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【コーチ活動に携わる仲間たちへ】コーチは「種火」であれ!

最近のプライベートの時間は、仕事や弓道部のコーチ活動に活かすべく、トレーニングセッションへの参加や書籍などでコーチングを継続学習しております。
本日は、その学習内容とコーチ活動のリアルな状況を掛け合わせて、自分なりのコーチ像・コーチとしての関わり方について、書きたいと思います。
(注)学習上の「コーチング」とは異なる観点ですので、その旨ご承知おきください!

■「理解」を前提としたコミュニケーションの罠
まず初めに、コーチ活動を行う中で相手とのコミュニケーションが「うまくいかない」パターンについて考えてみたいと思います。すなわち、自分なりのアプローチが相手に上手く響かないように感じてしまう点についてです。
この事象が発生してしまう大きな要因は、結論から言うと「相手のことを完全に『理解』しようとしてしまうから」です。どうしても、相手が自分と「同じ」である部分を見つけて安心感を覚えたい、というコーチ側の心理状態がそうさせるのです。
言われれば当たり前ですが、相手は自分と異なる個性を持ったひとりの人間であり、自分のコピーにはなりません。にもかかわらず、多くのコーチが自分の経験を相手に『投影』してしまい、特に自分と異なるバックグラウンドを持つ相手に対して、上手くアプローチできないことが多々起きています。
ただ上手くいかないだけならまだしも、その相手に対してコーチ自身が引け目を感じて、「自分とこの相手は合わなかった」という言葉を言い訳に、自ら距離を置いてしまうことがあります。実際、相手はそうは思っていないかもしれないのに!

■「違い」への好奇心
それでは、先に述べたような落とし穴は、どうしたら解消できるのでしょうか?少し私自身の例を振り返って説明したいと思います。
私自身、コーチ活動に本格的に携わる前は、自分の世界に閉じこもって生きていました。自分と「違う」ということは「恐れ」の対象であり、相手が自分のことを否定してくるのではないか?と、深層心理では感じていたように思います。
それが、大学の2~3年の時期に、それまでと違う環境に飛び込み、自分と「違う」人たちと頻繁かつ濃厚に接触する機会を意図せず得たことがきっかけで、世界が急に広がったのです。そこで触れた「違い」は、(周りの人々が素晴らしかったこともあり)怖いというよりも、純粋に「すごい!」と思えるもので、自分の知らないことや知らない世界を知っている人の話を聴くことがとても面白かったのを覚えています。
この時初めて、「自分と違うこと」への好奇心が芽生えたのだと思います。

■ 全ては「傾聴」から始まる
「違い」を楽しむことができたのは、相手の話が面白かったから、という点もありますが、実はもう一つ大事な要素がありました。それが「傾聴」の意識・スキルです。
それまでの私は、自分と違う相手に打ち負かされないように、自分の言葉・意見をぶつけて、それから相手の話を聴く、というコミュニケーションスタイルがほとんどでした。そんな中、とあるセミナーで「傾聴」のスキルについてレクチャーを受け、実践する意識を持つようになりました。具体的には相手と自分の喋る割合は7:3だとか、相手の話を遮らない・話題を変えないだとか、世の中の様々なところで言われているスタンダードなものです。
ダマされたつもりでこれをやってみると、いかに自分が相手の言葉を聴き逃していたかが良くわかりました。
重要なポイントは、話をするときに「相手の言葉を使っているか」「自分の言葉を使っているか」という違いです。しっかりと傾聴の姿勢ができていれば、自然と「相手の言葉」をベースに、そこに自分自身の素直な反応を重ねていく、というコミュニケーションができるようになっていきます。
そうすることで、「こうあるべき!」の押し付けから、相手の語るストーリーを楽しむ心の余裕が生まれたように感じます。相手の言葉を切り口に相手も知らない自分を一緒に探求していけること、お互いに刺激し合って話が深掘られていくことが楽しくなっていきます。こうして、自分と異なる相手とのコミュニケーションをより楽しめるようになったことが、コーチ活動の醍醐味を私に気づかせてくれるきっかけとなったのです。

■ 相手は自分の「鏡」
コーチ活動は相手のためだけでなく、自分自身の行動改善にもつながります。相手を見ることを通じて、実は自分を見ているのです。
実際にコーチ活動をしている時は、自分ができているかどうかは棚に上げてコメントする力も必要なのですが、そうしていると、人には言っているのに自分では出来ていないことをより深く反省するようになっていきます。これは、自分一人で自分の課題に取り組むよりも、遥かに刺さります。まさに、相手を「鏡」として自分自身を見つめ直している状態であり、相手を教えることによってまた自分も教わっている、という福沢諭吉の言うところの「半学半教」が実践されていると言えます。

■ コーチは「種火」であれ!
最後になりますが、私自身がコーチ活動に携わるうえで欠かせない、大事にしている部分をお伝えしたいと思います。この部分は、いわゆるコーチングの観点とは全く異なります。
コーチングを構成する主要な要素は、傾聴と質問になりますが、実際に学生スポーツのコーチをやっていると、これだけでは上手くいかないことが多いように感じます(もちろん、プロのコーチではない未熟さが要因でもありますが)。
私がコーチングの技法とは別の軸で非常に重要だと感じるのは、『周囲を魅了する燃えるようなミッション・ビジョン』をコーチ自身が持つことです。これが周囲に伝播し、コーチ自身の熱い炎の周りに人が集まるのです。この火が周りに着火したら、あとは酸素を吹き込むだけで良いので、その段階ではコーチング的関わり方が理想です(火は既に相手自身の中にあるので)。
ただ、コーチ自身が最初の「種火」になる力は、学生スポーツ界におけるコーチには特に必要不可欠です。学生の中には、燃えやすい人も燃えにくい人も様々存在します。コーチは色んなアプローチで相手に火をつける努力をしていきますが、大前提として「自分自身の温度が高い」ことは必須です。別に、燃え盛る赤い炎でなく、静かなる青い炎でも構いません。冷めた目で淡々とやっているだけのコーチなんか、誰も話を聴こうとは思わないでしょう。ぜひ、自身がどれくらいの温度でコーチ活動に取り組んでいるのか、感じてみていただけると幸いです。

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