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梅雨の空を見上げる巫女

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小束弓月のオリジナル小説です。とある時代の若き巫女と、彼女を慕う少女の物語です。各章・朗読共に無料でお楽しみいただけます。 Twitter:https://twitter.com…
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梅雨の空を見上げる巫女~ Image VideoClip

小説「梅雨の空を見上げる巫女」のイメージビデオです。
作:小束弓月
声:和泉スズ
イラスト:倉田理音・夏町うしお
音楽:DOVA SYNDROME

梅雨の空を見上げる巫女・一の章(本文)

梅雨の空を見上げる巫女・一の章(本文)

一の章 梅雨の日の記憶

「いらない子...。」
「気味の悪い...。」
「いなくなればいいのに...。」 

その少女は俯いていた。幼くして両親に先立たれ、縁者も無く、独りぼろ屋に暮らす彼女に手を差し伸べる者はいなかった。 

 灰色の雲が低く立ち込めるある日、彼女はその日の糧を手に入れるため、鬱蒼とした山に入った。途中ですれ違う村人達は彼女を見ても、ただ迷惑そうな視線を向けるだけだった。彼女

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梅雨の空を見上げる巫女・二の章(本文)

梅雨の空を見上げる巫女・二の章(本文)

二の章 偽りの幸福と前触れ

「...あ、夢だったんだ。」 
つゆは目を覚ました。神社で巫女の修行をしている今でも、つゆは過去の忌まわしき記憶と彩芽との出会いの夢をよく見る。彼女から心の傷が消えることは決してない。しかし彩芽との出会いの記憶がそれを掻き消してくれる。
「あの人のようになりたい、強くなりたい。」
彼女はそう願い、巫女の修行を受ける決心をしたのであった。 つゆが身支度をしていると、戸を

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梅雨の空を見上げる巫女・三の章(本文)

梅雨の空を見上げる巫女・三の章(本文)

三の章 紅葉と風雷

つゆはその日も日課通り境内を掃き清めていた。季節は梅雨、若葉の茂る季節である。にも関わらず、彼女の持つ箒の先に、季節外れの赤い紅葉の葉が一枚舞い降りて来た。つゆが不思議に思っていると、風に乗って何枚もの紅葉の葉が宙を舞い、つゆの足元に落ちた。風上を見ると、赤い着物に身を包んだ長い髪の美しい女性が立っていた。
「私は静鶴、彩芽の姉です。今日はあなたに会いに来ました。」
つゆは、

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梅雨の空を見上げる巫女・四の章(本文)

梅雨の空を見上げる巫女・四の章(本文)

四の章 届かぬ刃と失われる希望

姉妹は突然の出来事に対し何も出来ず、ただ倒れたつゆの方を見つめるのが精一杯であった。辺りに溢れていた膨大な気は消え去っていた。しばらくして、静鶴はつぶやいた。
「まさか、これが目的だったなんて…。」
「姉さん、それはどういうこと?」
すぐにつゆの体に異変が起こった。倒れ伏した背中から煙が渦のようにとぐろを巻いた。煙の固まりはゆるゆると上昇しながら、次第にその色を濃

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梅雨の空を見上げる巫女・五の章(本文)

梅雨の空を見上げる巫女・五の章(本文)

五の章 決意と禁忌、そして… 

 つゆは目を覚ました。隣にはつゆの左手を力強く握った静鶴の姿があった。静鶴とつゆは、少し離れた前方で倒れ伏している彩芽の姿を見つけた。煙羅煙羅が業火を放った瞬間、静鶴は防御の陣を張り、つゆをその中に引き入れていた。静鶴は彩芽も守ろうと、彼女の腕を掴もうとした。しかし彩芽は素早く前に進み出て、その身を盾にして煙羅煙羅の発した業火に立ち塞っていたのであった。
「彩芽、

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梅雨の空を見上げる巫女・六の章(本文)

梅雨の空を見上げる巫女・六の章(本文)

六の章 梅雨の雫と奇跡 

 煙羅煙羅は彩芽が倒した。しかし彩芽も倒れ伏したまま動かない。静鶴は自らの怪我をかばいつつ、ゆっくり近づいた。彩芽の顔は蒼白で血の気が全く無く、呼吸も止まっているようであった。その時、今まで呆然と立ち尽くすのみであったつゆが、泣き叫びながら彩芽に抱きついた。
「彩姉!彩姉!いやー!!」
つゆは脇目も振らず泣き叫んだ。双眸から涙の粒がぼとぼとと彩芽の顔にしたたり落ちた。

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梅雨の空を見上げる巫女・結の章(本文)

梅雨の空を見上げる巫女・結の章(本文)

結の章 梅雨の空を見上げる巫女

あの日の後、彩芽は自室で傷を癒やしていた。つゆは自ら申し出て、彩芽を甲斐甲斐しく看病していた。
「癒し手の末裔のその子、きっといい巫女になるわ。」
静鶴はそう言い残し、どこへともなく去って行った。 つゆは未だに、自分にあのような妖が取り憑いていたとは信じられなかった。しかしあの日以来、自分の心の傷が少しずつ癒やされていくのを実感していた。もしあの町へ帰ることがあっ

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