残すことを期待したい。

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