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花のバブル時代の残り香〜いちごとフェタ

真夏のような暑さの続く週真ん中の昼下がり、冷蔵庫を覗いて目が合ったのは、いちごとフェタ。
いちごはOtto氏生誕祭の特大ババ・オ・ラムで使ったあまり(いつか記事にしたい)、フェタは先日のスーパーヘルシーサラダに使ったあまりだ。

瞬間風速的に脳裏に蘇る我が駐在時代、花のバブル時代の思い出。

30代一歩手前でフランスに来た私は、最初のアパートに死ぬほどアリが出て引っ越しを余儀なくされ、後遺症でしばらくの間、黒いつぶつぶが食べられなくなった。ゴマとか。それに、海外に住んだことなどなかったし、フランス語もできないし、仕事も慣れないし、最初の半年はそれこそ大変だった。 

でも、30代にのった途端、何かが吹っ切れたようにフランス生活を謳歌するようになった。

その頃の私の胃袋はアスリート並み、食に対する飽くなき好奇心から、美味しいレストランがあると噂を聞きつければ東奔西走、気に入ったら週1ペースで通い詰めた。 必然的に可処分所得は半分以上外食費、あの頃は本当によく食事処に投資したものだ。 今となってはどこにいったか失念した自作のエクセルレストランリストは、帰るときにはゆうに200軒を越えていた。

特に、ひょんなつながりで知り合った、駐在同期のAちゃんという心強いパートナーがいた。持つべきは胃袋の合う友達、たまに国境も超えてみたりして、本当に美味しいものを一緒によく食べた。 

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AちゃんとともにパリのファミリーD夫妻とご一緒させてもらった  
リヨンの総本山にて

私が懇意にさせてもらったパリで活躍する日本人シェフは、どの方も共通してお世辞抜きでとてもパワフルで、ユニークで、プロフェッショナルで、異国で生き抜く芯の強さを持っていた。その中でも足繁く通っていた日本人シェフのフレンチレストランTOP3の1つが、Restaurant TOYO

胃に優しく、目にも優しく、シェフの人柄を体現したような繊細であたたかい和の香りのするフレンチは、体にやさしいものが食べたい時、日本から家族親戚が来た時、特別なイベントの時の定番だった。たまたま、どんなに酔っ払っても這ってでも帰れる距離に住んでいたこともあり、それはもうよく伺ったものだ。

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死ぬ前に食べたいもののひとつ、TOYOのタルタル

一晩で10皿くらい、美しい料理たちがひとつの物語のように供されるので、当時のカメラロールはTOYOさんの料理であふれていた。仕事が忙しすぎて心が荒み始めたときは、カメラロールを眺めて気持ちを落ち着けていたくらいだ。

物語のはじまり、アミューズとして供される定番が、いちごとフェタだった。
偶然に冷蔵庫でみかけたこの組み合わせがとても懐かしくなったので、うちにあるものをつかって真似してみることにした。

【材料と作り方】

1、好きな分だけいちごを洗ってヘタを取って、半分に切ったりそのままだったりで、ランダムにお皿に並べる。

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2、フェタチーズを、グレーターや削り器などで上から削って、ふんわりとのせる。

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3、はちみつとオリーブオイル、ヴィネガーと塩胡椒を混ぜて簡単なドレッシングを作り、上からかける。

4、葉っぱを周りに散らして、出来上がり。
今回は、うちにたまたまあったルッコラを使った。TOYOさんの葉っぱは特別な葉っぱだったような気がするが、シロウトにはルッコラが限界だ。

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素材の良さがダイレクトに出るので、あまりもののいちごと安物のフェタではTOYO様の足下にも及ばないけれど、花のバブル時代の残り香くらいは感じることができた。

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本物のいちごフェタ


あの頃たくさん目に刻み込んだ美しい料理の数々と、舌で覚えた味は、今のおうちごはんに3ミリくらいは活きていると思いたい。


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花の色は うつりにけりな いたづらに

( *写真は、世界一好きなTOYOさんのちらし。宝石ちらしと呼んでいる)



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