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【日本一周 九州編5】 素敵な税金の使い方


 九州国立博物館に向かう途中で、偶然にも「牧のうどん」の横を通過した。ここはちょうど1年前の青春18きっぷ旅行で、ハガキ職人仲間の方々に、うどんをご馳走して頂いた思い出深いお店である。(詳細はまたいつか)

柔らかいうどんが名物

 そんな「牧のうどん」を眺めていると、自然と当時の思い出がよみがえってくる。「初対面だったけどすごく親切にしてくれたな」とか、「別れ際にイチゴ大福となんばん往来を持たせてくれたな」とか、車窓越しに流れていく街並みを眺めながら、当時を反芻した。

 青春18きっぷ旅行でも訪れた九博。しかし当時は時間的な都合で内部の見学は叶わず、全面ガラス張りの立派な外観から放たれる「せっかくなら見ていきなよ」と、言わんばかりの誘惑に後ろ髪を引かれつつここを後にした。それから今日までの間に東博と京博を巡り、いよいよ国立博物館の制覇も視野に入ってきた。行ったとも行ってないとも言い難い九博にケリをつけるという意味で、この地にやってくることは急務なのであった。

 九博の魅力を語るにあたって、展示と建築の2つの側面からアプローチする。展示に関しては、同心円状に広がる展示室を反時計回りに周ることで、旧石器時代~江戸時代の日本とアジア各国の文化交流の流れが見学できるようになっている。しかし、展示室内は全面撮影禁止になっていたため、どんな展示が展開されていたのかは忘れてしまった......

 ひとつ覚えていることと言えば、展示を見漁る明石の集中力の凄さだ。ジャンル問わずいかなる展示も、それに関する前提知識があればあるほど楽しめると思っている。その点でいえば、九博の常設展で扱う内容はもろ日本史Bの範囲と重なるため、理系出身の明石が見てピンとくる展示はあまりないように思えたが、彼の様子を見てみると十分に見学を楽しんでいるように見受けられた。

 (当の自分は受験に受かるためだけに日本史を詰め込んだタチなので、かえって日本史嫌いになり、展示も途中で飽きてしまいました、)

 「見学」と一口に言っても、通史的視点で見るのか、美術的視点で見るのか、文化的視点で見るのかなどによって、趣は変わってくる。自分の嗜好に合う見学スタンスを見つけることが、楽しい見学をするうえで肝だ。さらに一緒に行く相手がいるのであれば、その人と感想を共有しあうのも大切である。他人視点の感想や意見には、展示物に並ぶくらい興味をそそるものがあったりする。幸いなことに、私はその相手と出会うことができたので、今後も彼と一緒に文化施設をゆるりと巡っていきたいと思う。

 さてさて、だいぶ話が脱線してしまったので元に戻さねば。九博と言えば、その建築美にも触れておかなければならない。緑豊かな丘陵地帯に建つこの建物は、周囲の自然に溶け込むような工夫が施されている。建物全体のフォルムは、女性の労働率を示す折れ線グラフのM字カーブのように、真ん中にくびれをもち、見た目に柔らかい印象を持つ。

 ファサードは黒川紀章が手掛けた新国立美術館のように、全面ガラス張りになっていて、表面はマジックミラーみたいな反射を放つ。ガラスでありつつ内部が見えないっていうのが、神秘的な感じでいい。大きい建物だけど存在感が前に出すぎることなく、いい塩梅で周囲との協調が取れていて、個人的には国立博物館で一番グッときました。

新国立美術館

 内部は広く天井も高いため開放感が抜群だ。「自然との調和」のスタンスは内部設計にも通底しているようで、壁面や天井裏にもふんだんに木材が使われている。開放的で温かみのある空間だ。館内のエスカレーターやエレベーターは、ひっそりと隅に縮こまるどころか、意匠の一部として敢えて大胆に設置されている。全体的に和モダンな空間で、こんな雰囲気のコワーキングスペースが家の近くにあれば、作業も捗りそうですね。


※余談

 ミュージアムショップのガチャガチャで「埴輪と土偶+土器&青銅器ガチャ」を見つけた。日本史の教科書ので見たことのある、三角縁神獣鏡や銅鐸や火焔型土器などがラインナップに並ぶ。私自身こうした類のガチャには目がなく、中学の修学旅行で京都に行ったときは、仏像ガチャを大量にまわして、全6種をコンプリートしたものだった。ここでも一瞬財布のひもが緩みかけたが、これから8日間持ち運ぶことを思うと、邪魔になる気がして、おとなしく1回だけ回すことにした。

 狙いは「縄文のヴィーナス」ぽってりした体格が愛くるしい一体である。心底欲しかったから本気で念を込めて回した。が、吐き出されたのは馬埴輪。内心一番微妙なやつが当たってしまった、と思ったけど表情に出したら明石に冷やかされる気がして、「これもあり!」みたいな態度を取った。

 しかしまじまじとコイツを見ていると、徐々に素朴で柔和な可愛さの虜になっていき、なんだかんだ旅行を通して愛でまくった。

明石と尾道と馬埴輪。

尾道

・メンバー
明石、尾道

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