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「直感」文学

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「直感的」な文学作品を掲載した、ショートショート小説です。
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#超短編

「直感」文学 *2つ目の睡眠*

「直感」文学 *2つ目の睡眠*

 2度寝って、なんでこんなに気持ちいいのだろう。

 と、僕はいつも思う。

 2度寝の気持ち良さを、1度目の睡眠に使うことは出来ないのだろうか、と思ったりしてみたり。

 でも、その快感を一度目の睡眠に味わうことは出来なかった。

 何度それを試みようと思ってみても、それはそう容易いことではない。

 だから僕はいつも、目的の時間よりも15分早くに目覚まし時計を鳴らし、”確信犯的な”二度寝をする

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「直感」文学 *遠回しな口実*

「直感」文学 *遠回しな口実*

 「風邪をひいたの」

 彼女からの電話を取ると、唐突にそのように告げた。

 「あ、うん、え?大丈夫?」

 僕は唐突にそのように返し、どの動向を伺う。

 「ううん、風邪をひいたの」

 彼女はそれを繰り返すばかりで、それ以上先に会話を進めようとしない。

 「あ、うん……」

 僕は曖昧な返事を返す。核心から遠ざかるように、遠ざかるように。

 「え?聞こえてる?私、風邪をひいているの」

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「直感」文学 *どこにもない音楽を*

「直感」文学 *どこにもない音楽を*

 「多分、俺の思考回路って一般的なんだよ。ものすごく一般的で、メジャーなんだけど。俺はそんな自分がすごく嫌なんだよな。……俺はそれを一生懸命に避けようとしてる。そうならないように、意識していないと、そうなってしまいそうで」

 音楽を創り出すものの気持ちは、僕にはもちろん分かるはずもない。ただ、もしかしたら創作をする人の気持ちは分かるかもしれない。

 「マイノリティを一番左側に持ってきて、マジョ

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「直感」文学 *10月の憂鬱*

「直感」文学 *10月の憂鬱*

 10月は、私の中で一番気分が落ち込む月だった。

 月の流れがどうだとか、肌寒くなる季節だからとか、人肌恋しくなる季節だからとか、そんなことはどうでもよくて、

 ただなんとなしに、……そう、理由もなしに、

 ただ寂しさをひしひしと感じてしまう月なのだ。

 
 「10月はいつだって滑稽だからよ」

 母の言葉は何の説得力もなく私に投げかけられて、そしてそこにどういった意味があるのかも分からな

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