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第四章 フィットネスインストラクターとして②初めてのレッスンを終えて

 紀香のプログラミングしたとおり、三十二カウント間で一つのパターンの動きを次々と繰り出す完成形にうまく持っていくことができた。

「とても緊張しました。でもみなさん、私の初めてのレッスンに協力していただき、ありがとうございました! 今日は思い出の一日です」

 紀香がそう締めると、客は一斉に拍手した。紀香が回り込んでスタジオのドアを開けると、客はみな、ありがとうございます、と言って出て行った。

「今日初めてなの? 全然そんな感じはしなかったわよ」そう言ってきた女性客もいた。

「ちゃんと目を見てあいさつできるし、いいわよねえ」

 スタジオを出た女性客数人が、そんな会話をしていた。すると、「あれあれあれ、モップの場所がわからないよー!」という甲高い声が。

 どうしたのかと、女性客のひとりは声のした方に行った。すると紀香がモップを探しているが、見付からずに困っているのがわかった。シャイニングのスタジオレッスンでは、インストラクターが終了後にスタジオ内のモップがけをすることになっている。女性客は、「あなた、落ち着いて」と言ってモップの場所を手で差した。スタジオの外だった。これで紀香は落ち着きを取り戻し、モップを手にして床を拭き始めた。女性客は、「にぎやか過ぎるのねえ」と言ったのだった。


 レッスン後、紀香はスタッフルームに行った。さあ、クラブの反応はどうだろう。

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仕事のつまづきで発達障害に気付き、エアロビクスインストラクターに転身し成長していくヒロイン。周囲の人間関係のダイナミクスにどう向き合っていくか?

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