鮮血の薔薇―ピルス前日譚―
「母さん!」
少年ピルスは、ドアもノックせずに母親がいる執務室に押し入った。彼の眼差しは輝いており、その眼差しは母親の顔に向けられる。
「いけないわ、ピルス。ドアはちゃんとノックしませんと」
「そ、そうだった、ごめんなさい。そんなことより、ほら見てよ」
母親の忠言は素直に聞き入れつつも、ピルスは持っていた紙切れを見せる。100点と花丸が大きく書かれたテストの答案用紙だった。
「今日のテスト、完璧だったんだ! 凄いでしょう?」
「凄いわね、ピルス。クリンゴ家の息子として誇らし