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皮肉な運命に生かされる、ニュージーランドのうさぎとねずみ

人口より多くの羊がいるニュージーランド。羊は、毛糸や衣類や、お土産で有名なシープスキンブーツなど、余すところなく使えて、その全てがお金を産む。もちろん、ニュージーランドの経済を支えている大黒柱と言える。


他に道でよく見かけるのが、轢き殺されているうさぎだ。どうやら、うさぎと羊が同じ場所に暮らすと、その両者の性質から悲劇を引き起こしてしまうらしい。


うさぎは、地中に巣穴を作って暮らしている為、地面に穴を掘る習性があり、歩いているとつま先が穴に入ってしまうことがよくある。
羊はその穴にはまってしまうと、足を骨折し、牧草を食べられなくなる。なんと羊には満腹中枢がないので、お腹いっぱいと言う感覚がなく、食べ続けなければすぐに餓死してしまうと言う。


うさぎはその繁殖力が強く、それに伴い地面の穴も増え、羊の被害も拡大する。続いて、羊飼いやそこに関わるビジネスをしている人も大打撃を受ける。そう言った理由で、普段はとても温厚なニュージーランド人も、運転中に道路でうさぎを見かけると、アクセルを踏んでうさぎを轢き殺しに行く。


世界には、うさぎが人の食生活に欠かせない国もある。瀬戸内海には、観光客が絶えず押し寄せるうさぎ島がある。ペットとして大切に飼う人もいる。
それが、運悪くニュージーランドという、羊が人より幅を利かせている島国に生まれただけで、生まれたときから処罰の対象となる。


もし、ゴキブリパラダイスのイースター島に、ネズミが上陸できたら、優秀なゴキブリ駆除隊員として、島のヒーローになれること間違いなしだろう。でも、守るべき野鳥が生息するニュージーランドでは、その卵や雛を食べるネズミは処罰の対象となる。そしてその実績は、保護団員によって訪れる観光客に「野鳥を守る為に、これだけのネズミを駆除したんですよ!」と死体公開をしながら、誇らしげに説明される。


私たちはその土地が合わなければ、引越すことができるが、羽を持たず泳ぐこともできない動物にとって、生まれた時から悪役を背負う運命とは、同情せずにはいられないほど皮肉なものだ。

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