叱る依存が止まらない後編~なぜ叱ってしまうのか~
「叱る依存が止まらない」(発行 紀伊国屋書店/著者 村中直人 氏)のご紹介の後編です。
前編では叱るの定義と、叱るには効果がない理由をお伝えしました。
前編 「叱る依存が止まらない」前編~叱るには効果がない~
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前編のおさらい
叱られてネガティブ感情を与えられた人は「防衛システム」が働き、戦うか逃げるかしか考えられなります。
その結果、次のようなすれ違いが生まれるのでした。
脳の冒険システム
脳には、防御システムとは真逆の働きをする冒険システムもあります。
食べたい、寝たいという根源的な欲求、人とのつながりに対する欲求などを報酬と感じ、学びや成長につながると考えられています。
冒険システムと防御システムは、同時には駆動しません。
つまり、叱られて防御システムが働いている時間が長ければ長いほど、学びの機会が失われているのです。
喜びを感じる意外なこと
冒険システムでご紹介した報酬ですが、他にもいくつか「人はこれで報酬(快感情)を得られる」と分かってきている事柄があります。
まずは、苦痛からの回避。人間は何かを得たときだけではなく、苦痛な状況から逃れられたときにも快感情を得ます。
次に、処罰感情の充足、ルールを破った人に罰を与える行為を報酬だと感じるのです。さらに、ルールとは無関係に、相手にネガティブ感情を与えることそのものが報酬になっているとも考えられています。
依存への恐ろしいループ
私はここを読んだ時、ちょっとゾッとしました。
ルールを破った人を罰する行為を人は「快感情」として受け取ってしまうというのです。
しかも、苦痛からの回避も報酬になる…。
こんなケースを想定してみましょう。
動画は30分と親がルールを決める
↓
30分経っても子どもが動画を見ている
(親は自分が決めたルールを破られて苦痛)
↓
子どもを叱って動画を止めさせ、謝らせる
(親は、苦痛からの解放と処罰感情の充足を得られる)
↓
子どもは防御システムが働いて謝っただけなので、学びや成長もなくまた30分以上ゲームする
↓
親は、ルールを破られたことに苦痛を感じ、先ほどより強く叱り、処罰感情が充足される
~以下略~
このまま続くと、どんどん叱り方が激しくなっていく未来が予想されます。
叱られた側への影響
では、叱られた側の脳内で何が起きているかも見ていきましょう。
激しく叱られた経験は、記憶に残りやすく消えにくいという性質を持っています。
これは、捕食者に襲われた状況を鮮明に覚えてすぐに思い出せるようにすることで、生存確率を上げるための本能です。
叱られ続けた人は、防御システムが働く時間が長い分、学びや成長の機会を失い、強いネガティブ感情をよく思い出すことになります。
結果として、自己肯定感や主体的に学ぶ力は育ちにくくなるでしょう。
叱る依存にならないためのコツ
最後に、本の中で紹介されていた叱る依存にならないコツをご紹介します。
まずは、ストレスを溜めないことです。
同じ状況でも、時間と心に余裕があるとおおらかに対応できるという経験は誰しもあると思います。少なくとも私はよくあります。
また、叱るには効果がないどころかマイナスの影響が大きい上に、依存しやすいと知ることも大切です。
この記事を読んでくださった方は、依存へのリスクを少し減らせたと言えるでしょう。
書籍そのものを読んでいただければ、依存へのメカニズムや、「愛の鞭があったからこそ成長できた」という言説への反論など、より理解を深めることができます。
誰かを育てたり指導する立場にあるすべての人に、読んで欲しい1冊でした。
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