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「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第243話:ギターと宿題と。

「どんな教育も突き詰めていけば独学につながる。その意味で独学が唯一の教育であると私は確信している」アイザック・アシモフ


 彼女は仕事へ、娘は学校へ、ぼくはというと家で午前中の仕事を終わらせてから一人で簡素をお昼ご飯を食べ、休む間もなく家中の扉という扉を閉めているところだ。
 窓はもちろん、家の中にある仕切り用の扉もすべて封鎖する。
 そしてリビングのカーテンをひいて、ソファを窓際に寄せて、ぼくはコンポのスイッチを入れた。
 流れてくる音楽。
 それに合わせて部屋から運んできたギターの弦を鳴らす。
 肩に食い込むストラップの重さと体に響くギターの振動が心地よく、マンションに引っ越してきてから初めて弾くギターの音はぼくをもう一度なんでもできると信じていたあの頃へと連れ戻す。

 風が吹いた。

 窓を閉めているはずなのに、どこからか風が吹く。
 ぼくは風の吹く方へと歩き出す。まるで夢遊病のように頭がぼんやりしているけど不思議と体が動いている。閉め切った部屋の中が徐々に広がっていく。それは比喩でも何でもなく確かに広がっていくのだ。遠くから歓声が聞こえる。ぼくはそこでようやく気がつく。

 ここはステージだったのか。

 ぼくは声が出なくなるまで歌って、指が痛くなるまで弾いて、そして涙が溢れるまでステージに立った。

 風はいつしか止む。その考えはどうやらただの思い込みで、大人特有の最も深刻な病気だ。風は止まない。もし風が吹かなくなったのならば、それは風ではなく自分が風をよけているからだ。
 玉のような汗が零れ落ち、時計を見るともうすぐ娘が帰ってくる時間が迫っていた。ぼくは扉という扉を開け放った。新鮮な風が部屋の熱気を攫っていく。コーヒーを淹れる。それを飲みながら、娘が帰るのをただ待った。

 ドアの開く音、一人っきりの空間は二人っきりに。娘の宿題を手伝いながら、ぼくは自分の仕事へと戻っていく。
 でも、こうして目を閉じると、かすかに感じるんだ。科学を超えた見えない力を。

 となりで宿題をする娘をみて、ぼくはふとこんなことを考えた。

「生きているものが成長する姿ほど美しい自然はこの世にないだろう」

 音楽も同じだ。
 科学や勉強では越えられない壁がそこにはある。

 娘はよく宿題を聞いてくる。その度にぼくはまずこう言うようにしている。

「間違ってもいいからまずは自分で答えを書いてみて」

 間違っていてもいい。
 恥ずかしいことなんてない。
 人間の頭の中にはサイエンスでは解明できない見えないものがたくさん詰まっている。
 娘がまた宿題を見せてくる。そこには間違ってい入るがきちんと自分で考えた答えが書かれていた。
 ぼくは娘の頭を優しくなでる。そして娘はもう一度チャレンジする。

  風が吹いた。

 どこか懐かしい風だった。
 娘の手が止まる。答え合わせをする。今度は正解だ。

 娘は今からステージに立とうとしている。
 これから徐々に大人になるにつれて、見る景色が近づいてくる。そのときのために、ぼくたちはいつまでも立ち続けなければいけない。

 いつか同じステージに立てるその日まで。

今日はSFを書くつもりだったのになんだか途中からどうしても軌道修正できなってこんなことに、、、。

でもこんな日があるから人生は面白いんだ。

うん、そうだよね。

そうに決まっている!!

家にいると、

一緒に家にいる以上にきみを近くに感じるときがある。

そんなときはいつももしかしたらきみを今同じことを考えてるんじゃないのかな、と想像する。

一緒に生きているという幸福を、

ぼくは生きている間に忘れたくないんだ。

だからぼくは頑張れる。

今日もきょうとて愛してるよ。

初めての人生、

まさか自分が娘の宿題を見る日が来るとは思ってもみなかったけど、

案外これが楽しい。

自分の手は止まるけど、

それでも一生懸命考えている姿に心打たれるからだ。

生きているということは美しい。

ただ生きているだけで美しい。

それでいいし、

それがいい。

今日もありがとう。

今年も、残り108日。

またね。

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