見出し画像

ブラック企業が社会問題と認識されるようになり久しいです。ブラック企業は、特に労働裁判や、またそこで違法性認定の判決が出るなどして、実態が知られるようになりました。しかし表面化するのは氷山の一角とみられます。

「ブラック企業」について、厚生労働省は定義していませんが、一般的な特徴として、以下のように示しています。

① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う

これに加えて、労働問題で裁判になった企業の特徴が、弁護士ドットコムの記事で、労働裁判を手掛けてきた弁護士視点により述べられています。

・若者の離職率が異常に高く、入社して1年持たずに新人が辞めることも珍しくない。

・求人段階で本当の業務内容を詳しく説明しない。

入社前の情報集めで公式に公開されている離職率が高い(3年以内30%以上)または離職率を公開していないとか、求人で業務内容の説明があまりにも抽象的で「夢」「希望」「感動」などのやりがいに関した言葉ばかりアピールしている場合は注意。離職率や業務内容を詳しく説明すると人が集まらなくなる、という事情があるのかもしれません。「数字に関する質問はお控え下さい」と言われるキャリア説明会も、何か理由があるからなのかもしれません。

給与水準は、「激務薄給(月給10数万円台で月数十時間残業など)」、または「他社と比べての給与水準の高さと引き換えに、極端な結果を求める傾向や過度の選別が伴っている」のどちらかに分かれます。

ネット検索で社名と「裁判」「パワハラ」「うつ病」「リストラ」などのキーワードを入れてみるのも有効です。

裁判になった事案の内容は、人事の言っていることや採用広告などでPRされている内容と全く食い違うものだったりします。人事は基本的に、とても人当たりのいい人たちです。しかし係争事案について、人事に尋ねたところで説明されることはありません。

ある企業でのこうした労働問題が明るみになっている時にありがちなのが、「社員一方の言い分だけでブラック企業と決めつけるなあ」と圧力がかけられること。頭ごなしに「社員の言い分だけで」と、社員の言い分を聞くに値しないもの、信じるに値しないものであるかのように扱い、「企業側の言い分を信じろ」と強弁を張り、意識的あるいは無意識に問題をなかったことにしようとする人がいます。こうした人から見えてくるのは、小さき声を拾うことや、コンプライアンスや社会的責任の問題が山積みしている実態から目を背け、企業の利益のみが優先され守られるべきとする相も変わらぬ姿勢です。これぞブラック体質といえます。

企業側の論理は信じられるものなのか?賢明なのは、企業公式の発信と、社員の口コミなど非公式な形での体験談、双方の発信を見て判断することです。

問題企業の口コミサイトをみると、係争事案にならなかったとしても同じように感じている人は何人もいるとわかることもあります。ネガティブ口コミが少ないこともありますが、それは必ずしも安全を意味しません。企業によってはネガティブ情報が広がることを懸念してか、社員に転職口コミサイトへの書き込み禁止を迫るところもあるといわれますので注意。

口コミの場合は匿名ゆえに第三者が事実確認できないところが弱みであり、係争事案の場合は現時点で判決が出ていないゆえに第三者が違法性を確認できないところが弱みですが、では企業側の言い分は信じられるものなのか?裁判になったところで違反認定の判決さえ出されてなければよい、とするのはいかがなものでしょうか?

問題企業は、立派な採用広告を打ち出しながら大量採用を続けていることがあります。その背景には常に人が辞めるという事情があったりしています。高い離職率を問題と捉えていない、他社に比べれば悪いものではないと捉えている場合もあります。

入社した場合、問題が広がる時には、実害を被ったり巻き込まれたりするだけでなく、自分が加担者となることもありえます。一社員として、一度広がった問題を解決し、組織を変えていくのは非常に難しく、抵抗感がさしたら転職を検討するしかないことが大半とみられます。

人生の全体重を預け、染まり切ってしまえば、本人に自覚はなくても「事実認識の歪み」「無茶な働き方、働かせ方の容認」「コンプライアンスや社会的責任の軽視」などの思考のくせがついてしまい、次のキャリアにおいても周囲に影響を広げてしまうかもしれません。組織と個人はできるだけ分けたいのですが…

企業を見極め、労働トラブルを回避する方法はあります。一方で、好条件の就職転職の選択肢が少なく、問題を知りながら入社する人、そこに留まらざるを得ない人もいます。最近はブランディングやPRが非常に高度になっている企業もあり、問題なのかどうか社員でも見極めるのが難しいケースもあります。

「当初は、『そうはいってもこの会社はいい会社』とスルーしていた」と、のちに訴えを起こした人が語ることまであります。

入社意欲が高まると問題に気付いても「自分は大丈夫」と思って入社する人もいますが…。

厚生労働省の解説サイトでは、「このような企業に就職してしまった場合の対応としては、第一義的には会社に対して問題点の改善を求めていくことが考えられるが、新入社員が単独で会社に問題点の改善を求めて交渉等をするのは現実的には非常に難しいことから、問題点に応じて、外部の関係機関や労働組合に相談することも有効な手段」とまとめられています。

収録マガジン



この記事が参加している募集

仕事について話そう

よろしければサポートお願いします。サポートは100円、500円、1000円、任意の金額の中から選ぶことができます。いただいたサポートは活動費に使わせていただきます。 サポートはnoteにユーザー登録していない方でも可能です。