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特許担当者不在の中小企業の5つの弱点

中小企業による特許の出願件数全体の出願件数に占める割合が増加しているようです。特許庁の統計データに関するニュースを紹介します。業界にとっては明るいニュースだと思います。

20年の国内の中小企業の特許出願件数は3万9789件で全体の17・5%を占め、比率が2年連続で過去最高となった。コロナ禍にもかかわらず件数と比率ともに増加傾向にあることを示した。・・・19年に制度を拡充させ運用が始まった中小企業向けの特許料金の減免制度や手続きの簡素化などで、中小の特許申請数が伸びたとみられる。

<引用:『中小企業の特許出願数、コロナ禍でも増加傾向の理由』 2021.7.22 ニュースイッチ>

この傾向は今後も続いていくと嬉しいです。やはり中小企業ががんばってこそ日本の産業が盛り上がるはずだし、これに伴い中堅企業や大企業も成長しやすいからです。

ただ中小企業には特許担当者がいないことが多いので、知らなかったでは取り返しのつかないことにもなりかねません。そこで特許担当者不在の中小企業の5つの弱点を紹介しますので、参考にしてみてください。


①発明の特徴を可視化できない

特許担当者は技術担当者(研究者)からヒアリングします。しかし意外にも技術担当者は自分が考えた発明にも関わらず、特徴を説明できないことがけっこうあります。

いつも一緒にいるため互いの良さがわからなくなる夫婦と同じように、技術担当者はいつも発明のことばかり考えているため、何が特徴(他と違う部分)かを聞かれても答えられない思考のかもしれません。

そのため特許担当者は、発明を全体的に見たり部分的に見たりしてその特徴を洗い出し、最終的には図や表で可視化して技術担当者と共有することが大切です。

なぜなら発明自体の知識は技術担当者のほうがずっとずっと持っており、特許担当者が誤解していないかを確認する必要があるからです。


②守るべき部分を見極められない

発明の特徴がわかったとしても、その特徴の全てがオリジナルかというと、そうではない場合もけっこうあります。なぜなら発明の大半は公知技術の積み重ねだからです。

また業界内を見渡せば、先に他の研究者に論文発表されていたり、先に特許をとられていたりすることは、決してめずらしいことではありません。

そのため技術担当者に業界内の常識やトレンドを聞くと理解が深まるはずです。どこまでありふれた公知技術なのか?どこがオリジナルなのか?の整理が必要です。

一つ一つのパーツ(モジュール)はありふれていても、それらを組み合わせる発想と具体策が特許になることもあり、そのような特許はライバル会社にとっても脅威となるでしょう。


③守り方を考えられない

守るべき部分を見極めた途端、じゃーその部分で特許を出しましょう!というのはちょっと早いです。なぜなら特許は技術を公開(オープン)するという代償があるからです。

特許を出すということは、その内容をライバル会社に教えることにもなります。これは公開した内容を参考にされ、特許にひっかからない模倣品をライバル会社につくられてしまうリスクを抱えることにもなるんです。

でも公開することで、同じ内容の特許をライバル会社にとられるリスクを減らすメリットも実はあります。特許は新しいこと(新規性)が条件で、公開すれば新しくなくなるため特許が認められないからです。

逆に特許を出さずに社外秘化(クローズ)することで、オリジナル部分をブラックボックスにできるメリットがあります。ただし商品(例えば、メカやプログラム)によってはライバル会社に分解されその中身がバレることもあります。

このようにどこまでオープンするか?それともクローズするか?オープン又はクローズするメリットとデメリットをふまえて考える必要があります。


④ライバル会社の狙いを先読みできない

商品が売れればマーケットができるため、そこにライバル会社が入ってきます。そのとき特許があればライバル会社は簡単に参入できなくなります

このような場合、ライバル会社は商品や特許の研究をして、商品の改良パターンや特許の抜け穴を探して、突破口を見つけようとします。つまり守り方の考え方として、ライバル会社の狙いも先読みすべきです。

例えば改良パターンを含めた特許にしたり、特殊な製造方法や加工方法は公開せず社外秘化したりすれば、ライバル会社は劣化版か欠陥品の製造しかできなくなります。

つまりライバル会社を攻撃するために特許をとるのではなく、ライバル会社の狙いどおりにさせず動きを鈍らせることも特許やノウハウ化のメリットになります。


⑤特許取得までの日程感を共有できない

特許が成立するまで、早ければ半年くらい、遅ければ4~5年かかります。つまりテクニック次第で、特許成立の時期を意図的に早くも遅くもできるんです。

また特許を出すと、1年半後にその内容を特許庁が公開します。そのため公開後に改良パターンの特許を新たに出しても、基本パターンが新しくないため、特許を取りにくくなります。

商品開発~製造まではプロジェクトとしてマネジメントしているけど、そこに特許取得までの日程感が組み込まれることは、一部の大企業を除いてほとんどありません。

ちなみにアップルは特許の公開情報をマーケティングに活用しているように思えます。各メディアもアップルの次回作の特ダネを狙っているため、公開時期は商品開発スケジュールの一部に組み込まれているかもしれません。


まとめ

中小企業で特許担当者がいない場合の5つの弱点をまとめます。

①発明の特徴を可視化できない
②守るべき部分を見極められない
③守り方を考えられない
④ライバル会社の狙いをよめない
⑤特許取得までの日程感を共有できない

逆にいうと、これらのことができる特許担当者を参画させることにより、技術開発の成果を保護し、会社の発展に貢献できる可能性が高まるはずです。