ロレーヌが誇る甘い果実の宝石〜ミラベルと王妃プラムのタルト
ミラベル。
なんと心躍る、かぐわしい響きだろう。
ラミパスラミパスとか、マハリクマハリタとか、ムーンプリズムとかと同じ匂いがする、かつて少女だった時代の心をくすぐるワード。
個人的に、シトロン(=レモン)と並び、フランス語で音の響きが好きな果物ナンバーワンだ。
そもそも、ミラベルってなに?
ミラベルは、この時期、ほんの一瞬出回る、黄色い宝石のような果物。
プラムの一種で、フランスはロレーヌ地方の名産だ。
ちなみにロレーヌ地方は、フランスとドイツとの国境付近、クリスマスマーケットと大聖堂で有名なストラスブールがあるあたり。
アルザス・ロレーヌ地方としてセットで語られることが多いが、ヨーロッパ史上、戦争のたびにフランス領とドイツ領を行ったり来たりしていた。
時代時代の政治に都度翻弄されてきた土地なんだ、アルザス・ロレーヌは・・・。
高校の授業で、世界史の恩師(演劇部顧問)が煮えたぎる感情あらわに語っていたのを思い出す。
・・・
さて、時は週末お昼どき、Otto氏とテレビを見ていたら、ニュースでロレーヌ地方のミラベル農家の特集がはじまった。
存在はもちろん知っていたけれど、ああ、あの名前が可愛くて黄色い果物ね、くらいの認識だった、ミラベル。
番組を見ながら、「ロレーヌの人々は、このミラベルにとても誇りをもっているんだよ」と、Otto氏が教えてくれた。
番組はさらに進み、農家のお母さんが、とりたての宝石のようなミラベルからひとつひとつ丁寧に種を取り出し、とてもシンプルなタルトを焼いていた。
何の変哲もない、フランスの家庭で焼かれるザ・ホームメイドタルト。
画面越しにもかかわらず、私にはなんだかそれがとんでもなくキラキラして見えた。
私もミラベルでタルト作る!!
ロレーヌの方々が誇りに思う果物を使って、私もミラベルでタルト作る!!
農家のお母さんタルトパワーはすごい。私のやる気スイッチが一瞬で押された。
早く週明けになあれと願い、やってきた週明け火曜の朝。
酢豚モチベーションを高めるためにトロピカル中華街にいく前に、いつもの近所のマルシェにいった。
ん?あれ、お店がない・・・・。
すっかり忘れていたが、今は7月最終週。フランスでは7月14日の革命記念日を過ぎると、少なくとも8月末までは全体的にバカンスシーズンだ。
いくらCovidの影響があるからと言って、きちんとバカンスをとるのがフランス人なのだろう。からっぽのテントばかりだ。
こりゃ手に入らないかな・・・ああ麗しのミラベル・・・と半ば諦めかけていたら、休みなしで頑張るお店があった。
お店のムッシューに尋ねてみたら、ずっと休まないで毎週出店してくれるらしい。救世主か、あなたは。
救世主のお店にちゃんと売ってた、黄色のミラベル。
早速袋にいれて、調子に乗って他の種類のプラムも買った。
紫のプラムは日本でもよく見かける普通のプラムだと思う。
一方、緑のプラムは、
「Reine-Claude (レーヌ・クロード)」
直訳:「クロード王妃」
宝石に王妃に、あなたたちはいったいどこまで気高いんだプラム…。
・・・
そして夕方、早速タルトを作ってみることにした。
プラムって甘酸っぱいというか酸っぱいイメージがある。だけどミラベルは、ほぼ酸味がなく、甘い。
無意識にそのままつまんでいたら食べすぎたようで、若干、大きさに対してミラベルの量が足りなくなってしまった。なので、緑色の王妃プラムも使うことにした。
ミラベルもアーモンドクリームも甘いので、土台はそこまで甘くなくてもいっかと思った私。キッシュや塩辛いタルトで使うパートブリゼの生地に、砂糖を多めに入れてみた。
ミラベルと王妃のプラムのタルトの材料
・直径22cmの底無しセルクル型1台分。
底ありでも全然OK。というかむしろそちらの方が失敗しにくいはず。
・アーモンドクリームは、記憶力節約のため、「卵の分量に合わせて、他の材料は全部同じ分量」で作るようにしている。邪道極まりないと思うが、あくまでシロウトのつくる家おやつなので、その点はご了承いただきたく。
【土台】当然ながら、お好みの生地を買うと早い
・小麦粉:150g。薄力粉だけでもいいと思うけど、私は薄力粉(T45)120g、強力粉(T65)30gの割合で混ぜた。
・塩:小さじ1/4。1グラムちょっと。
・グラニュー糖:5g
・バター:63g。細かい角切りにして冷やしておく。
・全卵:1個
・水:大さじ2
【アーモンドクリーム】
・全卵:1個。大体45から65gくらい。
・砂糖:全卵の重さと同じ量
・バター: 〃
・アーモンドプードル; 〃
・ラム酒:大さじ1
【デコレーション用プラム】
お好みで。普通のプラムでもよいかと。
・ミラベル:25個くらい
・レーヌ・クロード(緑プラム);10個くらい
ミラベルと王妃のプラムのタルトの作り方
(※)死ぬほどくさいマロワールのタルトで使った生地とタルト土台の作り方は同じなので、こちらも参照いただけるとよいかなと思います。
1、小麦粉、塩、砂糖を手でかき混ぜて、そこに冷やしておいたバターを投入。スケッパーやゴムベラなどで切るように混ぜる。
2、ある程度バターの塊が小さくなってきたら、両手を使って砂をこするように混ぜる。数分すりすりして、パルメザンチーズのような状態にする。
3、卵をかき混ぜて、水と混ぜるたものをこの少しずつ加えて、生地をまとめていく。4分の3くらいでいい感じにまとまる。残りは焼く前に生地に塗るのでとっておく。
4、生地がまとまったら、ラップでくるんで冷蔵庫で1時間以上休ませる。
今日の我が家は愛犬の毛刈りタイム。
5、1時間後、冷蔵庫から取り出した生地を、バターを塗った型に合わせて伸ばし、型にしきつめる。クッキングシートを敷いた天板に型ごとのせ、フォークで適当に穴を開けて、全体に3で余った卵液を塗り、170から180度のオーブンで15分くらい空焼きをする。
6、土台を空焼きしている間に、アーモンドクリームにとりかかる。ズボラな私の適当術で、まず卵の重さをはかり、
44g、軽め。
バター、砂糖、アーモンドプードルも同じ分量はかっておく。
7、バターと砂糖をボウルにいれて、泡立て器でよくすり混ぜる。すり混ざったら、ほぐした卵を少しずついれて、都度よくかき混ぜる。
泡立て器に注目。使いすぎ?なのか、なんと切れてしまった・・・
8、アーモンドプードルを入れて、さらによく混ぜ、仕上げにラム酒を適量加えたら、そのままなめても美味しいアーモンドクリームの出来上がり。
9、デコレーションの準備。ミラベルとレーヌクロードを半分に切って、種をとりだしておく。中はこんな感じ。簡単に種はとれる。
同じ大きさくらいの直径の型にシミュレーションをしておくとよい。
こう並べるのはかわいい感じかな。でもなんだか宝石ってわりには芸にかける。
ってことで、こんな感じに。
9、空焼きした型にアーモンドクリームを流し入れてまんべんなく伸ばし、その上にシミュレーション通りにプラムをのせていけば、完成。
今日の縁取りは、あまり生地が余らなかったので、ただ丸くくり抜いて縁にのせてみた。縁に卵液を塗るのを忘れずに。
10、170度のオーブンで50分くらい焼いたら、できあがり。
皿好きによる、お皿リンクタルト
見事に宝石プラムたちは沈没気味になってしまったが、これは焼き菓子ならではのご愛敬。とっても美味しいタルトに仕上がった。
なにより、単なる思いつきだけど、私が愛してやまないお皿、アスティエ・ド・ヴィラットのアデライドにぴったりな縁取りができたのがうれしくてたまらない。
普通こういうタルトはサブレ生地だとOtto氏に言われたけど、私は若干塩気のあるこの生地(ブリぜ生地)のほうが好み。どこまでも甘辛系だ。
ロレーヌの方々が誇りに思うきもちを、少しだけ理解できた気がする7月最後の週。
今後、毎年の楽しみにしよう。ミラベルの季節。
生地を休ませている間、洗面所で飼い主と大乱闘の末、
ボディも足も綺麗にさっぱりした年中サマーカット男子
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