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読書感想文

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2021年6月の記事一覧

読書記録009「エーゲ海に捧ぐ」池田満寿夫

読書記録009「エーゲ海に捧ぐ」池田満寿夫

 ヘンリー・ミラー関連のブログで知って、興味をもち購入した。

 はっきり言って表題作がいちばん読みにくい。表題作で挫折するひとでも、ほかの二編は面白く読めるということがあるかもしれない。

 と、いうのも表題作「エーゲ海に捧ぐ」は、非常に構図のきっちりした図式的な作品であるからだ。主人公とふたりの女がアメリカの部屋にいる。そこで主人公は、日本の妻が掛けてきた電話を受話器越しに聞いている。この部屋

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読書記録008「光媒の花」道尾秀介

読書記録008「光媒の花」道尾秀介

ちょっと引いてしまうほど話が巧い。

なぜなんだろう?と考える。どうしてこんなに巧いと感じるのだろう?

『光媒の花』は六編の短編から構成されていて、同じ世界観のもとに書かれた連作であり、それぞれの登場人物がほかの短編のなかにも影を落とすようになっている。いわゆるスターシステム的な要素。これによって読んでる方は興奮する。しかしそれはジャブに過ぎない。では、それぞれの独立した短編として読むにしても、

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読書記録007「毒身」星野智幸

読書記録007「毒身」星野智幸

変な本を読んだ、というのが初読の印象だ。

奇妙で、面白い。刺激がある。それは構成の妙と、キャラクターの見せ方にかかわっている。ストーリーを紙に書いて、箱に入れ、それを見ないでよくかき混ぜ、取り出した順に並べていく。そういう方法を提案していたのは、バロウズだったか、ブルトンだったか、ウディ・アレンだったか、あるいはその全員だったか、忘れたが、そういう「時間軸の攪乱」が物語にいいコクを与えている。

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