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<ラグビー>2023シーズン、インターナショナルラグビー関連等(8月第三週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 エディー・ジョーンズの負けた試合後の激しくキレまくった記者とのやりとりや、ジョナサン・セクストンのレフェリー陣に対する罵詈雑言を、日本のメディアは内容を中和した形で紹介するか、そもそもスルーしているケースが目立つ。英語のニュースを見ていれば、非常に過激かつ乱暴な発言をしており、ラグビーと言う「紳士のスポーツ」からかなりかけ離れていることがわかると思うが、それが日本語に翻訳・紹介されている時点でトーンダウンされているのは、なぜなのだろう。

 ラグビーは、38年前にプロ化して以来、金儲けの対象になっている現在では、古き良き「紳士のスポーツ」というお題目は既に形骸化している。そのイメージを未だに維持している日本のラグビー界(とそのメディア)というのは、どうなんだろう?世界でも貴重な存在なのか、あるいは単なる化石か?同様に、フランスの「シャンパン」、明治の「重戦車」というフレーズも、過去の遺物として現状に合わせるべきではないのか。



1.テストマッチの結果


ウェールズ16-52南アフリカ

 南アフリカのジャック・ニーナバー監督は、シヤ・コリシが、一時はRWC欠場も心配される怪我だったのが順調に回復したため、この試合から6番FL兼キャプテンで復帰させる。FBはウィリー・ルルー、SOはマニー・リボック、23番に入ったダミアン・ウィルムゼがFB及びSOをカバーするなど、ほぼベストメンバーとしている。

 ウェールズのワレン・ゲイトランド監督は、SOダン・ビガー(背中)、FBリアム・ウィリアムス(ハムストリグス)が怪我のため、大事を取って休養させた。SOはサム・コステロ、FBにはカイ・エヴァンスを先発させる。22番のリザーブにはマック・ルウェリンを入れた。

 前半から南アフリカが順当にリードした後の33分、ウェールズ陣インゴール右スミに南アフリカのキックパスが通る。南アフリカ14番WTBケイナン・ムーディとウェールズ11番WTBリオ・デイヤーが競り合い、ビデオを見る限り、最初にムーディが取りそこない、次にデイヤーがボールをはたいてタッチに出したように見える。これに対して、南アフリカにペナルティートライが与えられ、デイヤーはシンビンになった。レフェリー陣の判断に対して異論が出ているが、このプレーがウェールズの大敗に影響したことは間違いない。南アフリカは、前半を24-9とリードし、後半は、68分にウェールズに二人目のシンビン、70分に南アフリカにシンビンがそれぞれ出るなど、やや荒れた展開になったものの、52-16と大勝した。

 ウェールズは、SOビガーの代わりにプレーしたサム・コステロが良いプレーを見せられなかった一方、南アフリカは怪我から復帰のキャプテン兼FLシヤ・コリシが良いプレーを見せるなど、RWC本番に向けて満足できる試合をできた。

フランス34-17フィジー

 フランスのファビアン・ガルティエ監督は、6番FLに怪我から復帰のフランソワ・クロを先発させる。20歳のルイ・ビエールビアレイが14番WTBに入り、SOはアントワーヌ・アストワ、FBはメルヴィン・ジャミネが先発し、23番にマチュウ・ジャリベールが入った。リザーブは、FW6人+BK2人となっている。フィジーは、12番CTBセミ・ラドラドラを入れ、キャプテンとしてチームをリードする。

 試合開始からフランスが順当にリードし、21-10で前半を終える。後半もスコアを重ねて34-17と完勝した。負けたフィジーは、51分のトライで24-17と7点差まで迫る時間帯もあったが、実力差を覆すまではいかなかった。

イタリア57-7ルーマニア

 イタリアのキアラン・クローリー監督は、長く怪我で欠場していたFBアンジェ・カプッオッツォを先発させる。ルーマニアは格上相手の腕試しのゲームとなる。

 ルーマニアは8分にLOがレッドカード、46分にNO.8がシンビンと反則が多く、格上のイタリアに惨敗した。イタリアは、怪我から復帰のスーパースターFBアンジュ・カプオッツォが2トライを記録し、RWCに向けて順調な仕上がりを見せた。

アイルランド29-10イングランド

 アイルランドのアンディ・ファレル監督は、息子オウウェンの問題で悩まされる中での母国イングランド戦となった。SOはロス・バーンが先発し、22番にはジャック・クローリーを入れた。不在のNO.8ジャック・コーナンに代わり、23歳のキアン・プレンダーガイストをNO.8で先発させ、ケイラン・ドリスは20番のリザーブに入れた。23番WTBキース・アールズが100キャップを迎える。キャプテンは5番LOジェイムズ・ライアン。

 イングランドのスティーヴ・ボーズウィック監督は、渦中のオウウェン・ファレルを外し、SOの先発はジョージ・フォード、リザーブ22番はマーカス・スミスを入れた。6番FLコートニー・ロウズが、ファレルに代わってキャプテンを担う。先発は、先週のスコットランド戦から6人交代している。

 イングランドは、アイルランドに2トライを先取されて前半を12-3で終えた後の後半52分、NO.8ビリー・ヴニポラが相手の頭に肩が当たるタックルをしてシンビン、その後レッドカードになった。この後イングランドは1トライを返したものの、アイルランドに3トライを取られて完敗した。

 アイルランドは全トライをBKで記録し、現代ラグビーの理想に近いゲームを見せつけた。また、オーストラリア人の14番WTBマッケンジー・ハンセンは、この試合でMOMの活躍をした他、ジョナサン・セクストンに代わってSOをプレーしたロス・バーンも良いプレーを見せ、セクストン不在の心配を軽減している。また、若手のNO.8キアン・プレンダーガイストが、この日好調のFW陣の一人として活躍し、RWCで愉しみな存在となった。

 負けたイングランドは、ボースウィック監督になってから3勝5敗、直近5試合では1勝4敗と酷い結果になっている。また、オウウェン・ファレルに続き、ヴニポラが危険なタックルでレッドカードになったことから、コーチ陣に対する批判が激しくなっている他、前任のエディー・ジョーンズ監督の責任を指摘する声も出ているが、さすがに無理があるだろう。

トンガ36-12カナダ

 トンガは、元オールブラックスFLヴァエア・フィフィタの活躍で完勝した。

ウルグアイ33-13アルゼンチンXV

 Bチームとはいえ、ウルグアイがこのスコアで勝利していることは、かなり実力をつけている結果といえる。

2.RWCの各国スコッド発表等その他のニュース

(1)日本代表スコッド発表


 FW15人、BK15人の30人を選んでおり、33人の正式スコッドから3人足りない。ジェイミー・ジョセフ監督によれば「怪我人の状態を考えて、(締め切りとなる21日までに)追加指名する」ということだが、FWとBKのバランスを考えると、FWの特にLOが一人だけなので、ここに2人、さらにFLに1人を入れると見られる。

 具体的には、ワーナー・ディアンズ、アマト・ファカタヴァ、ピーター・ラブスカフニではないかと推測する。BKは各ポジションともに想定内の人数なので、追加指名はないだろう。キャプテンはFL姫野和樹、バイスキャプテンはSH流大。2019年大会でキャプテンだったマイケル・リーチは、リーダーの重責から離れることとなった。

 ウォームアップマッチのメンバーでありながら、スコッドから外れてしまったのがFB山中亮平で、ジョセフは複数のポジションをこなす選手を優先したと説明しているが、他方でFB野口竜司やSO山沢拓也を除外していることと併せて、ハイボール対応を重視していないことが表れている選出となっている。

 RWC出場回数では、4回目となるのが、HO堀江翔太、FLリーチ、3回目は、PR稲垣啓太、FB松島幸太朗、2回目は、PR具智元、PRヴァルアサエリ愛、HO坂手淳史、LOジェイムス・ムーア、FL姫野、SH流、SO松田力也、CTB中村亮土。最多キャップは、リーチの79で、最小はSH福田健太の0。キャップ数50以上を持つのは、リーチの他には、HO堀江とFB松島の二人だけと少ない一方、SH福田に次いでキャップ数が少ないのは、FL福井翔太1、CTB長田智希3,WTBジョネ・ナイカブラ3,SO/FB小倉順平4,WTBセミシ・マシレワ4とBKに多くなっている。

 (キャップ数を無視した)ワラビーズのエディー・ジョーンズ監督なら選ばないような、RWCの経験値が多いスコッドと言える半面、個々のキャップ数の比較からは必ずしも経験値が多いチームとは言えない上に、BKはSH齊藤直人14、SO李承信9と経験値がワラビーズ同様に少ないため、経験ある重厚なメンバー構成とはなっていないと考える。

(追加スコッド及び離脱選手)

 唯一のLOだったジェイムス・ムーアが体調不良でスコッドから外れた。そのため入替を含めて4名の追加スコッドが発表された。全員FWで、LOワーナー・ディアンズ、LOヘル・ウヴェ、LOサウマキ・アナマキ、FLピーター・ラブスカフニ。アナマキは初キャップとなった一方、これまでのウォームアップマッチで活躍していたアマト・ファカタヴァは、怪我のためスコッドから外れてしまった。

 追加スコッドに共通しているのは、LO専門職ではなく、6番FLもプレーできるユーティリティー性を持っていることが挙げられる。ジョセフが、セレクションポリシーとして説明していた「複数のポジションができる選手」という基準に合致している。

(2)ヌタマックに代わるフランスのSOは?


 フランス代表SOロメイン・ヌタマックが、スコットランド戦で負った左膝靭帯損傷で、約9ヶ月間プレーできないことになり、RWCのスコッドから外れた。フランスの中心は、SHアントワーヌ・デュポンなので、チームにとって致命的とまでは言えないが、やはりSOはチームの要となるポジションでもあり、大幅な戦力低下は否めない。さらにフランスは、PRシリル・バイユも怪我によりRWCでプレーできないため、怪我人による逆風が出ている。

 その中で、誰がヌタマックの代わりにSOをやるのかということが話題になっている。一番手は、代表ではFBをプレーすることが多い、ボルドーのSOマチュウ・ジャリベールだ。しかし、ジャリベールは、自らランで勝負することが得意な選手なので、キック主体のテストマッチには合わないかも知れない。

 次は、26歳のアントワーヌ・アストワで、ラロッシェルで元アイルランド代表SOのキックが得意だったローナン・オガーナ監督に指導されている、SOらしいSOだ。一方、ヌタマックの代わりにスコッド入りする選手として、U20で活躍し、現在モンペリエーでSOをしているルイ・カルボネルが候補になっている。

 困った時のベテラン頼りとしては、ファビアン・ガルティエ監督からヌタマック抜擢のために干されたカミーユ・ロペスがいる。しかし、ガルティエ監督との因縁からは、代表に呼ばれる可能性は低そうだ。その一方、ジャリベール以上にFBを専門としているトーマス・ラモスをSOにコンバートすることも考えられる。さらに、SHのアントワーヌ・デュポンやバプティスト・セランをSOにコンバートすることもあるだろう。2011年RWCのときフランスは、SHモルガン・パルラをSOにコンバートし、SHをディミティリ・ヤシュビリにした前例がある。しかも、この時のフランスはオールブラックスと決勝を戦ったのだから、この選択肢は侮れないものがある。

(3)オウウェン・ファレルは、イエローに軽減され、出場停止処分は無し


 先のスコットランド戦で、相手選手の頭部に当たるタックルをしたため、その場でシンビンになり、その後TMOでレッドカードになった、イングランド代表SOオウウェン・ファレルについては、その後独立裁定委員会で処分が検討されたところ、レッドカードに相当する危険なプレーではなかったと判断され、出場停止処分などは一切課されないこととなった。

(以下私見)
 日本のマイケル・リーチやピーター・ラブスカフニの同様な頭部へのタックルについても、出場停止となる試合数が軽減されていることから、WRとしては、RWCを前にして、各チームの主要な選手(特にWRの中心メンバーであるイングランドの大黒柱であるファレルが対象となったことが契機になったと思われる)が欠場することを憂慮した一方、現在の過剰とも思えるレッドカードの判断を改める方向に進めているものと思われる。

(追加1)トンガの選手たちは、不公平と批判


 トンガの元オールブラックスであるジョージ・モアラが、カナダの選手に対してティップタックル(リフトタックル)をしてレッドカードになったが、その後裁定委員会で10週間の出場停止処分が示された。これに対して、トンガ代表選手たちは、ティア1チームのファレルは罰則無しにされ、ティア2チームのモアラは10週間という長い期間の出場停止処分(RWC全試合欠場となる)にされることに、大きな不満を表明している(その後モアラの良好なプレー歴から5週間に縮小された)。また、ファレルはこれまで3回もレッドカードになっているが、モアラはそうした違反歴がないのにも関わらず処分される不公平さを訴えている。

(追加2)ダブルスタンダードとの批判


 プラネットラグビーでは、日本のマイケル・リーチは過去に違反歴がなく、またビデオを見る限り、日本のHOのタックルによる不可抗力があったように見えるのに対し、違反歴が多いファレルは、ジェイミー・ジョージの自分が相手をファレルの側に向けたとのアピールがあったものの、ファレルは明らかに高いタックルをしにいっているため、これをいきなり無罪にすることは、ダブルスタンダードではないかと意見している。

(追加3)WRは独立裁定委員会に再審議を要求


 ファレルの扱いについては多くの批判が出ていることから、WRは独立裁定委員会に対して再審議を要求した結果、来週ファレルが改めて聴聞を受けることとなった。おそらく、無罪との判定は覆され、2~4試合の出場停止処分になると見られている。もしそうなった場合は、RWCプールマッチへの影響が生じることとなる。なお、父であるアイルランド監督アンディ・ファレルは、息子の問題についてメディアから聞かれているが、具体的なコメントをせずに「うんざりしている」とだけ述べている。

(以下私見)
 やはり、WRに対して強大な力を持つイングランドのスター選手に対する処分は、甘いものにされる一方、日本やトンガのような選手に対しては、過度なくらい厳格にやるという差別があるのかも知れない。

(追加4)ファレルが個人攻撃されている


 イングランド代表監督スティーヴ・ボーズウィックは、ファレルは無罪とされているため、現時点でいつでも出場可能となっているが、混乱した状況を考慮してアイルランド戦を欠場させた。一方、ファレルに対する個人や人格を集中攻撃することは止めて欲しいと訴えている。

(4)エディー・ジョーンズが、空港でオーストラリア記者たちと大立ち回り


 ワラビーズ監督エディー・ジョーンズは、フランスに向けて出発する空港での記者会見で、スコッドから除外されたクエード・クーパーが落ち込んでいるのではないかと聞かれたことに対して、「私は彼に電話したが、でなかった」、「なんでこのことにこだわるのかがわからない、オーストラリアラグビー(界の意見)を反映しているということか」と激昂した。

 さらに記者たちに対して次々と悪態をついている。「オーストラリアラグビーの悪いところはわかっている。そしてその一部はあなたたちだ」、「私の世界のラグビー経験の中で最悪の記者会見をありがとう。良くやりましたね、ほんとにこんなの見たこともない」、「我々はワールドカップに行く、君たちは私たちが勝てないと思っている。酷かったと書けばいいさ。でも、私たちが間違っていると証明してやる」「これほどネガティヴになっているのは信じられない。すべてを否定的に捉えすぎている」、「(記者から若いスコッドの感想を聞かれて)無いね、ほんと酷いものさ」、「私はネガティヴさが好きで、好きで、好きなんだ。はい、続けて、続けて、続けて、続けないさいよ」、「(歩きながら)あなたがたは、自分の顎にパンチを入れるべきだね」。

(私見)
きっとフランスでも大暴れしてくれるでしょうから、今から楽しみです。でも、日本のメディアは報道しないのだろうな。

(5)ワラビーズにNRLからのアタックコーチ就任


 エディー・ジョーンズは、アタックコーチのブラッド・デイヴィスに代わって、NRL(オーストラリアの13人制ラグビーリーグ)のプレヤーとして活躍した実績を持つジェイソン・ライルズを新たなアタックコーチに指名した。RWCまで時間がない中で、ライルズがNRL式のアタックによって、不振のワラビーズをどこまで改善できるかが注目される。


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