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「直感」文学

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「直感的」な文学作品を掲載した、ショートショート小説です。
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2017年9月の記事一覧

「直感」文学 *大きな鏡*

「直感」文学 *大きな鏡*

インターホンがなったから、僕はそれに呼ばれてドアを開けた。

「お届け物でーす」

と言って宅配員のお兄さんが持って来たのは平たく、大きな箱だった。

「え?」

と声を漏らした僕に、「サインお願いしまーす」と元気よく答えるお兄さん。

宛名には、「瑞樹」と名前が書かれていて、僕は納得した。

「鏡を買ったの。大きな大きな鏡。今度届くと思うから」

そう言っていた彼女の言葉が思い出され、僕はお兄さ

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「直感」文学 *嵐と過ごして*

「直感」文学 *嵐と過ごして*

 嵐が来た。

 雨風が吹き荒れるそこを、私はただ家の中からぼんやりと眺めていた。

 窓を叩きつける雨に、時折恐怖を覚えながらも、私はそれを好奇心だと感じていたようだった。

 「ねえ、雨いつ止むのかな」

 同じ部屋にいたミノリちゃんは私にそう尋ねたけれど、

 「うーん、わかんない」

 という返答が、ミノリちゃんのその疑問を解決したとは思えなかった。

 「どうしよう、止まなかったら」

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「直感」文学 *今年が始まる*

「直感」文学 *今年が始まる*

 ”あけましておめでとう”

 この日だけ、連絡をくれる人が何人もいる。

 彼ら、彼女らが今、どういった心持ちで、どういった身なりをし、どういった生活を送っているのか。

 それらを僕は一切知らない。

 そこには決められた挨拶を交わす、僕たちの関係性が成り立ち、そしてそれらが僕たちを支えてもいる。

 ”あけましておめでとう”

 僕はメールを返し、スマホのスリープにする。

 ただこれだけの

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「直感」文学 *終わりが近づいて、始まりが近づいて*

「直感」文学 *終わりが近づいて、始まりが近づいて*

 「いつだったか……、とても綺麗な景色を見たような気がするの。ふっと沸いた光が私を包み込んでいくような……、そんな風景だったと思う。でもそれがいつの頃だったか、どうしても思い出すことが出来ないの」

 ミチルと僕は一枚の毛布にくるまりながら、その始まりを待っていた。今はまだ静寂の中に包まれたその時だけど、それはやがて暖かく迎えてくれるはずだ。

 「それも、今みたいに日の出を見た時のこと?」

 

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「直感」文学 *白い息は何を示した?*

「直感」文学 *白い息は何を示した?*

マグカップに注がれたコーヒーから湯気がたち、それらは瞬く間に消えていってしまった。

寒空が続く冬の朝、どこまでもグレーな色が続いている。

私は体を震わせて、口からは白い息が漏れた。

窓に付いた水滴は、何を示し、何を与えてくれるのだろうか。

そう思っても、与えてくれるものなんて何一つなくて、私はただその場所で静かに息を潜めているだけに過ぎない。

「冬はあとどれくらいで終わるだろうか」

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「直感」文学 *そのままの形見*

「直感」文学 *そのままの形見*

ずっと前に届いた荷物を、僕はまだ開けていなかった。

それ小さな段ボールに入れられ、ガムテープでしっかりと止められていた荷物。

「お父さんの部屋、片付けてたらね、出て来たのよ。だからあんたに送るわ。お父さんずっと大切にしてたみたいだから」

母さんはそう言って、電話を切った。

父が亡くなった数日後の事だ。

あれからもう三年が経つというけれど、僕にはまだ父がいなくなったという実感がない。

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「直感」文学 *抱える。走る。*

「直感」文学 *抱える。走る。*

 雨が降った。

 何の予兆もなく、何の約束もなく、全く僕の許可なしに、雨はあまりにも強く降り注いできた。

 傘を持っていなければ、もちろん合羽なんてものも持っていない。

 僕にはその雨を避ける手段がなく、ただ無防備にそれらを受け止める(もしくは受け入れる)しかなかったのだった。
 先ほど書き上げたばかりの絵を守ろうとキャンバスを抱えて、ただ雨の中を急いで走っていくけれど、走ればその分だけ顔は

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「直感」文学 *魔法の言葉*

「直感」文学 *魔法の言葉*

 それはほんの一瞬の出来事だった。

 右手に持ったハサミは、その口を閉じて、私の指の腹を浅く切りつけた。

 薄皮がパックリと開き、じんわりと熱を感じてから痛みを覚えた。

 赤い血がゆっくりと流れ出し、それはひたすらに指を濡らす。

 「あーもう何やってるの」

 私の傍で、シンジはそう言った。いや、私だって別にわざとそうしようとした訳じゃないよ、ただ、たまたまハサミの先が私の指に揺れてしまっ

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「直感」文学 *あの道の、あのお店。*

「直感」文学 *あの道の、あのお店。*

 この道を通る度、私は目を奪われてしまうのだった。

 実際に人がいるのかどうかも分からない、小さな洋服店。

 ショーウインドウには裸のマネキンが置かれ、いつだって服を身につけていない。外から見る限りでは店内は暗く、その中に店員はおろか、お客さんの姿だって見つけることは出来そうになかった。

 ただいつだって開け放たれているそのドアが、かろうじてお店が営業している様を伺わせていて、それを見た私は

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「直感」文学 *ある寒い日の一片*

「直感」文学 *ある寒い日の一片*

「寒いね」

マナは体を小刻みに震わせながら、僕の隣でそう言った。

厚手のストールを首にグルグルと巻いて、今にも顔が埋もれてしまいそうだ。

それ程ストールに巻かれていても、まだ寒いのだろうか。

「ああ、今日はまた一段と冷えてるよな」

そう言う僕もまた、体を震わせていた。

埋もれる程ではないけれど、僕だってマフラーを巻いている。
しかしそんなマフラーなど、冷えを凌ぐほんの一片の救いにしかな

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